スポンサーサイト

--.--.-- (--)
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

水に流す

2015.08.16 (Sun)
*ナンセンス話です。

不動産業の下っ端社員なんですよ。お盆期間中ね、他の社員はほとんど休みなのに、
自分だけずっと特別業務があって、今日の午後からやっと休みになったんで来たんです。
はい、ここで心霊関係の話をすればお金もらえるって聞いたんで。
業務上の秘密? まあそうなんですけど、他言しないでくれるんでしょ。
自分の名前さえ出なきゃ、あとはどうでもいいです。
で、さっそく話を初めますが、「曰くつき物件」って知ってますでしょ。
心霊マンガなんかじゃ定番のやつ。「訳あり物件」とか「事故物件」とも言いますけど、
お盆の間、これらの整理をやってたんです。
いやあ、売りさばくってことじゃなくて、除霊。
まあ自分がやるわけじゃないんですけどね。うちの社の専属の霊能者さんがやるんです。
ええ、いますよ。同業だと、専属とまではいかなくても、

何かあれば直で連絡できる霊能者さんはいるでしょう。つきものですから。
だからまあ、ホントはね苦労したのは自分じゃなく、その霊能者さんのほうなんです。
え、盆休みにまとめて曰くつき物件の除霊をするのかって?
うーん、これはね、お盆じゃないとできないんです。
お盆であれば除霊しやすいって意味ですよ。自分も、この担当になった初めは、
除霊なんて簡単だろうって思ってました。呪文を唱えてちょちょいのちょいって・・・
でも、だんだんにそうじゃないことがわかってきたんです。
これねえ、霊能者さんもの命がけなんです。危険がかなりあります。
そのあたりは、ここ心霊研究家の集まりってことだからわかるでしょ。
命会っての物種って言いますし、1件30万とか50万じゃあちょっとできない商売ですよ。
ところがね、お盆中はある方法があって、それが簡単になる。

ええ、その方法をこれからお話するわけです。
自分とこの会社でね、力を発揮してくださってるのはI先生って言って、仏教系なんです。
だから、この方法ができるのかもしれませんね。
I先生は40代で自分より十ほど歳上です。別に袈裟なんて着てないで、黒のスーツ。
細身の体にメガネで、一見して霊能者と思う人はまずいません。
銀行員か区役所の人と思われることが多いですね。
ねえ、仰々しい格好でごまかさない、こういうのが本物なんですよ。
それにね、不動産業だから、管理してる部屋に坊さんが入ってったなんて言われたら、
こりゃマズいでしょ。13日から始めましてね。その日は4件回ってもらいました。
ええ、全部曰くつき物件です。一軒屋が1ヶ所にアパートの部屋3ヶ所。
この日は軽めの霊障物件です。

15の日まで霊を溜めておく、というか、とり憑かせておくんですから、
2日間いてもらうのは軽めの霊のほうがいいでしょ。
だから、4件とも独居老人の孤独死です。幸い発見が早かったので、
リフォームはあまり行ってません。発見が死後1ヶ月なんてことになると、
臭いだけでももう大変で。まあでもね、それは死後のことだから、
死の間際の孤独感、苦しみ、悔恨なんてのは一緒なんです。
死因は、病死だったり、病気で動けなくなっての餓死だったり、いろいろですけど、
意識を失う瞬間まで、いろんなことを考えたと思いますよ。
そういう念が、物件にとり憑いちゃうんです。
えーとね、4件分全部お話しても煩雑だし、だいたい同じですから、
最初の一件だけ。まずね、部屋に入ると封印の御札を確認して。

はがしたりましません。霊を部屋の中に封印してるんです。ほら、アパートとかだと、
他の部屋に出ていかれちゃマズいでしょ。
でね、I先生がおもむろに部屋の中央に座って、お経を読み始める。
するとね、部屋の中の物がグラグラ揺れたり、照明が点滅したりして、
だんだんI先生の頭の上に白い霧のようなのが集まってくる。
霊の力が強いときは、それがはっきりと人の形になりますよ。表情までわかるようなね。
でね、先生が「喝!」と叫んで立ち上がった瞬間に、霊がスーッと頭頂部から入り込むんです。
ほら、映画の『エクソシスト』ってあったでしょ。あれはキリスト教ですけど、
最後の場面で「悪魔よ俺にとり憑け」って神父の一人が叫んで、
悪魔がとり憑いた瞬間に窓を破って階段を転げ落ちていく。霊と悪魔は違うんでしょうけど、
よく似た感じですよ。だから、4人分の霊を体内に押し込めたI先生はもうヘロヘロです。

さらに翌日はマンションを3件回りました。これは自殺が1つと殺人が2つ。
もうね、I先生は自力でお経読めなくなってますから、
事前に吹き込んでもらったテープ流すんです。でね、この日3体の霊を体内に入れて合計7体。
もうここまでくると、人としてのまともな行動はできませんよ。
ただ霊を押さえ込んでいるだけ。だから自力で食事を摂れないし、トイレにも行けない。
おむつをあててね、拘束衣を着せて、口にはさるぐつわを噛ませる。
舌を噛み切って自殺しちゃうって可能性もなくはないですから。
自分は霊能者じゃないから最初からできませんけど、もしやれって言われても絶対お断りです。
I先生は動けないし、言葉も話せないですけど、体内では7体の霊が暴れ回っててね。
顔色が青くなったり赤くなったり。痙攣したり飛び跳ねたり、天井近くまで浮いたりで、
そりゃ大変でした。一晩ついて見張ってるのも自分の業務でしたから。

で、やっと15日になった。この日の夜にね、
自分たちのほうでは「灯篭流し」って言いますけど、送り盆の行事があるんです。
川に灯籠と一緒に、お盆で使ったお供え類を流すんです。
で、これは一人ではできませんから、部下を2人連れてきました。
夜の8時頃になったら、I先生の拘束衣を脱がせて、
そのかわりに深海作業用のウエットスーツを着せるんです。あと溺れないようライフベストも。
今年はI先生、ぐったりしてましたんで仕事がやりやすかったです。
去年はね、暴れて大変でしたから。そのままの姿で車に乗せ、
灯篭流しの川の下流に行くんですよ。見とがめられないところに車を停めて、
I先生を川原に連れ出します。これがね、
ウエットスーツだと虫に刺されないでしょうけど、われわれは大変ですよ。

あと、犯罪と間違われないよう、地元の警察には内々に話を通してあります。
これは社長のほうでやってくれてるはずです。
立ってるのがやっとのI先生の体に2本のロープをかけ、川に入ってもらいます。
広い川幅じゃないから、強制的に両岸からロープで操るんですけどね。
足は立ちませんが、ライフベストをつけてますから沈みませんし、
顔が水に入って窒息するなんてこともないんですよ。
ほら、霊が7体も入ってますから、宿主に死なれたら困るでしょ。
霊もそういう暴れ方はしないって、経験からわかるんです。
でね、川に入れてだいたい30分ほど後に、川上で流した灯籠が流れてくる。
火の消えてるものが半分くらいですね。でも川の中はそこそこに明るい。
・・・この時期の川や海ってねえ、霊界までつながってるんです。

その灯籠に乗ってたくさんの霊が来てるわけですよ。
でね、I先生の体の脇を灯籠が流れていくたびに、灯籠のほうから白い手が出てきて、
I先生の体にとり憑いた霊をシュッと引っぱる。
中にはね、自分のほうから灯籠に乗り移っていく霊もあるんですよ。
あれに乗れば成仏できるって、本能的にわかるんでしょうねえ。
灯籠の行列がすべて流れ去る頃には、I先生の体はすっかり浄化されているというわけ。
でね、川から上がると、I先生も意識が戻っていて、「今年は例年にましてキツかったねえ」
とか言って笑うまでに回復してたんですよ。え? もし離れない霊がいたらどうなるかって?
それはねえ、どうしようもないですから、また元いた場所に戻ってもらうんです。
1年間浄化を待つしかないです。それでも消えない場合は、来年の灯篭流しに。
そういう物件は売ったり貸したりはしませんよ。正直な商売してますからね。

ああいこここ




関連記事
スポンサーサイト

トラックバックURL
http://scoby.blog.fc2.com/tb.php/865-645a700a
トラックバック
コメント
面白かったです。これからも楽しみにしています。
Ryo | 2015.08.17 20:59 | 編集
コメントありがとうございます
またいらしてください
bigbossman | 2015.08.18 00:42 | 編集
管理者にだけ表示を許可する