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しりとり

2015.05.20 (Wed)
去年の秋、ちょうど紅葉の頃の話です。
私と友達のS衣とで、ダブルデートをしたんです。
相手は、その前の週末のコンパで知り合った某神道系大学の男子2人です。
UさんとMさん、ということにしておきます。
何でもUさんとMさんは従弟同士で、どちらも実家が神社なのだということでした。
そのせいか、どちらも平安時代の人のような顔立ちをしていて、
背が高く、すらりと痩せていました。
最初のうちは間違えそうになるくらい、似たような雰囲気をもっていたんです。
グループデートなんて中学生のとき以来でしたし、
ちょっとどうなるのかワクワクする感じはありましたよ。
でも、2人とも家業の神職を継ぐことは決まっているみたいで、

私はさすがに神職に嫁ぐつもりはなかったので、
本格的なおつき合いにはならないだろうとも思っていました。
デートのコースは、車で2時間ばかり離れたところにある渓流でした。
Uさんたちが、いいところだから是非にと提案してきたんです。
コンパのときの話では、なんでも遊歩道から外れて少し歩いた先の滝の脇に、
とてもパワーのある御神木があるんだそうです。
ショッピングモール前でS衣と合流して待っていると、
約束の9時少し前に、MさんがBMWを運転してやってきました。
いえ、私は車のことはあんまりわからないんですが、
S衣がすごい高級車だよと言ってたんです。
女子2人が後部席に乗って出発しました。

車の中ではあまり話は弾みませんでしたが、
2人とも真面目な人であることはわかりました。
神社の人にこう言うのも変なんでしょうが、修行僧みたい、
という言葉が浮かびました。S衣が神道系のその大学に興味があるみたいで、
授業の内容など、いろいろ質問をしてましたよ。
着いたのは休屋のあるだだっぴろい駐車場でしたが、
まだ土曜のお昼前なのに、半分以上埋まっていました。
紅葉は峠を通る途中から見えていましたが、とってもきれいでしたよ。
車を降りると、かはり肌寒かったですけど、
Uさんたちのアドバイスにしたがって、厚着してきてたんです。
休屋で昼食を食べ、渓流に沿った遊歩道へ出ました。

ええ、景色はとてもきれいで、観光客が列になってましたよ。
せまい板を渡した上を、私とUさん、
S衣とMさんがペアになって通っていきました。
Uさんとは紅葉している木の話なんかをしました。
とっても詳しかったんで驚いたんですが、
御神木の管理も将来の仕事の一つだからって言ってました。
20分ほど歩き、渓流が支流にわかれ、横道があるところで遊歩道を外れました。
こちらに入ってくる観光客はなかったので、4人だけになりました。
あと30分もかからず、御神木のある滝に出るということでした。
ずっと晴天が続いてたので、足元は乾いて歩きやすかったんですが、
私はもうすっかり汗をかいていました。

そっから20分ほど歩いたところで、UさんがMさんに、
「何か変だと思わないか。パワーが消えている感じがする」と言い、
Mさんはちょっと戸惑ったような顔をしましたが、
「そうかもしれない。というかパワーは増しているような気がする。
 けど、悪いパワーだよな」 「どうする。やめるか」
「このままにはしておけないだろう」こんな会話になったんです。
その後、Mさんが私とS衣に向かって、
「危険なことはないと思うけど、もし何かあったら必ず僕らの言うことを聞いて」
と真顔で言いました。でも、私もS衣も、何かがあるとは思えなかったです。
高い空から木漏れ日が降り注ぎ、渓流が足元でサラサラ音をたてていましたから。
だから、Uさんたちが事前に打ち合わせておいた演出なんじゃないかと思ったんです。

ええ、それならそれで調子を合わせて楽しもうくらいの気でした。
そこから10分ほどで滝が見えてきました。そうですね、
3mくらいの高さで、そのあたりには滝はたくさんあるので、
特に観光スポットになるような感じじゃなかったです。
滝に近づくと、Uさんが「やっぱり! あれ」と横手の斜面に顔を向けました。
そこには他の木とともに、ひときわ太い大木がありましたが、
かなり高いところで、白いものがついた縄が切れて両側の枝にかかっていました。
「やっぱり注連縄が切られている」Mさんが言いました。
「それもそうだけど、ほら」今度はUさんが根もとのほうを指さすと、
そこは木の皮を幅5cmほどにはがして、白々と字が書かれてあったんです。
「禍」というふうに読めました。

「登って確めてくるからちょっと待ってて」Uさんが言って、斜面を登り始めました。
Mさんは私たちを少し下がらせて、木との間に立ちました。
そのとき私の足にしぶきがかかり、下を見ると、
流れの水の量が、ちょっとの間にかなり増えているような気がしました。
Uさんがやっとのことで木の根元にたどり着き、こっちに向かって手を振りました。
そのときS衣が、「あっ、あれ」と大きな声をあげました。
S衣が指さす滝の上に、白い大きなものがありました。
始めは何かわからなかったです。Mさんが「水から離れて」と叫んで、
私たちを山側に押しました。ドッドーンという音が響き、
盛大な水しぶきがあがりました。それで、滝から落ちてきたのが、
巨大な水の固まりだとわかったんです。全身かなり濡れてしまいました。

ほぼ同時に「うわーっ」という声が上がり、
斜面に登っていたUさんが転げ落ちてきました。「大丈夫ですか?」
私が駆け寄ると、Uさんは「ダメだ、手の打ちようがない。逃げよう」と、
うめくような声をあげました。滝のほうを見ると、今の水のせいか、
岩が大きくはがれ落ち、そこに空洞がのぞいていました。
かなりの深さで、奥のほうに白い骨、人体標本のようにつながった骨格が見えました。
でもそれは、普通の人間よりずっと大きかったんです。
Mさんが「あれ見ちゃダメだ」と私たちの背中をつかんで後ろを向かせました。
痩せてるのにすごい力でした。
Uさんが「どうやらケガはしていない。ただ僕らの力じゃどうにもならない」
「とにかくここは逃げて、神宮庁に知らせよう」とMさん。

滝に背を向け、私たちの前にUさん、後ろにMさんという形で、
そろそろと遊歩道に向かいました。いつの間にか天候が変わっていて、
あれほどの好天が、どんよりと濁った空の色になり、
それを映して渓流も黒ずんでいました。Uさんが、
「ぜったい走っちゃいけないよ。ゆっくり、何もなかったようにゆっくり進むから。
 後ろ見ないで」と言い、私たちはそろそろと進んでいきましたが、
このときどうしてか、後ろを振り返って、
もう一度あの骨を見たいという気が強くしたんです。
「あの骨が気になる。あれ何? ダメ、後ろ見ちゃいそう!」
私は声に出してしまいました。そしたらUさんが、
「見ちゃダメだっ! そうだ・・・しりとりをしよう」って言ったんです。

私もS衣もア然でしたが、
Mさんは「ナイスアイデア! できるだけ大きい声でやろう。
 ンを言わないでね。ほんとにヤバイから。
 じゃいくよ、ゴ・リ・ラ」Uさんが「ラッパ」と言って私をつつきました。
「パセリ」・・・こうやって、遊歩道まで戻ったんです。
ずっと後方に圧迫感があったんですが、遊歩道の観光客の列が見えてきた頃には、
それはほとんど感じないほど薄まっていました・・・
あとは後日談ですね。御神木は、滝の後ろにあった何かを封印していたもので、
それを何者かが意図的に穢したため、あの巨人の骨が出現したということでした。
それは、Uさん、Mさんがそれぞれ実家の神社を通じてしかるべきところに報告し、
高位の神官たちの手で再封印されたそうです。

ええ、しりとりはですね。魔除けの一種なんだそうです。
魔はつながっているものに弱いというか、
しりとりを続けていると、いつまでも終わりがないので、
魔が隙を見つけることができないんだそうです。
ですから、もし「ン」が出て終わってしまったら、危険なことにまったかもしれない
という話で、それを聞いて、あのときの恐怖が改めてよみがえってきました。
これで終わりですが・・・え? Uさんたちとはその後どうなったかって?
それはですね・・・私はUさんとはご縁がなかったです。
あんな怖い思いをするなんて、神職の家はぜったい私には無理です。
でも、S衣はMさんとおつき合いを続けているんです。
この間もBMWに乗って2人で出かけてましたよ。






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