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妖怪談義10(二口女)

2015.08.10 (Mon)
二口女というと、後頭部の髪の中に大きな口がある女の妖怪?のことを言うんですが、
話としては2つのパターンに分かれます。
どちらも因果応報譚、つまり自分のやった行為が自分に報いるという、
仏教的なお話になっているものの、軽い因果と重い因果の話があるんですね。
まず、重い因果の方は、

『ある家に後妻が嫁いだ。夫には先妻との間に娘がいたが、
後妻は自分の産んだ娘のみを愛し、先妻の子にろくな食事を与えず、
とうとう餓死させてしまった。それから49日後。夫が薪を割っていたところ、
振り上げた斧が誤って、後ろにいた妻の後頭部を割ってしまった。
やがて傷口が人間の唇のような形になり、頭蓋骨の一部が突き出して歯に、
肉の一部が舌のようになった。この傷口はある時刻になるとしきりに痛み出し、
食べ物を入れると痛みが引いた。さらに後、傷口から小さな音がした。
耳を澄ますと「 心得違いから先妻の子を殺してしまった、間違いだった 」
という声が聞こえた。』


なかなか怖いお話です。『シンデレラ』や『ヘンゼルとグレーテル』など、
世界的によく見られる、継子いじめの物語なんですね。
昔は現代よりも「家」というものが重視されていましたので、
誰が家督を継ぐのかというのは重大事でした。
子どものできない妻は離縁されたというような話もあります。
ですから、後妻などに入った先に先妻の子がいれば目障りですし、
悲劇を生む要因になったことも考えられます。

この手の話は非常にうけがよく、昔は旅芸人一座の演目の中にも、
継子いじめ物というのがあったそうです。子どもの役者が継子役になって、
舞台にしつらえた井戸に吊るされたりするんです。
で、観客の涙をしぼる。最後は、本当の親が現れたり、
継母がお上から罰を受けたりして、観客の溜飲を下げる・・・

ここでは二口女は実際の生きた人間で、妖怪ではありません。
後頭部にできた傷こそが、殺された継子の恨みがこもった、
人面瘡的な妖怪となってとり憑いているわけです。
この話の女は悔いてはいるのですが、継子を餓死させた罪は重いですので、
おそらく助からなかったのではないでしょうか。
心から神仏におすがりすれば、あるいは。

もう一つのパターンは民話系で、『食わず女房』と言われる話です。

『あるところに非常に吝嗇な男がいて、女房をもらっても飯を食わせるのがもったいない。
それで常々「飯を食わない女房ならもらってもよい」と公言していた。
すると、その望みどおりの女が山から現われて嫁になる。嫁は望みどおり働き者であったが、
不思議なことに米をはじめとした食糧が異常に減りはじめる。
仕事に出掛けるふりをして家をのぞき込んだところ、嫁が大量の飯を炊いており、
髪をかきわけ頭頂にある大きな口からそれを次から次に食べていた。
嫁の正体が人間ではないことを知った男が離縁をしようとしたところ、
嫁はおそろしい姿に戻り、男を自分の家へ連れ去る。男は隙をついて逃走、
菖蒲の生えた湿原に身をひそめることによって、追跡から逃れることができた。』


こういう話なんですが、ここでは女は山姥などの妖怪そのものです。
話の因果としては、男の吝嗇が妖異を呼び寄せ、罰を受けることになりますが、
前の話のように人を殺したりしているわけではないですので、
男は神仏の力で助かるという結末が多くなっています。
話としては日本全国に見られ、妖怪の正体も山姥の他に、
クモ、タヌキ、カエル、河童、ヘビ、山犬などがあるようです。
もちろん教訓として、吝嗇を戒めているのですが、
それ以外にも、いつまでも嫁をもらわぬ男にはやはり家を継ぐ問題が出てきますので、
そのあたりの意味も含んでいるのかもしれません。

それと、この物語には「植物の功徳」という一つの要素が含まれていることが多いのです。
菖蒲は魔除けの効果が絶大で、妖怪はこれに触ると溶けてしまいます。
また、地域によっては蓬(よもぎ)が代わりを務める場合もあります。
菖蒲も蓬も、どちらも端午の節句に縁起物として用いられていますので、
その起源を説明する起源説話にもなっているのです。

山姥から難を逃れる話には、他にも「三枚のお札」などがあります。
これは和尚にもらったありがたいお札が、山や川に変じて山姥の行く手を阻むのですが、
この原型としては、日本神話にみられる「イザナギ、イザナミの黄泉返り」の話の中で、
腐敗した死体に変じたイザナミに追いかけられたイザナギは、
髪飾りから生まれた葡萄、櫛から生まれた筍、
黄泉の境に生えていた桃の実を投げつけて難を逃れる・・・
ここでも植物の功徳が描かれています。

『絵本百物語 二口女』竹原春泉






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