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古代史研究方法の変遷

2015.05.11 (Mon)
* この項はオカルトとはほとんど関係のないものですので、
 興味のない方はスルーしてください。

今日は久しぶりに数時間、某巨大掲示板の日本史スレに参加して、
古代史の話をしてきました。ですので怖い話は書けません。
邪馬台国問題が主なテーマであるスレで、自分的には、いちおう畿内説ですが、
別に邪馬台国がどこにあろうとこだわりはないです。

それよりも、ギャップを感じるのは、古代史研究の方法がはっきり変わった
ということを理解しない人が多いことです。どういうことかと言うと、
昔は古代(6世紀以前頃)の列島の状況を理解する手段として、
壮大な仮説を立てる学者が多かったんです。いわゆる、各大学にある碩学、
大家、長老的な人物が、長いスパンで滔々と歴史の流れを語る、
そういう本が多く出されていたんですね。

昔の学者は博学で漢文もすらすら読めましたので、
そういう本には、たしかに拝聴すべき部分が多く含まれているのですが、
かといって各論のすべてが正しいかというと、そうではない。
新しい考古学の発掘事情により、くつがえされてしまう場合も多いんです。

そういうことが積み重なったせいもあり、最近の日本史は、わからない部分を
あえて想像や考察で補わない、という形にだんだんに変わってきています。
わからないことはそのままにしておく、無理にそこにストーリーを組み込まない
ということです。歴史の物語化を避けると言えばいいでしょうか。

例えば、今、出版社で日本史の何十巻にもなる本を出すとすれば、
その1巻、2巻、場合によっては3巻目の古墳時代中期頃まで、
文献史学者ではなく、考古学者が書くことになります。
これは文字が一般的に使用されていなかった時代なので、
当然のことではあるのですが、昔はそうではなかったんです。

これは現在よりも、日本書紀、古事記の記事に信がおかれていた
せいもあります。例えば崇神天皇とかについても、実在が信じられ、
その没年(258年、318年説あり)をもとにして、国家形成の時期が
考えられ、この流れで、有名な3王朝交代説なども生まれました。
ところが、現在では崇神天皇の実在そのものが疑われるようになっています。

それはもちろん、崇神天皇陵(柳本行燈山古墳)というものはありますので、
その被葬者である人物は実在していたわけですが、
ではその人物が、記紀に描かれた崇神天皇にストレートにつながるかというと、
大いに疑問なわけです。その逸話の中には不可思議な内容も含まれますが、
かといって、この話は史実、この話は脚色と分けることもできません。

どうしても恣意的になってしまうからです。
そんな事情もあり、現在では継体天皇(6世紀)以前の歴史を、
記紀の記事をもとにして読み解いた論文というのは、ほとんど出なくなりました。
出したとしても、崇神天皇であれば崇神天皇の事績のうち、
どれが本当でどれが間違いであるか判別できないので、評価のしようが
ないんです。学者としての業績にも加算されにくくなりました。

「崇神天皇? そんな人本当にいたの?」
こう言われてしまえば、研究そのものが陳腐化してしまうわけです。
ということで、現在の歴史研究は比較的新しい時代の各論にうつって
きています。わかることをよりわかるようにしよう、ということですね。

そしてわからない部分については、無理に解釈したり、
推論を加えたりしない。自分はここまで明らかにしてほぼ確実だろうから、
あとは後代がさらに研究を深めてくれ・・・こういう姿勢が目立ってきました。
これは日本史研究における進歩だと自分は考えています。
大人になったと言ってもいいでしょうか。

邪馬台国東遷説とか騎馬民族征服説、そういう壮大な仮説は、
確かに魅力的なのですが、また、どこを切っても明確な根拠は出せない、
トランプの城のように脆いものでもあるんです。現在でも、自国の歴史を、
ファンタジーのような壮大なものとして扱っている国も日本の近隣にありますが、
日本の史学は、皇国史観あるいはマルクス史観などの、イデオロギーに
染まった歴史解釈から脱却することができたと思います。

わからないことに対して、都合のいい解釈を加えない、
ここはわからない部分である、とするのは、史実かどうかも定かではない
物語がひとり歩きするよりも、はるかに大人の態度である、と自分は考えます。
データや遺物、古文書等で明確な証拠を示せるもののみ、
知識として集積していけばいいのだと思います。

ですから、今後は考古学者の役割は重要になってきますが、
ここでも、あえて無理な論を組み立てないことが大切だと思います。
遺跡を発掘し、遺物を整理し、データとして提示する。
そこにもし、明瞭に見えてくるものがあれば、
それは誰にでもわかるはずです。

『北野天神縁起絵巻』部分
北野天神縁起絵巻






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