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流れる

2015.05.31 (Sun)


この間、○○街を歩いていたんですが、日に照らされて少し具合が悪くなったんです。
これはダイエットの最中だったせいもあると思います。
それでちょうど、10mほどの人しか通れない橋の上に来ていたので、
欄干にもたれて一息つきました。繁華街を流れる川なんですが、
水はそれほど汚れてはいません。鯉や水鳥もいるんですよ。
そのとき、白いものが川面を流れて橋の下に入ったのが目に入ったんです。
「あれ、何だろう」と思いました。一瞬、人の顔のような気がしたからです。
でも、橋を横切って向こうまで見に行く気にもなれず、出てくるのを待ってました。
そしたら、かなり遠く離れたところで見えるようになったんですが、
これはお面だろうと思いました。白くて、丸くて、上向き。鼻の頭が水から出るくらいで、
ゆらゆら流れていったんです。角度のせいで顔つきはわからなかったですね。

まあ、これだけなら不思議なことはないんでしょうけど、
そのお面は、名前のわからない小さい水鳥が多数いる間に入っていきました。
そしたら鳥たちが、お面が流れてくるのに気づいて進路を開けたんです。
端のほうにいた何羽かは飛び立ちました。
これも不思議ということもないですよね。
鳥には警戒物に見えたんということでしょう。
不思議なのは、お面が脇を通ったとき、最も近くにいた両側の2羽が、
まるで水中から足をつかんで引きこまれたように、
ずぼっと水に潜ったんです。テレビなどで見てると、
鳥って頭から潜るじゃないですか。それがそうじゃなく、まるで消えたみたいに。
それでずっと見て待ってたんですが、いつまでも浮かんでこなかったんです。



○○街の川に面したビアガーデンにいたんだよ。
ほら、この陽気だろ。いや、俺のところは夜に半袖でも暑いくらいだから。
会社の仲間5人で飲んでたんだ。酒量?
そうだなあ、大ジョッキ4杯で、それからチューハイに切り替えたばっかだった。
そんなに酔ってたわけじゃないよ。終電に乗って普通に家に帰ったからね。
でな、川のほうを見てた仲間の一人が、「あれ、人が流れてるんじゃないか」
って言い出した。ま、大事とは思わんかった。そこの川は流れがゆるいし、
底がすぐ見えて、大人の腰ほどの深さしかないんだ。
そいつが指さした方を見ると、暗くてはっきりわからなかったが、
確かに川から人の上半身のようなのが上向きに突き出て流れてる。
「ああ、マネキンか何かだろ」俺がそう言った。

だって、人にしては白すぎたし、硬直した感じだったからな。
右手を上に出してるようにも見えたが、ぴーんと伸ばして動かすでもない。
だから他の仲間も、「ありゃマネキンか、じゃなきや何かの人形だろ」
ちょっと見てそう言っただけで、視線をライブショーのほうに戻してしまった。
ま、これだけのことなんだが、最初に言い出したやつがまだ見てて、
「おい、あれ踊ってるぞ。手足を激しく動かしてる」こう言ったんで、
また見たけど、よくわからなかった。マネキンを人と見間違えて、
恥ずかしいんで、照れ隠しにふざけてるのかとも思った。
その後すぐに、「あ、見えなくなった」って言ったし。これだけで金もらえるんか。
申し訳ないね。あ、あとね、そんときのライブに出てた女のボーカルが、
後半のほうで倒れたんだ。歌ってて急にばたっと。大事にはならなかったけどね。



その日の夕方6時頃かなあ。店の2階で着替えてたんだ。
店の営業は7時からなんだけど、いろいろ支度があるんでね。
あたしはまだそこの店は日が浅いから、
けっこう早く来て準備を手伝ったりしてるんだ。えらいでしょ。
それでね、店の2階からは川が見えるんだよ。あんまりきれいじゃないけど、
ああいうネオン街を流れてるにしてはましなほうじゃないかな。
私はそこの街の出身で、子どもの頃はボランティアで、
川原のクリーンナップに参加したりしたんだよ。
それでね、何気なく川のほうを見てたら、真っ白い人が流れてきたんだ。
ああ、人って言ったけど、本物の人間じゃないよ。
真っ白というのは、発泡スチロールみたいな白さで、そんな人間いないじゃん。

それに動いてないし、死んだ人なら沈むでしょ。
それが浮かんでるんだから、軽いものだと思う。発泡スチロールそのものかも。
うん、ここまでは別に不思議じゃないよね。
粗大ゴミを見たってだけなんだけど、ただ・・・
その流れてくる人形の上に、変な霧が渦巻いてたんだ。
色は黒、最初は虫の固まりかとも思った。えーなんてったっけ?
蚊柱、そうそうそれ。あんな感じでうすーい黒っぽいもやが渦巻いてたの。
うん、これもね、それだけの話って言えばそうだけど。
ほら、あたしこの肩のとこにタトゥー入れてるでしょ。これ梵字なんだよ。
バンドやってる姉ちゃんと同じときに入れたんだ、別の字だけど。
その霧というかもやが、お姉ちゃんの字のほうと同じ形に見えたんだ。偶然かな?



バーのマスターをやってるんです。『レモンハート』ってマンガ知ってますか?
古谷三敏さんが書いてる酒のうんちくマンガです。
あれにあこがれて、バーマンの修業をし、金をためて河口近くに店を借りたんです。
いやあ、マンガのようにはうまくいきません。
だいいちあれだけの種類の世界の酒を仕入れて回転させるなんて、
家が大金持ちでもなければ不可能ですよ。
ただまあね、そこらへんは地代が安いんです。
ですから、店の近くにバンド練習用の貸しスタジオをこさえて、
そこに出入りしてる連中や、ときにはプロも頼んで、
ライブハウスみたいなこともやってしのいでます。
当初の目的とは違うものの、最近はけっこう名前も売れてきたんです。

で、ですね。その夜から3日間、地元の女性ボーカルのジャズバンドに、
来てもらうことになりまして、その1日目のことです。
6時ころに店にバンドのメンバー5人が来られて、
貸しスタジオのほうに入って休んでもらおうとしたんです。
そしたらね、女性ボーカルの方が川のほうを指さして、
「あれが、ここまで来てる。流れて来てる」って叫んだんです。
それで私も、もそっち見たんですけど、
何か白っぽいものが中州にひかかってるようには見えたんですが、
何だかわかりませんでした。そんときは他のメンバーがなんとかなだめすかして、
とにかくスタジオに入ってもらったんです。
いや、宣伝してましたから、キャンセルは困るなーと思いました。

でね、スタジオに様子を見に行ったら、
ボーカルの方がドラムのミュート用の毛布をかぶって震えてたんです。
他のメンバーと話し合って、やっぱその夜は無理で、
明日からのことは様子を見て連絡するって言われました。
しょうがないと思いましたよ。誰だって具合の悪いことはあるわけだし。
お客さんにはライブ代を払い戻して何か一品おごればいいかと・・・
で、30分後くらいに、バンドのギターの人が来て、
ボーカルの女性の姿が見えなくなったって言ったんです。
中をくまなく探したけどいなくて、ええ、歩いて帰ったかとも思って、
あちこち連絡もしたんです。それで最後、バンドのミニバンの中を
まだ見てないってことに気がついて、全員で外に出ました。

そしたら、川の岸近くで水しぶきがあがってたんです。
ええ、そこは海に近いのでテトラポットが入ってるんですよ。
何だろうと思っていってみたら、ボーカルの女性が川にはまって溺れてたんです。
すぐに駆け寄ろうとしたんですが、テトラがでこぼこしてるでしょ。
悪戦苦闘してるうちに女性は沈んでしまって、
かわりにそこの水面に白い変な人形が突然浮かんだんです。
発泡スチロール製ですかね。川に入ってたわりにはどこも真っ白でした。
うん、もちろん警察にも連絡したんです。
朝方まで捜索したんですけど、女性は見つかりませんでした。
その人形ですか?流れてってしまったと思います。特徴も何もないものでしたが、
背中の真ん中に、梵字ですかねえ、黒い大きなマークがあったのを覚えてます。







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