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奥秩父

2015.07.29 (Wed)
* 昨日2chに書いたものです。

今年の5月の連休だけど、会社の仲間2人と、
2泊3日の予定で奥秩父に渓流釣りに行った。
あのヘリが墜落したり日テレ社員が遭難した、4重遭難と言われる事件で、
奥秩父は怖いところだ、緑の魔境だって噂が広まったが、
天候やルートなどの基本的なことに気をつければ、それほど怖い場所じゃないと思ってた。
たくさん死者が出たからマスコミが騒いだが、
ヘリ墜落は山岳遭難とはちょっと違うだろ、って。
場所は少しボカさせてもらうが、川上村役場から奥の支流に入っていったあたりだ。
ねらいはヤマメとイワナ、ルアー中心だが状況によっては生き餌もやる。
1日目は釣果は大きかったな。 20cm内外のヤマメがかなり釣れ、
みな気を良くして、酒飲んで車中泊した。

2日目はもっと奥に入って、冷水域のイワナをねらおうってことになり、
3人で2人用のテントを二つ持って、
その日のうちには車のとこまで引き返せない上流まで分け入った。
だけどイワナはあんまり釣れなかったんだ。
そのうちに夕方になって小雨がぱらつき始めたんで、早めに山側に入ってテントを張った。
本当はダメなんだが焚き火をしようってことになり、みなで乾いた木を拾いに出かけた。
山には入らずに川原にそって石の上を歩いてたら、
川べりにうずくまってる赤いベストの人がいたんだ。
俺ら以外の釣り人はそこらでは見かけなかったんで、
挨拶がてらポイントを聞こうと思って近づいていった。そしたらすげえ嫌な臭いがしたんだよ。
腐った魚の臭いなんだ これは俺らは慣れてるのですぐわかる。

それと「オエーッ、オエーッ」と吐いてる音が聞こえてきたんだ。
数メートルまで近づいて、「どうしましたか」って仲間が声をかけたら、
そのベストのやつがふり向いて、歳は40代かなあ、
ネガネをかけてきちっとした髪型のおっさん。
そいつが川のほうを向いて口をもぐもぐさせてたんだ。
それで2、3回噛むと「オエーッ」って川に向かって激しく吐く。
そのたびに腐った臭いがきつくなった。「大丈夫ですか、病気なら救助要請しましょうか」
そう俺が聞いたら、おっさんはにやっと笑って、魚篭を川から上げてみせた。
するとまた臭いが強くなって、腐った魚が入ってるんだと思った。
おっさんが魚篭に手を突っ込んで上げると、
やっぱり、白くぐずぐずになったヤマメが握られてたんだ。

肉も腐ってるから指の間からだらだらこぼれるんだが、
おっさんはニヤニヤしながらそれを口に突っ込む。で、また「ゲボーッ」って吐くんだ。
俺らは気味が悪くなって、後じさりしながらおっさんのとこから離れたんだよ。
どう見ても異常な行動だったし、
それに臭いがこっちに移ってきて、俺らも吐きそうになったんだ。
離れて遠くから見たら、おっさんはまだ川べりにしゃがんでいた。
あたりにはザックや竿は見なかった気がする。
「なんだよ、あれキチガイか」「異常だよな。あんな腐った魚、生で食うとか」
「うええ、気持ち悪りい。もうその話題やめろ」
こんなことを言い合いながらテントまで戻ったが、一人が、
「警察に通報しなくてもいんいいんかな。どう見てもおかしい」って言い出した。

「知らんよ、あの様子だと、救助要請しても俺らがよけいなことしたって言われかねん」
「だよな、こんな場所に来たら基本、自己責任だよな」
翌日は午前中に帰りたかったから近くの木にカンテラをかけて、
その日はあまり酒も飲まず、9時過ぎには寝たんだよ。
テントは俺と木村ってやつが同じで、もう一人が別のテント。
それで、夜中にガサガサする音で目が覚めてしまった。
携帯で時間を見たら4時前でもうすぐ明るくなる。
木村が寝袋から出て、テント外にいくところだったんだ。
「ああ、小便か」と思ってまた寝ようとした。 
けど寝つけなくって、それと木村がいつまでたっても戻ってこない。
小便ならそこらの草むらにすればいいし、おかしいと思って懐中電灯を持って外に出てみた。

川のほうに行って足を滑らせ、頭を打ってるなんてことも絶対ないとは言えないからな。
テントのまわりの明るいところには姿はなく、
「おーい 木村ー」って呼びながら、ぶらぶら川のほうまで行ったんだよ。
そしたら遠くから「オゲーッ」って吐いてる声が聞こえてきた。
夕方のおっさんのことを思い出していやーな気がしたが、
それは木村の声のように思えたんだよ。
勇気をふるってそっちに向かって行ったら、
だんだん、夕方のおっさんがいた場所に近づいていくのがわかった。
ひっきりなしに「オエーッ、オエーッ」って声がして、明らかに木村だと思った。
で、空がだいぶ明るくなってきてたんだよ。
夕方におっさんがいた場所よりも川の中のほうに、木村がしゃがんでるのが見えた。

「おい、お前なにやってるんだ。冗談にしたらたちが悪いぞ」
かなり不機嫌な声でそう呼びかけたんだが、木村はこっちを見ない。
目の前の渓流の石の陰から、何かをすくって食ってるような動きをしていた。
「まさか、あのおっさんのマネをしてるんか?」そう思って走り寄ったら、
川の岩の間に赤いベストが見えた。人がうつ伏せに倒れて顔まで水に浸かってたんだ。
あと、魚の臭いとはまた違う腐臭。近くまでいって唖然とした。
顔が見えなかったが、倒れてるのはあのおっさんだとしか考えられなかった。
全身が水を吸ってて、しかも新しい死体じゃないように見えた。
それで木村は、おっさんのむき出しの腕から、
白くふやけた肉を爪でこそげとって食ってたんだよ。

「何やってんだ馬鹿、お前!!」俺は木村の背中をつかんで後ろに引き倒した。
そしたら木村は仰向けに浅い水に倒れながら、
口からぶーっと上にゲロを吐いたんだよ。
それからうつ伏せになっ川原まで這っていき、すすり泣き始めたんだ。
俺は混乱して、どうすればいいかわからなかった。
とりあえず、もう一人のやつに携帯で連絡し、
「死体を見つけたから、警察に通報してくれ」って頼んだんだよ。
それから木村を解放しようとしたが、手足をバタバタさせて暴れ、
暴れながら吐き続けていたんだ。このあとはものすごくごたごたして、何日もつぶれた。
赤いベストのおっさんは、どっからも捜索願とか出てなかったが、
死後1週間ほどで、まもなく身元が判明した。

俺らが山に入るだいぶ前に死んでたんで、嫌疑とかはかかってないよ。
警察からは詳しいことは教えてもらえなかったが、どうやら自殺のようだった。
離れたところの橋から身を投げて、そこまで流れてきたってこと・・・
確かに現場にはおっさんの身一つだけだったんだが、
だとすると、夕方に俺らが見た魚篭と、その中の腐った魚は何だったんだろ。
人の腐臭とはまた違う、あの魚の臭いは?
死者が俺たちを惑わせようってことだったんだろうか・・・
木村はずっと錯乱してて、警察署でもまともな話はまったくできなかったな。
暴れて手がつけられないんで、家に戻っても家族が入院させるしかなかった。
それで今も、精神科に転院して入院中で面会もできないんだ。
まあこんな話だ。もう行かないよ、釣りは止めることにする。

あいあいあおうううう




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| 2017.07.19 22:07 | 編集
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