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実話系の話7

2015.07.27 (Mon)
これはテレビカメラマンであり、大学時代は有名山岳部、
その後社会人になっても山岳会に所属し、30代でヒマラヤ遠征も達成した、
Mさんから聞いた山の話です。現在は60歳を少し過ぎましたが、
バリバリの現役です。自分も山行はときどきしますが、
渓流釣りの沢登りやハイキング程度の軟弱登山で、
Mさんの経歴には及ぶべくもありません。
この前、飲み会でごいっしょした際、山での不思議な体験をお聞きしました。

ケルン

ケルンというのは積石のことです。検索すると、
どうやら「ケアン」というのが正しいようですが、
Mさんがケルンと言っていたので、ここではその表記でいきます。
Mさんが大学の1回生時代、自分からあこがれの山岳部に入部しまして、
厳しいしごきは本で読んで覚悟はしていたそうですが、
バイトしてもバイトしても装備代で金が消えていくほうが辛かったと言ってました。
先輩方は入部したての1回生のために入念な歓迎山行の計画を立てており、
かつて他の大学で、しごきで死者が出た事件もあったため、
蹴られるとかピッケルで叩かれるなどの体罰はありませんでしたが、
それはハードな内容だったそうです。しかし、Mさんは高校時代、
地元ではかなりの強豪校の野球部員だったので、新入生の中では最も体力があったそうです。

だから怒鳴られるなどのことはほとんどなかったそうですが、
1度だけ先輩にすごく怒られたことがありました。それは、ガレ場で休憩しているとき、
道のかたわらにケルンが積んであるのを見つけたときです。
Mさんはケルンのことはなんとなく知ってましたが、見るのは初めてでした。
まず死者が出るような場所ではないので、
誰かが面白半分に積んだんじゃないかと思いましたが、土台の丸石の上に平たい石、
その上四角っぽい石が積んであり、その上にもう一つ石が載せられそうな感じがしました。
それで、何気なく近くにあった中から治まりのよさそうな三角のを選んで上に載せた。
そんときに3回生のサブリーダーにこっぴどく叱られました。
「あったものは、あったままにしておけ!」って。
Mさんはおそるおそる「縁起悪いとかですか?」と聞いたら、先輩は、

「見てのとおり、ここは遭難死するような場所じゃないから、
 そのケルンも誰かの墓標ってことはないだろう。そうじゃなくて、
 行動以外のことで山のものにさわるのは、収まってるものを動かすわけだから、
 たししたことないと思っても、巡り巡ってどんな影響が起きるかわからん。
 だから無意味な行動はするべきじゃないんだ。意味もなく積むのはよくないし、
 崩れてたのを戻すのもいいことじゃない」こんなことを言われたんです。
Mさんは「ははあ、奥深いもんだな」とそのときは思ったそうです。で、歓迎登山が終わり、
へとへとになってアパートの部屋に帰り着きました。疲労のあまりザックをほっぽりだして、
その日は寝てしまったんですが、翌日装備を整理していたら、なんと中から、
Mさんがあのときに上に載せようとした三角の石が転げ出てきたそうです。
「これ意地悪とかで先輩がやったとは、ちょっと考えられないんだ」こう言ってました。

リングワンダリング

ワンダリングは「彷徨う」という意味で、道を失って、
輪を描くようにして同じ所をぐるぐる回ってしまう状態を言います。
慣れ知った山でも、かなりのベテランでも、多人数でも、
そういう状態に陥ってしまうことはあるんだそうです。Mさんは、
「昔から登山者の間では、人間の足や手の長さは微妙に違っていて、 
 自分では真っ直ぐに進んでいるつもりでも、そのことが影響して少しずつずれていく。
 やがては同じ所をぐるぐる巡る状態になると言われてたけど、
 最新の外国の実験では原因は別らしいんだな。
 もっと人間の方向検知能力に関する根源的な問題らしい。昔からあったことで、
 キツネや狸に化かされた話として伝わってるな」と言ってました。
「なったことあるんですか?」と聞くと、

「ないけど、なりかけたことはあるよ」こう答えて体験を話してくれました。
Mさんが大学3年で、リーダーとして下級生を率い、
北陸方面の岩峰に行ったときのことです。
秋のことで、けっこう霧が出ていましたが、Mさんはそのルートには2度入ったことがあり、
道に迷うことはないと思っていたそうです。まだ中腹の森林地帯を登っていたとき、
向こうから社会人らしい3人のパーテイが下りてきましたが、
3人とも「おかしい、おかしい、えらい目にあった」と首をひねっていたそうです。
それでMさんたちに向かって「この先の道おかしいから。ルートがおんなじようで違う」
一人がそう言って、Mさんの右腕にオレンジのタオルを巻いたんだそうです。
「この先の分岐、どっちに行くつもりだ」と聞かれたので、
Mさんは「右の道です」って答えました。そしたらその人は、

「だよな。だけどなんか変なんだ。もし迷うことがあったら、タオル巻いたほうが右だから」
こう言い残して下っていったそうです。「変なこと言うなあ」と思いながら、
大岩の前の分岐に出ると、そこはひときわ霧が濃くなっていて、
右に行くはずなのに「正しいルートは、どうしても右ではない」って思えたんだそうです。
「だけど、さっきの人たちにも右って言ったし・・・」霧の合間から切れ切れに見える景色は、
覚えがありましたが、それを目にするとますます、
「左に曲がるのが正しい」って思えたんだそうです。
でも、さっき巻かれたタオルが右腕にあるし、Mさんは「ええい」と、
左が正しいと思う気持ちを振りきって右の道に進み、無事に山頂にたどり着いたんです。
「あれな、帰りは霧が晴れてて。そしたら左の道のはずはないんだよ。
 なんで左が正しいって思ったのか、自分でもおかしいくらいだった」こう言ってました。

死に場所

これはMさんが、社会人の山岳隊の仲間3人と初めて海外遠征したときのことで、
ヒマラヤの6000m峰でのことです。
もちろん全員が初めての山で、現地ガイドを一人雇っていました。
エベレストやK2などの有名な山ではないにしても、
6000m級となれば高度順化が必要です。
少しずつ体を酸素の薄い状態に慣らしながら登らないと、
高山病を起こしてしまうってことですね。酸素ボンベは使用しない予定でしたので、
ベースキャンプを設置して、少しずつ登っていきました。
夏季のことでもあり、登山は計画通りに進行し、みな体調も上々だったそうです。
で、頂上がはるかに見えるあたりまで来ました。
そのとき、仲間の一人が「あの岩、なんかいいなあ」とぽつりと漏らしたそうです。

確かにいい形の大岩が眼前にありましたが、
その仲間の言葉に込められた感慨があまりに深かったので、Mさんは、
「あれ、そんなにいいかな」って聞いたんだそうです。
そしたら「うん、あの形、たたずまい、もし自分が死ぬんだったらああいうとこだよ」
「おいおい、やめてくれよ。お前、新婚じゃなか。無事に帰ろうぜ。
 それにあの大きさだと、日本に持ち帰って墓石にするわけにもいかんぞ」
こんなふうに答えて近づいていきました。そしたら、風の関係か、
その岩の裏側は溜まっていた石が掘れてになったのがいくつもありました。
さっきの仲間がその一つに近づいて、「いい墓穴まであるじゃないか・・・」
と言いかけて「あっ!!」と叫びました。
人工的な青い色が穴の底に見えたんです。

時間があったので、ガイドと5人がかりで石をどけていくと、
出てきたのはヨーロッパ人の男性の遺体でした。
これはあとで登山記録を調べてわかったことですが、遭難して行方不明になってから、
なんと16年目のことだったそうです。
その山はヒマラヤの入門者が登る山として知られていて、
毎シーズンそこそこ入山者はあります。
そのときのガイドも10回以上は入っていたんですが、まったく気がつかなかったと、
言っていたそうです。もちろん遺体はカラカラに乾いていて、
死臭がしたということもありません。
「やつが、こんなとこで死にたいって言ったのは偶然だと思うけど、
 やっぱ、こういうのは山の不思議の一つだと考えたいよね」Mさんは言っていました。






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