例大祭

2015.09.02 (Wed)
先週の日曜のことです。朝から犬の散歩をさせてまして。
6時過ぎころです。前日も仕事の接待で飲み会がありましてね。
せっかくの日曜、もっと寝てたかったんですが、
普段その犬の世話をしている中2の娘が、金曜の日から熱を出してまして。
病院には行って、インフルエンザではなくただの風邪だってことでしたし、
熱も高くはなかったんで、そう心配はしてなかったですけどね。
散歩のコースは自宅の近所ですよ。団地の裏手のほうに小高くなった森があり、
そのまわりをぐるっと。そこは、地元では古墳じゃないかって言われてるとこですが、
県の大学では自然の地形だって。だから史跡とかにはなってなくて、
誰でも自由に立ち入りができるんです。100mほどの森の周囲が、
人しか入れないアスファルトのジョギングコースか遊歩道みたくなってまして。

そこを、リードを伸ばして歩く犬まかせにして進んでたんです。
犬?  うーん、柴犬の雑種だと思いますね。
5年前、子犬のころに車庫にいたのを拾って飼ってたので、
犬種とかよくわかんないです。和犬の形をした、どこにでもいるような小型犬。
オスでペロって名前で、これは娘がつけたはずなんです。
でねえ、片道20分ほども散歩させたら、わたしのほうが疲れてきて。
普段からの運動不足を実感しましたよ。
その遊歩道も2周しましたし、「もう帰ろう」みたいな感じでリードを引いて・・・
そしたら、向こうの角を曲がって、おかしな風体の人が歩いてきたんです。
巫女さんじゃなくて、そうですね、巡礼って言うんですか、あの白装束を着た娘さん。
歳は娘より少し上、せいぜい高校生くらいに見えました。

でね、手に大きな四角いものを持ってたんです。何かはわからなかったんですよ。
縦横80cm四方くらいで、高さはもう少し小さい。
白い布でくるまれてまして、けっこう重そうにして抱え持ってたんです。
そのあたりはね、朝方はウォーキングのお年寄り夫婦や、
ジョギングの人がけっこう出てるようなんですが、さすがに変な感じがしました。
かといって若い娘さんをじろじろ見るのもあれなので、軽く会釈してすれ違おうとしたら、
「あの」向こうから話しかけてきたんです。
「ここらへんに、きのうた(こう聞こえました)神社というところはございますか?」
しばし考えましたが、神社なんてなかったと思いました。一番近いとこでも数km離れてます。
そう答えたら、「5年ごとの例大祭が9時からあるのですが、場所がわかりませぬ」って。
「せぬ」なんていやに古風で、不自然じゃないですか。

ちょっと気味悪くなりまして、「勘違いされてるんだと思いますよ」こう答え、
頭を下げて行き過ぎようとしたら、それまで静かだったペロが急に吠え出しまして。
白布に包まれた荷物に向かってです。立ち上がって飛びつこうとしたのをあやうく押さえて、
頭を下げて脇の草地に入ったんですよ。
まあ、そんなことがあって家に戻ると、妻が朝食の支度をしてましたので、
「ここらに神社なんてあったかなあ」聞いてみました。
「さあねえ、ないんじゃないんですか。見たことありませんよ」
妻は専業主婦でして、自転車であちこちのスーパーにバーゲン品を求めて出かけてるんで、
あるのなら知らないはずはないんです。「だよなあ、じつは今さっき・・・」
おかしな格好の娘さんに会ったことを説明したんですが、「ふうん」くらいの返事でした。
そのとき、ドン、ドンと太鼓のような音が聞こえました。

外みたいでしたけど、部屋はかなり防音性がよかったので、
昼花火とかでもないかぎり、そんな音が聞こえることはないんです。「あの音なんだろ?」
「何も聞こえませんよ」 「えー太鼓みたいな音してるじゃないか」 「いえ、何も」
変に思ってリビングのベランダのサッシを開けたんですが、
その途端、音は聞こえなくなって・・・
朝食を食べ、ゆっくり新聞を読んでましたら、9時を過ぎて、
「ああ、例大祭とやらが始まるのかな。さっきの人、間に合ったかねえ」
こんなことを考えていると、娘がリビングに顔を見せて、
「お母さん、お腹すいた」って大声で叫びまして。「お前、具合いいのか?」と聞いたら、
「もう熱下がった。今計ったら、35度1分」って。
「それは低すぎじゃないか。計り直してみなさい」とは言ったんですが、

元気そうだったので、まずは安心しました。妻が出したハムエッグとトーストを、
ばくばく食べてましたし。まあね、娘には今日一日は無理しないように言いまして、
天気がよかったので、「昼飯はいらんから」そう声をかけて、車で出かけたんです。
まず書店に行き、それから道具をあずけてあるゴルフの打ちっぱなしに行き、
クラブハウスでラーメンを食べて・・・ ああ、こんな話をしててもしょうがないですね。
でね、休みの一日が終わって、夕飯前に晩酌をしてたんですよ。
芋焼酎のロックです。娘は普通に飯を食って、明日から学校に行くってはりきってました。
バレー部なので、風邪で休んでる間も気になってたみたいなんです。
でね、ロックの2杯目を飲んでるところから、家での記憶がないんです。
だから、ここからの話は全部夢なのかもしれないです。・・・気がつくと、上空にいました。
夜空に漂ってたってことです。幽体離脱? 生霊? まあ、そんな感じですか。

そうですねえ、数十mは高いとこにいたんでしょうか。驚きましたが、一方で、
はああ、これは現実じゃない、ってわかる気もあったんです。下は縦長になった森で、
あの朝に行った古墳の上にいるんじゃないかって思いました。
周囲にぐるっと遊歩道が見えましたから。森のちょうど真ん中へんが赤く光っていて、
何だろう?って思った瞬間に、わたしの体がぐーんとそこに近づいて行って・・・
飛んでるという感覚じゃなく、映画を見てて画面がズームしていったみたいな。
篝火が丸く焚かれていて、その中は草地になってたんです。
15人くらいの白装束の女性が、2軒四方のお堂を囲んで平伏していました。
それぞれが地面につけた額の前には、白木でできた檻がありましたね。
皮を剥いだ丸木を組んだもので、中には何か生き物が入っているように思えました。
朝に聞いた、ドン、ドンという太鼓の音もしていましたが、叩く人の姿は見えません。

やがてお堂の扉が開いて、人が出てきました。貫頭衣?
古代の衣服を着た女性のように見えましたね。顔は・・・
赤黒い入墨かペイントが全体にあって、年齢はもちろん、美人かどうかもわからなかったです。
太鼓の音がやみ、平伏していた女性たちが顔を上げました。
ええ、なぜか全員の顔が見えたんです。切れ長の目の古風な顔立ちで、
みな10代に見えました。でね、朝に遊歩道で会った女性の顔があったように思うんです。
これははっきりしませんでしたが、驚いたのは、中に娘の顔があったんですよ。
仰天しました。もっと近づこうとしたんですが、上空10mほどのところからは、
降りることができないんです。・・・お堂から出てきた女性は、四つん這いになりまして、
まわりを囲んだ者たちが一斉に檻を開けたようでした。
中から一斉に動物が走り出てきまして、娘のからは、もちろんペロです。

そこからのことは言いにくいです。入墨の女性は狼のような動きをして、
その十数匹の動物をまたたく間に食い散らしたんです。いや、食ってるわけじゃなく、
ただ殺してたんですね。宙に投げ上げたり、首筋を噛んで叩きつけたり。ペロも一撃でした。
四方に散った動物が、一匹として逃げられませんでしたよ。
もっとも中には、すくんだように動けなくなっていたのも何匹かはいましたけど。
女性の口からは白い牙がのぞいていて、入墨の顔は動物の返り血で、
もう目鼻立ちもわからないくらいに汚れてました。
すべてを殺し終わると、女性は四つん這いのまま伸びをし「ウォーン」と、
まさに狼の雄叫びをあげ、まわりの女たちもそれに唱和するようにして「ウォーン」
ここで、目が覚めました。わたしはロックのグラスを持ったまま、
座椅子にもたれていまして。妻と娘は夕飯が済んで、テレビの芸能番組を見てましたね。

時間は10時過ぎ。今見た夢のことは言い出せませんでした。だってねえ、
内容が内容ですから、頭がおかしくなったと思われかねないでしょう。
そそくさ飯を済ませて、早く寝たんですよ。
でね、翌朝です。わたしは通勤時間が長いんで、かなり早く家を出るんですが、
庭に出てみて驚きました。昨日まであったペロの小屋がなかったんですよ。
「ええ、え!」家に戻って妻に聞いたところ、「何言ってるんですか、
 もとから犬なんて飼っていないでしょう」心底不思議な顔をしてそう言われまして。
でもねえ、この5年間間違いなく・・・ 娘が学校の支度をして降りてきましたので、
「お前、子犬のペロ拾ったよな。家で飼ってくれって泣いて・・・」
「何のこと? あ、お父さん、もしかして子犬買ってきてくれるの? うれしい!
 私、犬ほしい。柴犬がいいなあ」 こうだったんです・・・






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