2015.04.23 (Thu)
大学で心霊研究会というサークルに入っていたときにあった話です。
ガセじゃないですよ。そんときいろいろあって、
地方新聞だけど新聞沙汰にもなったんです。証拠も持ってきてますから。
発端は、当時2年生の佐々木ってやつがネタを持ってきたんです。
夏休み中でね、俺はアルバイトがあるんで実家には帰ってなかったんです。
その日の午後にサークル室に顔を出したら、
俺と同じ3年の高木ってやつと佐々木が地図を出して何か話をしてまして、
「面白いことでもあるんか?」って聞いたら、
高木が「交通標識に!ってあるの知ってるか?」って聞いてきました。
「ああ、それくらい知ってる。その他の危険ってやつだろ。
 落石、動物の飛び出しとかはそれ用の標識があって、そういうの以外。

 つまり、言葉で表せないような危険がある場所に設置されるんだな。
 それには幽霊も含まれる」俺がこう答えると、
「さすがY先輩、詳しいですね」佐々木が言いました。
「んなの基本知識だから。で、それがどうかしたのか?」
「この市から、県境の峠に出る間道にそれが設置されてる場所があるって、
 話を聞いたんですよ。面白そうだから見に行かないかって。
 車で40分くらいらしいっス」
「ふーん」 「ほら、学祭の展示用に廃墟ビデオ撮ったけど、
 あれだと編集すれば1時間もたないだろ。だから行って撮ってこようって」
高木がこう言ったんで、「これからか? 俺は今日バイトないからいいけどよ。
どうやって行くつもりだ」

「この佐々木が実家から母親の軽借りてきてるんだよ。今3時だろ、
 今からそこ行ってビデオ撮って戻ってきても6時前じゃね」
こんな感じでさっそく行動することになったんです。
その頃は4年生はもうサークル引退してましたし、
俺と高木が実質、活動を引っぱってるようなもんでしたから。
で、佐々木の運転で地図で確認した林の中の道に入ったんですが、
ナビも一般的じゃない頃でしたんで、あちこち迷って、
標識のある場所に着いたときには4時半近くなってました。
でも、日の長い季節だったんで、撮影には問題ない明るさでしたね。
「あった、あれだろ。ビックリマーク標識」
「いい具合に車停められるとこあるじゃね」

その標識は向かって右側。そこは左手が崖になってて、その下は渓流。
右は落石が起きないようにネットが張られた斜面だったんです。
そして標識の20mほど前に、山側に車一台を置けるくらいのスぺースがありました。
ビデオカメラを持って3人で外に出ました。
平日のせいか時間帯のせいか、車通りはいっさいなかったです。
元々知る人ぞ知る、っていう抜け道でしたしね。
標識はまだ新しい感じでしたが、支柱が曲がってました。
「これ、カーブが続いてて、対向車とすれ違うのが危険だよな」
「やっぱ落石注意ってことなんかな」
「それなら落石の標識になるし、動物の飛び出し注意もそうだろ。
 これって目の錯覚を起こしやすいとこに立てる場合もあるらしいから、それかねえ」

「ま、とりあえず手前から標識を撮って、100mほど進んでみようぜ」
ということで、カメラ持った佐々木を先頭にして、
山側のほうに一列に並んで標識の先へと進んでいきましたが、
内心ちょっとがっかりしてたんです。というのは、
あんまりおどろおどろしい場所じゃなかったんで、絵的にツマンナイ感じがしまして。
「なんかなあ、いまいちだよな。ただの道路だぜこれ」
「うーん、暗くなるまで粘ってみるか」 「あんま変わんないと思う」
50mほど進むとゆるい右カーブになってました。
「あれ、おかしくないですか」佐々木が言い出しました。
「さっき見たときは左に曲がってると思ったんですが」
「それだ! 地形の関係であそこからは左カーブに見えるのに、実際は右に曲がってる。

 それで事故起こしやすいから標識があるんだろう」
「しかしそれ、うまくビデオに撮れるかな」こんな話をしながら進んでいくと、
10分くらいしてまた「!標識」があったんです。
「なんかさっきと同じ場所に見えるな」 「まさか、変わりばえしない地形だからでしょ。
 もう戻りませんか」・・・ところがです。戻っていくと最初の!がありましたけど、
 その先に俺らの乗ってきた車がなかったんです。
「あれ? おっかしいな」「車がなくて急カーブになってる」
で、そこのカーブを曲がってみると、ずっと道が続いてるのが見えましたが、
その山側に10mおきくらいに「!標識」がずらーっと並んでたんです。
「えー 嘘だろ。俺ら間違いなくこっちから来たよな」
「・・・あんなの絶対なかった」

でね、そっから先は行けども行けども「!標識」の続く一本道で、
車は一台も来なかったんです。「いつの間にか前後を間違えたのか」
そう思って戻ってみたんですが、今度は進行方向にも果てしなく「!」が続いてたんです。
「おい、なんだよこれ」 「どうして車がないんだよ」
「だいたいこんな何百本も「!標識」が設置されてるとかありえないだろ」
「俺らもしかして異界とかに迷い込んだんじゃないか。
 あの最初の!マークはそれを知らせるためとか」
「うーん、いや。お前らは笑うかもしれないが、タヌキとかムジナかもしれんぞ」
「それこそまさかだよ」そうは言ったものの、唾を眉につけるとか、
タバコの煙を周囲にまき散らすとか、
タヌキの化かしに効果があるという方法も試してみました。

だけど全く効果なしで、前も後ろもずっと「!標識」が並んだ道。
時計を見ると5時半を回って、少しずつ薄暗くなってきました。
「これ、状況を変えるしかねえな」 「どうすんだよ?」
「崖を降りるのは無理そうだから、この山に登ってみようぜ」
確かに山の斜面はものすごく急というわけじゃなく、
緑のネットにつかまっていけばなんとか登れそうではありました。
「・・・上から見れば全体の状況がつかめるかもしれん」 ということで、
1時間近く歩いてかなり疲れてたんですが、適当なところを登り始めたんです。
斜面は15mくらいの高さでした。先頭で上った高木が、上の木のあるところに出て、
「えーっ!!」という叫び声をあげました。「何だ、どうした」
俺も上に着いて、反対側を見下ろして唖然としましたよ。

上のほうは幅5mくらいの土手で、どうにか通れるくらいの道がありましたが、
その反対側が谷になってて、田んぼと集落が広がってたんです。
それがすべて藁葺屋根で、道も舗装されてなくて・・・陰惨な感じで。
なんと言えばいいですかね、明治、大正? わからないですけど、
もっと古いように思えました。それとね、その集落のあるほうの崖の直下に、
車の残骸がたくさんあったんです。まるで俺らの立ってるところから転げ落ちて、
ひっくり返ったみたいでした。はっきり見えませんでしたが、
古い車種が多かったと思います。もうずっと前に販売中止になってる。
そっち側はかなり暗くなってて、ぽっと藁葺農家の一軒に灯りがつきました。
「こっち見ないほうがいいぞ、ヤバい感じがする」高木が言いました。
「ですね、なんか引き込まれるような気持になります」と佐々木。

俺らはそっちに目を向けないようにして、土手の上をずっと進んでいきました。
そっから見るとなぜか、道には「!標識」がなかったんです。
10分も進むと、斜面に沿って駐車してある佐々木の軽が見えました。
「あれだ! ここ降りるぞ」俺らは一斉に飛び降りるようにして斜面を下ったんですが、
そんとき、道の向こうからセダンが一台やってきたんです。
勢いがついてて、佐々木があやうく轢かれそうになりましたが、
なんとか3人とも無事に道に降り立ちました。それから軽まで走って、
大学のあるほうまで戻ってきました。普通の道で、おかしいことはなかったです。
・・・あの上から見下ろした昔の集落って何だったんでしょうね。
あんなのあるはずがないんです。地図でもずっと山地になってましたし。
それと積み重なった車の残骸・・・あれも不思議です。

わかんないことだらけですよ。この後にも何回かこの道には来てるんですが、
「!標識」は一個だけで、地図通りに県境へと出ました。
道路管理者・・・あそこは県道なんで、県にも問い合わせてみたんですが、
まったく要領を得なかったです。すべては謎のままですよ。
ああ、新聞沙汰の話ですか。ええ、その県の3日後の地方新聞のコラムに、
小さくですが奇妙な話が載ってたんです。起きた日時はあの当日です。
そこの道を車で通りかかった人が投書したんだと思います。
佐々木が轢かれそうになったセダンの運転者でしょう。
走ってたら山のほうから3人、昔の蓑笠をつけた人がすごい勢いで降りてきて、
車の前方に出たが、目の前ですっと消えたっていう内容です。
これ俺らのことなんじゃないかと思いますけど、もちろん蓑笠なんて着てなかったし・・・







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コメント
 これは面白い! 実話怪談だと、無限ループなんてそれこそ「ナンセンス」の一言で片付けられてしまいますが、こういう体裁なら断然アリです。集落に降りて(落ちて?)いたら、どうなっていたんでしょうねえ。
 そういえば、住宅街で「!」標識がある場所を知っています。車も余裕で通れるサイズの生活道がプッツリと途切れて、そこから下り階段になっているという・・・まさに「その他の危険」ですw
| 2015.04.27 22:51 | 編集
コメントありがとうございます
この話は最初に「!」標識がずらーっと並んでいる
場面が目に浮かびまして、それを元に後付けで話を考えました
bigbossman | 2015.04.28 20:09 | 編集
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