変な話

2015.04.29 (Wed)
*怖い話ではないですが変な話です。

自分と同業の占い師のSさんから聞いた話。
彼は自分に比べればずっとメジャーで、某有名雑誌に占いコーナーを持ってます。
つい先日、飲み会の席でこんな話をうかがったんです。
「なあ、世の中に殴りたくなる顔ってのはあるよな」
「うーん、あるでしょね。でも性格の問題と違って顔が気に入らないからって、
 殴るわけにはいかないでしょ。嫌なやつなんですか?」(これ自分です)
「いや、行きつけのコンビニの店員だよ、深夜シフトの。
 店のマニュアル内容しか口をきいたことしかなかったんで、性格はわかんない。
 30代くらいで、なんかおどおどした感じなんだが、
 カウンターごしに顔を見てると無性に殴りたくなるんだよ」
このSさんは自分と同じく学生時代に柔道をやっていて、体重は100kgを超えます。

「殴っちゃダメですよ。でも興味深いなあ、どんな顔してるんです?」
「まあ、ナス型だな。頭の髪のある部分が小さくて、その下のほっぺたが膨らんでる。
 電球を下に向けた感じっていうか、マンガでもそんなキャラいるだろ」
「下ぶくれってことですね」 「ああ、それそれ。でな、正面に目鼻が集まってて、
 両頬の面積が広いんだ。しかも肉が柔らかそうにフルフルしててね、
 ああ、これを思いっきり張り飛ばしたらどんなに気持ちいだろうかって」
「うーん、それはぜひ見てみたいですね。あ、そうだ、下ぶくれの顔って、
 ボクシングのパンチングボールに似てますよね。ゲーセンにもあるやつ。
 あれを連想するんじゃないですか」 「わかんないけど、そうかもな。
 とにかくコンビニで物買って、会計を待ってる間、殴りたくて殴りたくて、
 自然とこぶしを握り締めてるんだよ。手のひらにじっとり汗をかくくらい」

「うわー」 「で、買い物が終わって店を出ると、ほっとするんだ。
 今日も殴らずに済んだって」 「別の店に行けばいいんじゃないですか」
「そうなんだけど、何かその顔を見たい気もあるんだよ。中毒してるみたいに」
「・・・・」 「でな、こないだその店員と居酒屋で偶然一緒になったんだ。
 俺が仲間と飲んでて、仲間は終電に合わせて帰っちゃったけど、
 俺は地元だし、飲み足りない気がして一人で冷酒やってたんだ。したら、
 その店員が3人づれで入ってきて、カウンターにいる俺をと目が合って頭下げた」
「興味深いですね、どうなりましたか?」 「俺は相当な量の酒が入ってたんで、
 10分ほどしてトイレに立ったその店員を、手招きして隣の席に呼んだんだ。
 で、少し世間話した後に、単刀直入に聞いてみたんだよ」
「何とです?」 「あんた、これまで殴られたことあるかって」

「おお、で?」 「そしたら、殴られそうになったことはたくさんあるけど、
 実際に殴られたのは1回しかないって。
 でな、その後に聞いたのがじつに変な話なんだ」
「ぜひ教えてください。ブログネタになります」
「そいつはどうやら自分の顔が、他人に殴りたいって気を起こさせるのを、
 知ってるようなんだ。子どものころから、
 とにかく理由もなく殴られそうになったことが、何度もあったって言う。
 相手は親兄弟以外のほぼすべての人、男も女も年も関係なく、
 ある程度まで顔が近づくと、こぶしを握ってプルプル震えるって。
 学校の先生、病院の医者までそうだったらしい。べつにケンカとかしたわけじゃなく、
 普通に話してる途中で。学校の先生なら面談中、医者なら診療中にな」

「ええ、Sさんみたいにですね」
「まあそうだ。で、相手がこぶしを振り上げようとした瞬間、
 いつも急に殴るのを思いとまる。それでそいつの顔を見て目をぱちくりさせる」
「殴られないで済む?」
「そう言ってたな。で、相手は驚きで放心したような状態になってる。
 そういうことが何度もあったんで、中学のときに相手に聞いてみたそうだ。
 そしたら・・・こっから信じられないような話になるがいいか?」
「いいです、ぜひ」
「そのときの友達が言うには、そいつの顔がサザエに見えたそうなんだ」
「サザエ・・・貝のサザエですか?」
「そうだ。それも人間の顔大の巨大サザエ」

「えー嘘でしょう。ありえないです!」 「だから信じられないって言ったろ。
 サザエってごつごつ とげとげしてるじゃん。それで驚きとともに、
 痛そうなんで殴る手が止まってしまう。ここでよ、
 心霊関係に詳しいお前に質問するが、これはオカルト的にどう解釈できる」
「えー、できないですよ、そんなの。まあ・・・むりくり言えば、
 サザエが守護霊になってるってことですかねえ」
「人間以外も守護霊になれるのか」
「・・・昔ペットにしてた犬や猫が守護してる、という霊能者の人はいますよ。
 しかし貝は聞いたことがない。それ以前に魚も聞いたことはないです」
「そりゃどうしてだ?」
「魚介類は霊魂がないか、あっても霊格が低いってことでしょうかねえ」

「そうなのか?」 「うーん、これはどっちかというと人間中心主義的で、
 万物みな霊を宿すってのが日本古来の考え方のような気もしますけど。
 キリスト教では論争がありましたし、輪廻宗教系では、
 人間にしか生まれ変わらないというのと、そうではないものがあります。
 人間以外にも生まれ変わる宗派は人気ないですけど・・・
 あの、さっき1回殴られたことがあるって言ってたそうですけど、
 それはどんなケースですか」
「ああ、高校のときで相手はボクシング部だったそうだ。
 事情はそれまでとほぼ同じだったけど、相手が人を殴りなれてるだろ。
 モーションが小さいしスピードがのって手が止まらなかった」 「それで?」
「その店員の顔はなんともなくて、相手の手がぶさぶさに裂けたそうだ。

 ちょうど巨大サザエを殴ったみたく」
「うわ・・・ さっきからちょっと気になってたんですが、
 その店員の人、そういう経験を積んでるなら、
 Sさんが店で殴りたいと思ってるのに気づいてたんじゃないですかね」
「ああ、そうかもしれん。さすがに俺の話は出なかったけどな」
「汗かくほどこぶしを握り締めてたんでしょ。ぜったい気がついてますって」
「だろうなあ」 「今度1回実際に殴りかかってみてくださいよ。
 実際に殴らなくてもサザエに見えるんでしょう。
 やってみれば本当の話かどうかわかりますよ」 「確かにそうだなあ。
 今度コンビニ行ったときに試してみる。俺は事情を知ってるわけだから、
 悪意があるとも思わないだろう。次会ったとき、どうなったか報告するよ」

『さざえ鬼』水木しげる




 

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