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噛む

2015.05.10 (Sun)
えー自分は占い師を職業にしておりまして、趣味はオカルトの研究です。
ここに来させていただくのは2回目で、
今回も自分の身に起こった話ではないんですが、怪異は目撃しました。
自分は仕事柄、中国に行くことが多くて、
ああはい、中国占星術の勉強です。
そこで親しくなったOさんという中国の方がいるんです。
この人がお金持ちでね。いや、中国には改革開放以来の成金は多いんですが、
この人は代々の金持ちです。地方在住で、
なんとか文化大革命をのり越えられたようですね。
今はIT関係の会社を経営しています。
このOさんが、日本に土地を買ったんです。

いや、投機が目的じゃないですよ。
たしかに日本の土地を買ってる中国人は多いんですが、
そういうのとはちょっと違う。Oさんが買ったのは、田舎の廃村の土地でして、
値段は二束三文です。これから値が上がることはありえないし、
そもそも買う人がいないようなとこですよ。
古民家2件分をつぶして、そこに別荘を建てたんです。
実は廃村といっても、地方空港から車で1時間ちょいくらいのとこで、
ええ自然は申し分ないです。中国の田舎は不便だし、
砂利の最終や木の伐採で荒れているとこが多いですからね。
月に一度くらいやってきて、のんびり畑をやったりしてるということでした。
なんでわざわざ日本の廃村なんかに、と思うでしょうが、

自分はわかる気がします。中国はどこもかしこも人だらけですから。
それに新興の成金は、金を見せびらかすために、
純金のスマホケースを特注して持ち歩いたりするんで、
Oさんとは趣味が合わないですよ。
ええ、このあいだ別荘におじゃまさせていただいたんですが、
周囲の景観と調和したいい建物でしたよ。
でね、そんときに相談されたんです。何をかっていうと、
庭に配した彫像のうちの一つが、
野生動物に荒らされてるみたいだってことです。
さっそく見せていただきましたら、1mもないくらいの石造りの白虎の像でした。
はい、風水です。北に玄武、南に朱雀、西に白虎、東に青竜ってやつ。

塀の内をぐるっと回って見せていただいたんですが、
4つの像はそれぞれに風合の異なる石彫りで趣味のいいもんでしたが、
そのうちの白虎の像だけが、あちこち傷ついてたんです。
といっても欠けたりするほどひどくはないんですけど、
そこかしこに黒い痕がついてたんです。歯型のようにも見えましたけど、
それほど鋭くはない草食動物の前歯みたいな感じでした。
歯型自体はかなり大きなものです。独身のOさんが、この別荘を建ててから、
一人でやってくるたび、この痕が増えていたということです。
はい、他の3体はきれいなもんで、何の傷もありませんでした。
中国式の風水かって? そうですね。四神相応は守られてるんですが、
日本式の「山川道澤」ってやつじゃありません。

中国式より、日本式のほうが細かく条件がつけられてますよね。
日本人らしく、儀式的に変化したっていうか。
中国古来の風水だと、北を背後にして高山、前が海か湖か川の水。
西と東の左右は、砂と言って、後ろの山より低い丘陵や岡であることが望ましい、
くらいですが、日本式は北と南は同じでも、
西が大道、つまり道路で、東が流水、まあ川であるのがよいと考えられます。
ただねえ、条件を細かくすればするほど、
それに当てはまる地は少なくなってしまいますよね。
ああ、すみません。みなさんご存じのことを長々話してしまいました。
でね、その晩、Oさんの別荘に泊めていただいて、
百虎のある西側の庭の見える部屋に卓をしつらえまして、

紹興酒をいただきながら夜を待ったんです。
ええ、飲みすぎには注意しました。紹興酒のいいのは、
つるつる飲んでるうちに腰が立たなくなってしまいますからね。
いや、特別に霊的な準備とかはしなかったです。
白虎の様子を見せていただいたときに、そんな悪い気を感じなかったので。
ええ、10時を過ぎたあたりですね。満月の頃で庭は明るかったですよ。
別荘の周りを囲む塀は2m以上あるんですが、
その上にトン、トンと軽く跳び乗ったものがありました。
すぐに気がつきましたが、Oさんは感じてないようでした。
その3つは、やはり軽い感じで白砂の上に降り立ちましたが、
大きさは1m以上ありました。

「何か来たんですか」Oさんが声を潜めて聞いてきたので、
「黒いものですね、野生動物ではないようです」と答えました。
どう表現すればいいですかね。例えば雷様の黒雲を絵に描くとすれば、
黒のぐるぐるの渦巻きになりますが、
それがたくさん集まって体を成しているというか。
でも、頭と尾、四肢があることはわかりました。2体ともよく似てましたね。
そいつらの足元に注目していたんですが、
白砂を歩くときに砂が乱れなかったんです。
「ああ、これは実体じゃない」そう思いました。
黙って見ていると、2体は地面の臭いをかぐようにしながら、
白虎の像に近づいていき、後足で立ち上がると像の台座に前足をかけ、

左右から噛み始めたんです。カツン、カツンと噛む音が聞こえてきました。
さっきまでは実体じゃなかったのに、一部実体化してたのかもしれません。
音はOさんにも聞こえたようで、自分のほうを見たので、
「さあ、どうなりますか」と言いながら、いつもポケットに入れてる小さな水晶玉、
ビー玉より少し大きいくらいのやつですが、
それを窓か白虎の像に向かって投げたんです。
透明水晶は闇に溶けて見えませんでしたが、カツーンと音がして、
当たったことがわかりました。するとです。
その2匹の黒い獣は、一瞬硬直したように動きを止め、
それからくるりと振り返って塀を跳び越え、
一目散に逃げていったんです。西の方角でした。

「これ、西のほうに何かあるんですか?」
「ずっと森が続いてるだけですよ」 「明日、早朝に入ってみましょう」
で、翌朝森の中をしばらく歩いて、朽ちた鳥居を見つけたんです。
短い参道はすっかり草に浸食されてまして、
祀られなくなってから久しいことがわかりました。
「うーん、神社というのは、どんな小さいお社でも、
 地元の神職さんが掛け持ちで回ってお祀りしてるもんなんですが、
 さすがに村自体がなくなってますからねえ」
傾いて屋根のずれた社殿の前に一対の狛犬がありましたが、
すっかり黒ずんで、苔で覆われてました。
「ははあ、こいつらですね」開けた口の中を見てそう言いました。

歯の部分に白い粉がついてたんです。白虎の石の粉だったんです。
「これは何です?」Oさんが聞いたので、
「狛犬です。ちょっと形は違いますが、中国にもありますよね」
「ええ、確かに。これらが私を恨んでやったんでしょうか?」
「そうでもないと思います。祀る人がいなくなったので、参道を真っすぐ歩き出たら、
 Oさんの別荘があって、守り神がいた。それ以上進めなくなったんで、
 噛んでたんだと思いますよ」「どうすればいいんでしょうかね」
「うーん、御社を再興すれば治まるでしょうね。社殿を部分的に修理して、
 神職さんを頼んで、時々来てもらうようにすればいいんじゃないかな。
 中国でいう土地神みたいなものだから、祀る人がいればいいんです。
 Oさんならたいした出費でもないでしょう」 こんな話になったんですよ。

四神図







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