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自分の影に怯える

2015.08.13 (Thu)
えーお盆期間中は創作を自粛していますので、今日も脳科学的なお話です。
怖い話を期待されている方はスルーをお勧めします。
ところで「自分の影に怯える」というのは慣用句なんでしょうか。
ウエブ辞書を引いてみたんですが、はっきりしたものが見つかりませんでした。
この言葉からは自分は「ドッペルゲンガー」というものを連想しますね。
「自分とそっくりの姿をした分身」のことで、
それを見たものは死期が近いとも言われます。

さて、今回紹介する実験は、スウェーデンのカロリンスカ研究所で、
イギリスと地元の研究者が合同で行ったもののようですが、
こんな内容です。
『被験者にゴーグルを装着させ、そのゴーグルを介して被験者自らが
別の場所にいる映像を映し出しながら、被験者の身体に触れる。すると被験者は、
別の場所で何かに身体を触れられている自分を見ているような、
あたかも幽体離脱しているような感覚を体験したという。
世界初となるこの実験では、
被験者10人に1人の割合で幽体離脱の感覚を味わった。』

これだけだとわかりにくいでしょうね。実験の一例をあげると、
被験者がつけるゴーグルの中には、
自分の背中が見えるようにリアルタイム映像を入れます。
そうすると当然混乱が生じるわけですね。
自分はいったいどこにいるのだろう?
今ゴーグルをかけて映像を見ているのが自分なのか、
それとも目の前に見える背中が自分なのか? 落語の『あたま山』のようです。
その後、手に棒を持たせて、目の前に見える背中をつついてもらう。
その瞬間、実験スタッフが被験者の背中をつつくわけです。
ここで混乱は最高に達します・・・

なるほどなあ、と思いました。費用のかかる難しい実験ではないですし、
その意味は一目瞭然です。
ただ、自分が2つに分離した感覚を持ってしまう実験を、
長時間続けるのは危険なような気もします。
本当に意識が分裂してしまったりしないものでしょうか?
現在一部で流行しているヘミシンクなども、十分注意すべきだと思いますね。

この実験にかかわる脳の部位を「角回」というのだそうです。
脳の側頭葉の上端付近に位置しています。
ここを刺激されると「ぞわぞわー」とした感じを持つということです。
まるで、自分の背後にべったりと誰かがくっついているような感覚ですね。
しかし、冷静になって右手を上げてみる。すると背後の何者かも右手を上げる。
自分が座り込むと、背後の何者かも座る。そうしているうち、
だんだんに背後にいると感じられるのが、
自分自身であると理解できるようになってきます。
この部位が、体外離脱、幽体離脱と呼ばれる現象と深い関わりがある、
そう考えている研究者も大勢いるようです。

で、昨日の話に少し戻るんですが、何かの拍子に、
視覚、聴覚、嗅覚、触覚・・・いろんな感覚が刺激され、
脳内に混乱が生まれて何者かが近くにいるように感じる。
このようなことはあるのではないかと思います。
極端な話をすれば、背後に自分の脱ぎ捨てたパンツがあって、
その臭いを無意識に嗅ぎ取った自分は・・・まあこれは冗談ですが。

恐怖を感じ取った脳はまた独立に、その恐怖に対処する動きを開始します。
昨日の話に出てきた「体温を下げる」などの動きです。
これは、足に血液を集中させ、
敏捷に逃げることができるようにするためとも言われています。
また、身体は瞬時の凝固を起こし、
これは大脳にもっともその状況に応じた対処
(例えば押入れに隠れる)などを判断させるためのようです。
脳内物質が分泌され・・・集中力や行動の正確性が高まります。

また「自分の影に怯える」ためには、状況の認識も重要であると思われます。
つまり、その部屋や暗い夜道に「自分しかいないはずだ」という認識です。
あらゆる状況から考えてそうであるはずなのに、
人の気配を感じたとすれば、想定してしまうのは人外のもの
・・・幽霊となってしまうという可能性はないでしょうか。

角回という語は、自分は著名な脳生理学者である、
ラマチャンドランの本で知ったんですが、
それには実に興味深いことが書かれていました。
角回が修辞法の一つである「隠喩」を、
理解のするための一端を担っているということです。
隠喩はメタファーともいって「~のようだ、~みたいな」
という語を使わない比喩です。
「彼は超特急だ」(足が速い、飯を食うのが速い、仕事が速いなどの比喩)
のようなものですね。

左角回に損傷を受けた右利きの患者は、言語理解は正常に見えるにも関わらず、
この隠喩の二重性を理解できませんでした。
慣用的な隠喩句を呈示しても患者は文字通りの意味でしか解釈できず、
強いて解釈してもらうと、彼らは無理矢理な解釈を作り出すが、
正解からは程遠いものになったのです。

さてさて、角回が言語の2重性を理解する役割を、
担っているというのは面白いですね。
体外離脱体験というのも、ある意味では自分が2重にダブっているわけですから。
何か関係があるとしか思えません。
この方面の研究が進展していくのを期待します。
最後に「自分の影に怯える」というのも一種の隠喩と言えなくもありません。
言外に「ありもしないものを怖がってる愚かなやつ」
みたいな意味があるんでしょう。
この理解ができるのも、脳の中の角回のおかげなんでしょうか・・・






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