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本の感想6

2015.08.05 (Wed)
今回は久々に本の感想です。あまり間隔が開いたので、
どういう書き方をしていたか忘れました。
『山怪 山人が語る不思議な話』田中康弘 山と渓谷社
文庫本ではなく、ハードカバー1200円+税です。
著者の田中氏は、本業は著述家ではなくフリーカメラマンです。専門は「マタギ」で、
東北地方・北海道で古い方法を用いて集団で狩猟を行う猟師のことです。
その方が、長年マタギの中に入って写真撮影した中で聞き集めた話ということで、
実話感がひじょうにあります。これは怪異の起きた場所や、
遭遇した人物がわかるように書かれているからで、
他の実話怪談本とは一線を画していて、お勧めの一冊だと思いますね。

どっちかというと採取された民話に近いような感じですが、
「座頭市の勝新太郎と戦ったマタギ」という奇妙な話も載っています。
ただこれは、状況からすればぐんでんぐでんに酔っ払って見た幻覚としか思えませんが。
書かれている主な怪異は、狐、狐火、狸、蛇、ツチノコ・・・
野生動物に関するものが多いですが、
それ以外にも人魂、神隠し、タマシイ、カーナビの異常、臨死体験、マヨイガなど、
けっこうバラエティに富んでいます。
話を取材した場所も、東北ばかりではなく、四国や奈良県、栃木県、
那須高原など全国に及んでいて、それぞれの地で同じ狐の話にしても、
共通する部分と異なる部分があったりして実に興味深いです。

あと各地で共通して出てくるのが「足のない幽霊の話」です。
足のない幽霊というと、知識として「江戸時代の幽霊画の影響を受けている」
などとしたり顔で言ってしまいがちですが、どうもそれだけではない、
と思わせられる何かがあるようです。足、下半身がなくとも歩く音だけが聞こえた、
という点も共通しています。おもしろいなあと思いました。

この山の怪異というのは、基本的に悪意のあるものではありません。
自分の書く話では、人の怨みによる祟りや呪い、嫉妬などが出てくるのですが、
山の怪異はそういうのをとっぱらった、現象そのものであることが多いのです。
このことは著者自身も後書きで書いておられます。
それと、山の怪異は静的であるということも。
これは、必死になって怪異と戦ったり、
坊さんや霊能者に頼って大々的にお祓いするというような展開ではなく、
いつのまにか始まり、知らないうちに収まってしまうということです。

自分もけっこう山行はするほうなのですが、
確かに山では不可思議な現象はあります。前にも書いたのですが、
自分が奇妙だなあと思っている現象は2つあって、
一つは、雑木林の一枚の木の葉や一枝だけが、
風もないのになぜかちらちらと揺れている現象。
他の部分はまったく動いていないのにです。

もう一つは、絶対に人が入れるはずもない藪の斜面などで、
笑い声や会話のような音が聞こえること。
これは自分以外にも体験したという人は多いんですが、
聞いてみれば絶対に鳥の声や木の枝がこすれる音ではないことがわかります。
ただ、これらの怪に遭遇したからといって命にかかわるようなことはありません。
山では、怪異以外の危険のほうが当然ながら多く、
集中していないと命にかかわる場面はいくらもあります。

上の二つの現象も合理的な説明がつくようです。
木の葉がちらちらするのは、たまたまその部分がモビールのように微妙なバランスになっていて、
他の部分が動かないようなわずかなな風でも影響を受けてしまうから。
声の方ほうは、これは本当かどうかわかりませんが、
拡声器を使用した声や、有線放送などが、
谷や山の尾根を伝ってかなり遠くまで流れてくるものであると説明する人もいます。
ヤマビコの原理を考えてみれば、声はかなりの距離を伝わっているので、
自分としてはそういうこともあるのかなあと思います。

最後に、著者の田中氏に関しては、twitterにおいての「実話怪談批判」というのが、
自分ら怪談フアンの間では話題になっています。
興味を持たれた方は検索してみてください。







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