天空の図書館

2015.07.10 (Fri)
* 難しい話の上に、自分がどっかで間違えている可能性も多分にあります。
 怖い話を期待される方はスルーをお勧めします。

「天空の図書館」・・・奇異な題名ですが、今日は怖い話ではありません。
これはアカシック・レコードと言われるものの別称です。
アカシャ年代記とも呼ばれています。19世紀後半から20世紀初頭の、
オーストリア帝国に生まれた神秘思想家、
人智学を創設したルドルフ・シュタイナーが作った言葉であるとされます。
シュタイナーは、日本では幼児教育の分野で語られることが多いですが、
哲学、文学、医学、建築など多方面で多くの業績を残しています。

では、アカシック・レコードとは何かということですが、これは、
「物理界・幽星界・神界・天空などの世界の果てに、
それを取り巻くように不思議な境界線が遠く伸びており、
ここには全宇宙の歴史が時間の流れにしたがって配列されており、
あらゆる生物、民族や個人についての全記録が保存されている」
というものです。

それは、解読不可能な言語で記録された膨大な蔵書をようする図書館にも例えられ、
透視能力のある意識だけが、近づいて情報を引き出すことができるとされます。
オカルティストの間では、過去の出来事のみにとどまらず、
未来に起きるすべてのことも記録されていると考える立場もあり、
これに立てば、あらかじめ万物の運命は決まっているという宿命論になります。
現代ではニューエイジ用語としても使用され、
心霊治療家であるエドガー・ケーシーが用いたことで一般にも広まりました。

実際にそんなものがあって、自在に情報を引き出すことができるのであれば、
それはすごいことですが、これはあくまでも世界記憶的な概念です。
ところが最近、話題に上ることが多くなってきました。
「ホログラフィック宇宙論」という最新の宇宙物理学上の知見との関連においてです。
ホログラフィックとは「ホログラム(ホログラフィー)」
2次元なのに3次元に見える写真のことですが、ここから名づけられています。

さて、どこから話を進めればいいでしょうか。
まず例えば、音楽CDでもいいかな。あの丸い円盤をヤスリか何かで、
粉状にすりつぶします。さらに熱を加えてその粉を燃やしつくして灰にします。
そうすれば、CDに含まれていた情報は、
完全に破壊され消滅してしまったように見えます。

しかし、物質が消えてしまうということはありませんから、
CDを粉にして燃やすという一連の過程をビデオに撮ったものを逆回しする
(灰が粉になりCDに戻っていく)ようにして元に戻し、技術的な困難はともかく、
理屈の上では元の情報を再現することはできるはずです。

さて、このブログにたびたび登場するホーキング博士は、
「ホーキング放射」というものについての理論を発表しました。
これは簡単に説明すると、「量子力学的に真空ゆらぎからトンネル効果により、
粒子がブラックホールの事象の地平線付近で対生成を起こす。
その対生成で出来た二つの粒子の一方が地平線に向かって落ち片方が外へ放射される。
エネルギー保存の法則からブラックホールの質量エネルギーは下がり、質量を失う」


つまり、ブラックホールは消え去る方向へと向かっていくわけです。
ですからこの理論は「ブラックホールの蒸発理論」とも言われています。
巨大なブラックホールにおいては、微々たる量のこの放射は問題になりませんが、
極小のブラックホールならば、
できたとほぼ同時に蒸発してしまうこともありえるわけです。
ホーキング放射の観測は試み続けられていて、極微小なので難しいでしょうが、
もし観測されれば、ホーキングのノーベル賞受賞もありえるでしょう。

このどこが問題かというと、ブラックホールの中心には重力の特異点があります。
量子もつれを起こしながらこの特異点に入ってしまうと、
量子状態に関する情報が破壊され、完全に消え去ってしまうことになりそうです。
これは困ったことです。さっき例に引いたCDであれば、
どうやっても元に戻すことができなくなってしまうわけですから。

このことを「ブラックホール情報パラドックス」と言います。
ちなみに余談ですが、ホーキングとその仲間たちは冗談が好きで、
この分野で生じた定理や仮説を「裸の特異点」
「ブラックホール無毛定理」「宇宙検閲官仮説」などと、
ポルノ取締りに関する用語のパロディ?で名づけています。

この理論を発表したとき、ホーキングは、ブラックホールに落ち込んだ情報は、
完全に破壊されると確信していたため、1997年、
前にタイムマシンの話で出てきたキップ・ソーンを味方に引き込んで、
物理学者ジョン・プレスキルと賭けをすることになりました。

負けたほうが「情報を自由に引き出すことができる事典」
を勝者に贈るというものです。
(ブラックホール無毛定理=ブラックホールには毛がない=情報を引き出せない)
そしてこの賭けは、多くの物理学者を巻き込んで大きな論争を引き起こしました。
たくさんの仮説が発表され、ホーキング方の旗色が悪かったのですが、
2004年にホーキング自身も情報が保存される一つの仮説を発表し、
自分の負けを認めました。これによりプレスキルには、
彼が望んだ野球百科事典が贈られたのです。

さてさて、この論争の過程で、
ブラックホールに落ち込んだ情報は、ヘーラルト・トホーフトによって、
事象の地平線の上に符号化されて保存されると説明され、
超ひも理論の研究者も同一解を示してこの結論を支持しました。
このあたりは難しいのですが、思いっきり簡単に言ってしまうと、
ブラックホールに落ち込んだ情報(エントロピー)は、ブラックホールの事象の地平線の、
表面積に比例して保存されるということのようです。

これは意外ですね。直観的に理解しにくいです。なぜ体積ではなく表面積なのか・・・
ところでブラックホールだけではなく、
われわれのこの宇宙にも事象の地平線はあります。
これはシュヴァルツシルト面とも言われ、
いっさいの情報が到達できなくなる限界面と考えられています。

とすればわれわれのこの宇宙の全情報もまた、
宇宙の事象の地平線上に記載されており、
われわれが生きて行動することのすべては、
その2次元情報に基づいていると見なすこともできてしまうようなのです。
もし世界が2次元からの投影であれば、重力についても説明しやすくなります。
まだまだ理論上のものではありますが、アメリカのフェルミ国立加速器研究所において、
検証実験が行われようとしています。もしかすれば、
われわれの存在は2次元情報を元にした超高解像度の3D映像のようなものである、
ということが明らかにされるかもしれませんww

どうでしょう、ここまでお読みになった方は、
最初に出てきたアカシック・レコードとの類似点にお気づきにはなりませんか。
神秘学的な考えと最新宇宙論はもとより比較すべきものではないことは
承知していますが、じつに、じつに面白いなあと感じます。
こういうのを見ると、長生きしたいなあと思いますね。
自分が生きているうちにどこまでのことがわかるのか、
この世界はどれほどまで予想を超えた不可解な姿を現し続けるのか。
楽しみでなりません。






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