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新歓

2015.05.24 (Sun)
えっと、某大学の廃墟探検サークルに所属してるもんです。
俺は3年なんですが、この4月に新入生が入りまして。
4人だけで全部男でしたけど。いや、女子はもともと期待してなかったんです。
ほんとに好きなやつだけ集ればいいんです。
あとね、いいですか、俺らは廃墟探索のサークルなんです。
オカルト系、心霊系とは一線を画してるっていうか・・・そのはずだったんです。
幽霊とかそういうもんはね、いないと思ってたんです。
俺らが追及してるのは「Ruin」でした。
えっと、滅亡、没落って意味です。ま、廃墟の美ってことっすね。
えー栗原亨さんって知ってまっすか。有名な廃墟探索家の人です。
樹海で何体も遺体を発見してる。ええ、そうです。

そんな人でもね、オカルトって信じてないんです。
何百もの廃墟を回って歩いても、不可思議なことは一度もなかったって、
インタビューや本で言ってます。だからねえ、俺らも信じてなかったんです。
実際、探索中には一度も変なことはなかったし・・・
だから毎年、新入生歓迎会はそれを叩きこむ目的でやるんですよ。
ええ、オカルトなんてないってことをね。どういうことかというと、
わざと怖い噂のある場所に連れていって、こっちが心霊現象をしかける。
でね、震えあがってるとこで、全部フェイクだぞってバラすんです。
これね、新入生一人ずつにやるんですよ。手を変え品を変えね。
で、そんときはSってやつの番だったんです。今月の始め、連休中に。
場所は、郊外の峠にある電話ボックスってことに決めてました。

え? 廃墟じゃないだろうって? まーそうなんですが、これね、
もう使われてないって設定にしてあるんです。ホントはまだ使われてますけど、
回線は普通で撤去を待ってる状態だって。それなら立派な廃墟でしょ。
ああ、ボックスの照明ね。そこも抜かりはないです。街灯はどうにもならないけど、
ボックス内の蛍光灯はあらかじめ電源を外しときました。
違法なんでしょうが、あんなとこ使うやつなんていませんよ。
そこに「一人で10分間入ってろ」ってのがSの課題だったんです。
俺らの計画はこうです。まず最初にSに、そのボックスに関する噂を吹きこんでおく。
殺人事件の被害者の女が最後に電話をかけた場所だとかなんとか。
ええ、そんな事件はない・・・ないはずなんですよ。
でね、Sを車でその近辺まで送り届けて、一人でボックスに入らせる。

ちゃんと10分いたことが証明できるように、外にビデオカメラをセットさせる。
透明プラスチックごしにSの姿が映るように。それを後に提出させるんです。
もうおわかりでしょ。俺らは近くに隠れてて、ボックスに電話をかけるんです。
ええ、ボックスの電話も決まった番号があるんです。それは事前に入手してました。
ねえ、使用中止になったボックスに電話がかかってくれば、そりゃ怖いでしょ。
ここで逃げ出したら不合格で、正座させて説教するつもりでした。
というかボックスは草むらの中なんで、仲間が一人草の中にいて、
Sが逃げ出そうとしたらドアの下部を押さえて、
出られないようにしようとも打ち合わせてたんです。
もし電話に出たら? それは合格です。肝が据わってるってことですから。
あと、呼び出し音を無視して10分ボックス内にいた場合も合格です。

でも、俺はそれは無理だと思ってましたね。一番怖いじゃないですか。
まあ確かに、俺らがイタズラでかけてると考えるもしれません。
それはそれでいいんです。冷静で先を読めるやつなら、
今後の廃墟の現場でも足手まといになりませんから。
ということで、夜の11時過ぎ、車でその峠まで行きました。
Sと俺ら3年生が4人です。いや、車通りはほとんどなかったです。
ゴールデンウイーク中で、遠出するやつらは高速通りますから。
でね、ボックスの近くでSにビデオを持たせて降ろしたんです。
そのまま俺らは行き過ぎたふりをして、
Sがビデオをセットしてボックスに入ったところを見はからって、
車を適当なとこに停めて歩いて戻ってくるんです。

そこらは草がぼうぼう生えてるんでわからないですよ。
こちいからだけボックスの中が見えるとこまで近づくと、
Sのやつはそれほどビビリ顔でもなく、壁にもたれかかってましたよ。
で、俺らの一人、Mが携帯で電話をかけたんですが・・・
「あれ、かっしいな。話し中だぜ」 「番号、間違えたんじゃね」
「いや、あらかじめ呼び出し音が鳴るのを確かめてから登録してある」
「なんだよそれ、つまんねえな。ビビらねえだろ」
ところがです。ボックスの中のSが、急に驚いたような顔になり、
ドアのほうに寄ったんです。電話のほうを見てました。
「やっぱ、鳴ってるんじゃね」 「でも話し中なんだが・・・」
「まあいい、回線が通じてて通話できないってんなら、それでいいだろ」

最初の計画通りに、Uってやつがしゃがんで草の中を歩いてボックスに近づき、
手だけ出してドアの下を押えました。
でね、見てたらSが受話器を取ったんです。「お!」
数秒耳に当ててましたが、受話器を放り出すようにすると、
ドアから逃げ出そうとしました。ところが開かない。
俺らは大笑いしたんですが、Sがドアを肩で押し始めて・・・
「あれ、いくらなんでも開くだろ。Uは不安定な体勢で一部押さえてるだけだし」
「確かに変だな」そのとき、草むらにいたUがボックスの前に転がり出て、
立ち上がってこっちに走ってきたんです。こう叫んでました。
「白い霧、霧か煙でボックスがいっぱいになってる」
「えーなってねえよ、こっから見てみろ」

突然、ボックスの四方の壁がべこっとへこみました。
ほら、深海のに缶カラを沈めると、水圧でへこむじゃないですか。
あんな感じにです。「わ、何だあれ」 俺らが驚いてる間にも、
ボックス全体がべこんべこん、へこんでは戻りを繰り返し始めました。
Sの姿が見えなくなって、どうやら床に崩れ落ちたんだと思いました。
「わわわ」「ありえねえ!」 「お前ら逃げるなよ! Sを救出する!!」
いちおうリーダーだった俺が叫んで、みなで一斉に電話ボックスに殺到しました。
ボックスの外壁に手をかけたら、ものすごく冷たかったです。
そこは郊外で肌寒いくらいでしたが、そんなもんじゃない。
冷凍庫なみに冷えてて、俺がボックスの折りドアに手をかけると、
ちょっと抵抗がありましたが、開いたんです。

仲間2人が倒れてたSを引きずりだして、
運転してきたやつが車を取りに走って・・・
Sの頬を2~3回ぺしぺし叩いたら目を開けたんでほっとしました。
車に連れ込んで、飲み物でも飲ませたら大事にはならないだろうと思ったんです。
そんとき、ボックスの電話がまだ鳴ってることに気がつきました。
変でしょ。受話器はSが投げ出したときに外れてるんですから。
「もう電話いいから、切れよ」携帯でかけたMに言ったら、
Mは当惑した顔で、「とっくに切ってる」って答えたんです。
俺らは顔を見合わせ、結局リーダーの俺が受話器を取って、
そのまま戻せばよかったんでしょうが、
怖がってないとこを見せようと耳にあててしまったんです。

そしたら・・・ザッ、ザッという雑音が聞こえ、それに混じって、
途切れ途切れに女の声が聞こえてきたんです。まとめるとこんな内容でした。
「あなたたち、私が殺されたこと知ってるんですね。
 この下の川原に埋められてるんです。早く助けてください」
意味が分かった途端、俺は電話を切りました。
そんときは仲間には話しませんでした。だってねえ、Uが見た白い霧、Sの失神、
ぼっこぼこになってひび割れたボックス・・・こんだけありえないことが起きて、
さらに混乱させるようなことをしても・・・後になってSから、
受話器を取ったとき「死んだ死んだここで殺された」と、
女が叫んだって聞いたんです。でね、ここに相談に来たんですよ。
どうしたもんでしょう。警察に行けばいいですか、やっぱ。







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