殯(もがり)

2015.05.09 (Sat)
この4月に高校1年になりました。よろしくお願いします。
初めてそれを見たのは、僕が小学校にあがる前後のことです。
場所は、住んでいる市の郊外にある自然公園です。
その頃はまだ弟も生まれていなくて、両親に両側から手をつながれて、
落葉のたくさん散った中を歩いていた記憶があります。
ええ、秋の休みの日だったんです。
広場を走り回って、そこも一面に色とりどりの落葉が舞ってました。
それで、ひとしきり遊んで疲れて、木のベンチにどすんと腰かけたんです。
そのとき座面と背もたれの間に、嫌な色合いのものが見えたんです。
青黒い中にいろんな赤が混じったような・・・
「えっ」と思い、後ろ向きになってのぞきこみました。

まだ小学生にもなってなかったんですが、人の死骸だってわかりました。
それもほぼ限界まで腐った死体です。人の形は残ってましたが、
裸の体のあちこちが膨れて、さらにそこがヒビが入ったように割れてたんす。
色も青あざのような部分や、黴が生えたような緑の部分もあって・・・
それを見た瞬間飛び上がって泣き出しました。
両親のところまで走っていき、見たもののことを訴えたんです。
「死んだ人、死んだ人」と言いながら僕が泣くんで、
困惑しながら両親が来てくれましたが、ベンチの後ろには何もなかったんです。
ただふんわりと枯葉が積もってるだけでした。
まあ・・・このときだけのことなら、ただの見間違いってことだと思うんですが。
公園内にはたくさん人がいて、バーベキューなんかもやってたし、

そんなのがあれば絶対に誰か気がつくはずです。
ベンチの裏だからって、死体がずっと放置されてるようなとこじゃないんです。
それに、あとから考えたんですけど、
臭いがしなかったと思うんですよ。ミイラのようにカサカサだったわけじゃなく、
腐敗して膿が出たりしてる状態で臭いがしないはずはないですよね。
ところがそんな記憶はない。だから、そのとき両親が言ったとおり、
テレビかゲームで見た怖いシーンの記憶が、
たまたまそのとき蘇ったっていうのに納得したんだと思います。
ところが・・・それから2年に1回以上の割合で、死体を見るようになったんです。
ええ、幻の死体ですよ。仰天して人を呼び行ったり、
また自分でも目をつぶってから見直すと、消えてるんです。

そうですね、場所はさまざまです。最初のときは秋でしたけど、
見る時期も全部バラバラでした。そうですね・・・共通点をあげるとすれば、
自宅のある近辺では見ないということですね。
どっかに旅行に行ったときが多かったです。
はい、その死体は全部同じ人のだと思います。
それが・・・見るたびに、不思議なことに死体が新しくなっていくんです。
最初のときはグズグズに腐って男か女かもわからなかったのが、
わかるようにりました。うつぶせに寝た女の人の死体です。
若いんだと思いますが、顔がわからないんでなんとも言えませんでした。
じゃ、最近見た2回のことを話しますよ。
中2の修学旅行のときでしたね。関西方面に行ったんです。

僕は歴史が好きだったんで、グループ行動は歴史分野体験に入ってました。
兵庫県に、古墳が築造されたときの状態に復元され、
保存されてるとこがあるんです。そこに行ったとき、
貼石の積まれた古墳の上が通路になっていて、
前方部から後円部まで歩くことができるんです。その上から見ました。
石の積まれた段差のところにうつぶせの女の人が倒れてるのを。
体は青黒くなってましたが、むくんではいませんでした。
友だちも、他の観光客の人もそっち見てるのに何も言わなかったんで、
また例のアレだろう、と思ったんですよ。
案の定、1回目をそらしてから再び見ると消えてたんです。
ええ・・・自分でもいろいろ調べました。檀林皇后の話ですか。知ってますよ

平安時代初期の、嵯峨天皇の皇后様ですよね。仏教を深く信じていて、
この世のあらゆるものは移り変わり、永遠なるものは一つも無いという、
「諸行無常」の真理を自らの身をもって示し、
人々の心に菩提心を呼び起こすために、死に臨んで、
自らの遺体を埋葬せず路傍に放置せよと遺言し、
遺体がだんだんに腐乱して白骨化していく様子を皆に示した、
という逸話が残ってますよね。それと何か関係があるんでしょうか?
あと九相図(くそうず)についても調べました。これも仏教関係のもので、
死体の変遷を九の場面にわけて描くんですよね。
死後まもないものから始まって、、次第に腐っていき血や肉と化し、
獣や鳥に食い荒らされ、九つ目にはばらばらの白骨になるまでを描いたもの・・・

ええ、あれを逆に見てるようなものです。
僕の場合は、最初に見たのが、白骨ではなかったですけど一番腐敗したもので、
そっから順に、死体が新鮮というか、新しくなっていくんですから。
・・・最後に見たのは去年です。それが自分の部屋でのことなんですよ。
遅くまで受験勉強してから寝て、すぐトイレに起きたんです。
ベッドから降りたときに、何かを踏みつけてつんのめりそうになりました。
それがいつもの死体だったんです。
ええ、裸の背中を踏みつけた、ぐにゃっという感触は忘れられません。
そのときは色が真っ白なだけで、普通の人間と変わらないと思いました。
それで仰向けだった死体の体勢が、踏んでしまったせいで動いて、
ぐるっと首が回って顔が見えたんです。

予想してたとおりの、若い女の人でした。自分と同じくらいの歳だと思いました。
ええ、自分から動いたりしたわけじゃないです。
固く目を閉じて、はっきり生きていないってわかりました。
思わず「あっ!」と叫び声をあげてしまいましたが、
つんのめって壁に手をつき、後ろを振り返ったときにはもう消えてたんです。
はい、自分の他に見えた人はいません。
ですから、これは10年以上の長い期間続いている、
僕の幻想、幻覚ってことでも説明はつくのかもしれません。ですが・・・
4月の終わりに、高校に編入試験を受けて入ってきた転校生がいたんです。
女の人で、僕のクラスに入ってきたんですが・・・
その顔を見て呆然としました。

去年、自分の部屋で見た死体の女の人とそっくりだったんです。
巫女さんみたいな古風な髪型も同じでした。
もちろん体つきはわかりませんが、見間違えてはいないと思います。
なぜなら、その後、朝に昇降口でいっしょになったとき、
こんなことを言われたんです。
「この間、私の背中を踏んだでしょ。別に気にしてないからいいけど。
 これからよろしくね」って。
そのとき、顔は笑ってましたけど、目が怖かったんです。
何をどうよろしくなのかわかりません。
これから何かが起きるんでしょうか。一連の出来事は説明がつくものなんでしょうか。
どうかアドバイスをお願いします。

『壇林皇后 九相図』






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コメント
 う、うわあ。こんなボーイミーツガールは遠慮したい・・・いやちょっとは羨ましいかも。なんというか、物凄く嫌なラノベが始まりそうですw
 しかし真面目な話をすると、タイトルの「殯」と彼女の変遷は全く逆ですよね。死を確認するための儀式が殯だとすると、彼女の場合は・・・?
| 2015.05.11 01:34 | 編集
コメントありがとうございます
奇妙な話になりましたが、この後の展開が興味深いですね
おそらく怖いことが待っているのではないでしょうか
bigbossman | 2015.05.11 22:46 | 編集
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