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パイドパイパー伝説

2015.09.06 (Sun)


今日は少し趣向を変えて、西洋のお話です。
ヨーロッパの古代から中世にかけては、伝説なのか史実なのか、
どちらとも定めがたい話が多く残っています。
これは日本でもそうだと思われるでしょうが、
向こうは多民族で土地も広大であり、国境を超えた移動や支配層の変化、
宗教的価値観の変容などのスケールが島国の日本とは違っていて、
追っていくのがかなり大変なのです。

さて、The pied piper というのは英語で「まだらの服を着た笛吹き」ということです。
まだらの服というのはピエロが着る服のことでしょうか?
そういうイメージで描かれた挿絵が多いようです。
本来これはドイツの話で、『グリム童話』でも取り上げられています。
「ハーメルンの笛吹き」といったほうが有名でしょう。
ハーメルンはドイツの町で、ざっと歴史を見ましたが、
キリスト教の影響下で中世に建設されているようです。

さて、ハーメルンの笛吹き伝説はご存知でしょうが、だいたいこんな話です。
『町でネズミが増え、その害に苦しんでいたところ、まだら服を着た男が現れて、
市長に駆除を持ちかけた。男は笛を吹きながら町を練り歩き、
するとたくさんのネズミが現れて男の後についていき、川に導かれて溺れ死んだ。
男が報酬を要求すると、市長は言をひるがえして金を出し渋った。
男は1284年6月26日に再び現れ、町の大人が教会に行っている間に、
通りを笛を吹いて歩き、その後を今度は町の子供たちがついていった。
男は子どもたちを洞窟に入れ、そのまま蓋をしてしまったので、
再び親元に帰ることはなかった。』

この話で特異なのは、事件が起きた年月日が明確に記されていることで、
やはり何かの事件・事故が起きている可能性が高そうです。

これは、1300年頃にハーメルンのマルクト教会に設置されていた、
ステンドグラスに書かれた文章が元になっているためで、
このステンドグラスは1660年に破壊されたのですが、
その内容に言及した書物は多数残っています。
『1284年、聖ヨハネとパウロの記念日6月の26日 
色とりどりの衣装で着飾った笛吹き男に
130人のハーメルン生まれの子供らが誘い出され、
コッペンの近くの処刑の場所でいなくなった』

コッペンというのは「丘」を表すドイツ語で、
ハーメルン市の郊外と考えられますが、場所は特定できません。
この文章を読んで考えることは、まず「聖ヨハネとパウロの記念日」という語ですね。
この2人は4世紀頃にローマで殉教したキリスト教の聖人で、
話はキリスト教に関係があるのかもしれません。
それと、大人の多くが協会に行っていて子どもが町に取り残されていたというのは、
ありそうな気もします。「処刑の場所」という語から、子どもたちの死が連想されます。

「ネズミ」について言及がないのに気づかれた方もおられるでしょう。
ネズミのことが話につけ加えられたのは16世紀末頃で、それ以前の記録には登場しません。
ですから、ネズミについての考察はとっぱらってしまってもいいような気がします。
ヨーロッパでネズミといえば、自分なんかは怖ろしいペストを思い浮かべてしまいます。
実際「ペスト(やそのたぐいの伝染病)から子どもらを守るため、離れた場所に隔離した」
というような説もあるのですが、1284年はペスト大流行以前なので、
これは考慮しなくていいかもしれません。

あと「子ども」がどのような年齢層を指しているのか、も疑問です。
童話ではかなり年齢層の低い、幼児や小学生の話として描かれていて、
そのイメージが強いのですが、もしかしたら「子ども」は比喩で、
若い世代という意味なのかもしれません。

「少年十字軍」という話があります。
『フランスやドイツにおいて神の啓示を受けたとする少年エティエンヌの呼びかけにより、
少年・少女が中心となって結成された数千から数万と考えられる十字軍。
1212年のフランスの少年十字軍では、少年少女が十字軍として聖地奪還に向かう途中、
船を斡旋した商人の陰謀によりアレクサンドリアで奴隷として売り飛ばされた。』

これだけ読めばセンセーショナルな話なのですが、現在の考察では、
少年もいたものの、大人も多く混じっていた民衆十字軍と考えられることが多いです。
後世にこれを記録した者が、少年少女が中心の話にしたほうが感動的であると考え、
その形で広まっていったわけです。
ですから、ここで書かれている「子ども」も青年層という意味なのかもしれませんね。

この話の解釈として、代表的な説をあげてくと、
まずは事故説です。子どもらだけで何かの活動をしていたとき、
事故に巻き込まれてしまったということですね。
ヴェーザー川で溺死したとする説、土砂崩れにより死亡したとする説などがあります。
「洞窟に閉じ込められた」という童話の部分から、
これもありそうな気はしますが、それにしても130人という犠牲者の数は多いです。
それと、不幸な出来事ではあるものの、純然たる事故なら加害者はいないはずで、
個人の不名誉や高位の者に対するはばかりがないのならば、
なぜ顛末がもっと詳しく記されなかったのだろう、とも思います。

次は、笛吹き男は精神異常の小児性愛者で、子どもらはその犠牲になったとする説。
これも、130人という人数は一人の人間の(あるいはグループだったとしても)
犠牲者としては多いような気がします。まあ確かに、フランス15世紀のジル・ド・レイは、
黒魔術的儀式と小児性愛のため、150~1500人という数の犠牲者を出しています。
(この原因は、一説には百年戦争でともに戦ったジャンヌ・ダルク処刑による
心の傷とも言われます。いつか取り上げてみたい話ではあります。)

しかし、ジル・ド・レイの頃とは領主権の強さも違っていたと考えられますし、
もし笛吹き男がそのような極悪犯罪者であったのならば、
そっちのほうがもっと怖ろしい伝説として残るような気がしますね。
ジル・ド・レイの青ひげ伝説のようにです。ところが、笛吹き男の場合は、
極悪人という書き方にはなっていません。

次は、何らかの巡礼行為か軍事行動、あるいは新規の少年十字軍運動に、
子どもらが自分の意志で加わったとする説。しかし十字軍的なものであったのなら、
もっと周囲の町を巻き込んでいたでしょうし、
遠征した先の記録に残っていそうなものです。

次は移民説で、これはかなり現実的な解釈で、定説と言ってよいと思います。
東ヨーロッパの植民地で彼ら自身の村を創建するために、
自らの意思で両親とハーメルン市を見捨てて去ったという内容です。
ハーメルンと東ヨーロッパ植民地には、類似対応する地名があり、信憑性が高いです。
この当時のドイツはおそらく長子相続で、
次男三男以下は農奴のような扱いを受けていたと考えられ、
土地を捨てて希望の第一歩を踏み出した、という解釈は妥当である気がしますね。
14世紀のペスト大流行以前の人口が増えていた頃の話ですから。

Wikiの記述によれば、
『ハーメルンの旧家の壁から発見された文章の述べるところによれば、
1284年7月26日に、笛吹き男が130人の子供を街の外へ連れ去り、
おそらくはその笛吹き男はモラヴィア(現在のチェコ共和国の一地方)
への植民運動を組織していたオロモウツ(チェコの都市)
の司教ブルーノ・フォン・シャウンブルクの代理人であったという。』

原資料にはあたれませんが、いかにもありそうな話ではあります。
パイパーは移民の斡旋人、世話役のような人物であったのかもしれません。
ただ、移民が強制的なものではないのなら、一度きりではなく、
何次にもわたる流れがあったと考えるほうが自然で、このあたりのことは、
調べれば近隣の都市からも、まだ資料が出てくる可能性が高いと思われます。

最後は、超自然的事件説・・・悪魔などに連れ去られたというものですが、
オカルトブログですので、これも加えておきましょう。
さてさて、現在のハーメルンは、この「笛吹き男」の話で国際的に有名で、
市には「舞楽禁制通り」というのがあるそうです。
笛吹き男に連れられた子どもたちが歩いていった道というわけですね。
お土産の、ネズミを模った堅焼きパンも有名です。

* 今後は世界史の話題も機会があれば取り上げていきたいと思いますが、
 もちろんオカルトに関係したこと限定です。




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コメント
そういやフレドリック・ブラウンもネタにしておりましたな。ラストの腑に落ち方が最高でしたが、なんて短編だったかなあ。
ポール・ブリッツ | 2015.09.07 23:51 | 編集
コメントありがとうございます
ハーメルンの笛吹きを元にした短編ですか
自分はまだ未読なので読んでみたいですが
ブラウンも最近書店で見なくなりましたね
bigbossman | 2015.09.08 01:29 | 編集
短編のタイトルを思いだしました。

調べてみたら、サンリオの「フレドリック・ブラウン傑作集」収録……うむむ(^^;)

それと、パイド・パイパーものでショートショートを一篇書きましたのでお暇ならばどうぞ。(それにしても記念企画でホラー書くかわたし……)
ポール・ブリッツ | 2015.09.16 00:10 | 編集
コメントありがとうございます
読まさせていただきました
これの前の話はくじ物ですよね
忘年会とかの余興で、わさび多量寿司を食べ
なおかつ平気を装って誰が食べたかを当てる
ゲームを思い出しました
bigbossman | 2015.09.16 07:24 | 編集
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