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ロケ隊2

2015.09.12 (Sat)
関連記事 『ロケ隊』

2年前の夏の話だよ。いわゆる霊感タレントを2人連れてロケにでかけた。
ああ、俺らはテレビの製作会社じゃなく、出版社系で、
コンビニ売りの心霊ムックを作ってたんだよ。
ほら、付録のDVDがついてるやつ。だからそんな本格的なものじゃない。
霊感タレントというのも、小さなプロダクションの新人の子たちで、
別に霊感とかあるわけじゃないんだよ。ただそういう設定だから、
こっちのいうとおり演技してくれればいい、って事前に言い含めておいたわけ。
演技って言っても、怖がったり泣いたりしてくれればいいだけの話で、
幽霊なんかは後に編集したとき、CGで入れることになってたんだ。
それでもロケは2日間になったし、1日目は心霊スポットだったけど、
2日目はそうじゃなくて、有名な神社だったんだよ。

もちろん2日とも心霊現象なんて一つも起こっちゃいない。
まあそれがあたり前、霊的な現象なんてあるわけがないと思ってたんだ。
けどよ、2日目のロケが終わって東京へ戻る途中、
変なことがあったんだ。いや、偶然とか気のせいで片づくようなレベルじゃない。
車に乗ってた全員が体験してるんだよ。ただし幽霊でもない。
あれは生霊って言うんだろうか。それとも離魂現象?
ドッペルゲンガーって言葉もあるな。その手の体験だったわけよ。
それを今から話していくんだよ。
で、時間は夜の9時過ぎだったな。東京に着けば11時を回るだろうって時間帯、
ミニバンで高速を走ってたんだよ。ロケの全員が一台に乗ってたんだ。
総勢は俺を入れて9人だな。朝から3ヶ所を回って、みんな疲れてたのは確かだ。

だが、それだけじゃなかったんだよ。最後の富士山近くの神社を出たあたりで、
全員、何か様子がおかしかったんだよな。
ろれつが回ってなかったし、元気がない。俺もかなりの脱力感があったが、
今思えばそこの神社の鳥居を出たところで急にそうなった気がする。
でもよ、俺以上にADの疲れが目に見えてたんで、
帰りは俺が運転していく、ってことにしたのよ。
いちおうタレントさんを乗せてるんだし、事故こしちゃマズい。
それでコンビニで眠気覚ましのドリンク剤を買って、それから高速にのった。
平日の夜だったから、車ど通りは少なかった。
山の中の道を一定速度でたんたんと走ってたつもりだよ。
車中は会話もほとんどなくてな。タレント2人は2列目の席でうとうとしてたよ。

スタッフはディレクターの俺が運転してるもんだから、
寝るやつはいなかったが、みな言葉少なでな。
でよ、あと30分ほどで首都高に入るってあたりで、霧が出てきて。
あとで気象庁に確認したが、この霧はもちろん本物で、霊障とかじゃなかった。
突然、ほんとに突然、目の前20mほどに車が出てきたんだよ。
合流があったわけじゃなく、見落としてたんでもないとないと思う。
さっきも言ったように、事故起こしちゃイカンとかなり慎重に運転してた。
だからスピードもずっと100km前後。高速で20mったら目の前だよ。
あわててブレーキを踏んで車間距離を取ろうとしたが、向こうもスピード落としたのか、
かえって近づいた気がした。はたからは、
こっちがあおってるように見えたかもしれないが、そうじゃない。

それで、その車は俺らと同じ車種の11人乗り仕様のミニバンだったのよ。
まあ、珍しいってほどのものじゃない。だけど、
その車のリアハッチの右に貼られてるステッカー、これに見覚えがあったんだ。
そう、俺らの車に貼られてるのと同んなじなんだよ。
どこにでもあるやつじゃなくて、俺らの出版社で出してる一番売れ筋の雑誌の。
だからその同じステッカーを同じとこにつけた車なんてあるわけない。
俺がそれに気がついて動揺していたら、助手性に乗ってたカメラマンも気がついたらしく、
「あの車、これと同じ車種だし。あのステッカー見えてますか?」
「ああ、見えてる」 「どういうことッスかね。あれ、俺らの車なわけはないんだけど?」
「わからん、俺だけなら幻覚かとも思うんだが、お前も見えてるんだからな」
「気味悪いスね。離れられないんですか?」

「さっきから減速しようとしてるんだが、間にロープでもついてるみたいに、
 この車間距離から外れないんだ」
「止まっちゃったらどうスか?」 「それでもいいけど、これってもし本物の超常現象なら、
 いいチャンスだと思わないか。お前ハンデイカメラ準備しといたら」
「マジすか」こんな会話をした。で、そんとき、抜いてみたらどうだろうって思った。
追い越すときに並べば、運転してるやつが見えるだろう。
ハンドルを握ってるのは俺なんだろうか、確かめてみたくなったわけよ。
で、追い越し車線に出てアクセルを踏んだ。
最初から速い車じゃないし、多人数乗車だからあまり加速しなかったが、
少しずつ近づいていって、これなら追い抜けるって思った。
したら、「やめてー」って絶叫が車内に響いたんだよ。

寝ていると思ったタレントの一人が叫んだんだ。
「その車越しちゃダメ、戻って戻って!!」反射的にスピードを緩め、
こっちは右車線だが、車間距離は10mほどに戻った。
カメラマンが後ろを向いて「どうしてです?」って聞いた。
そしたら、「わかんないけど、けどあれを越しちゃうと大変なことになる」って。
「じゃあどうすればいいと思う」 「うーん、もう一回真後ろについて」
言われたとおりにしたら、やっぱり車間距離が変わらなくなった。
他のメンバーも何が起きてるのか全員気がついてて、その子を注目してた。
「ヤバイ、ヤバイ、このままじゃ事故る。前の車といっしょにならなきゃ」
「どうやって? のりでくっついたみたいにこの距離が変わらないんだよ。次のPAに入る?」
「それ、信じてないからだよ。元に戻るって心から念じれば、たぶん大丈夫」

そうは言っても、目の前の車に突っ込んでいくなんてできないじゃない。
そしたら、メイクさんが「この子、息してない」って切迫した声を上げて。
もう一人のタレントの頬に手をあててたんだよ。「顔が真っ白だし、冷たい」
で、試しにアクセルを踏み込んでみたら、前の車のリアがぐんと迫ってきて、
そのとき反射的にブレーキを踏んじまったんだ。「ダメもう一回やって。この子死んじゃうわよ」
心理状態自体が異常だったのかしれないが、信じることにした。
それでカメラに「撮ってるか?」って聞いたら、
「撮ってます」って答え。目をつむるつもりで、思いっきりアクセル踏んで・・・
車内のやつらは「ワー、ギャー、ぶつかるー」それぞれすごい悲鳴をあげた。
でね、ギリギリまで迫った途端、前の車がふっと消えた。
走ってるのが俺らだけになった。で、ボーッとしてた俺の意識もシャキッとなってね。

「重なったのか? 何だったんだよ、今のは?」 「わかんないけど、これでたぶん大丈夫」
「あ、息が戻った」それから数分で、そのタレントの子も意識を取り戻して、
まだ具合悪そうだったけど、「追いかけっこしてる夢を見てた」って言ったんだ。
そっからは安全の上にも安全運転して東京に戻り、念のためにその子は病院にも連れてったんだよ。
こっからは後日談だな。まずカメラマンが撮った映像は、社に戻ってすぐ見てみたが、
車の前に濃い霧があるだけで、具体的なものは何も映ってなかった。
とても使えるもんじゃなかったってことだ。そんときのメンバーにも異変はない。
ただ、具合を悪くした女の子はタレントをやめて実家に帰っちゃったな。
それと、俺らを前の車、もう一つの俺らに突っ込ませた子は、
名前をあげれば誰かわかるだろうけど、芸能じゃなく霊感のほうで売れに売れて。
そう、その子だよ。もうね、俺らの半端仕事を頼めるような身分じゃないんだ。





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