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福笑い

2015.09.14 (Mon)
ちょっと前の話になります。会社の新年会の日だったので1月9日の金曜のことでした。
私が幹事の一人をしていたんです。大人数の支社ですので、
1次会の会場はホテルの3階の大広間を予約して、
2次会は同じホテルの15階の展望ラウンジでした。バーなんですけど、
多少騒いでもかまわないところだったんです。2次会は自由参加でしたが、
ほとんどの方が来ていただいて、盛り上がったんですが・・・
その1次会と2次会の間のことなんです。私は1次会での精算のために、
移動がみなより15分くらい遅れてしまったんです。
エレベーターに入りましたら、私の他に女の人が一人乗ってました。
和服にコートを着て、足元が草履なのにすらりと背が高かったんです。
175cmはあったと思います。

そこのエレベーターは、市街に面した壁が透明で、左右の2面はミラーになってました。
その人は外のほうを向いてましたので、私から横顔が見えましたけど、
鼻が高く目元のくっきりした、すごくきれいな人だったんです。
7階のボタンが押されていたので、そこで降りるんだろうと思いました・・・というか、
このあたりは全部後になって思い出したことで、
そのときは多少お酒も入っていまして、それほど注意を払っていたわけではありません。
7階はホテルの宿泊階ですので、おそらく泊り客だったのでしょう。
雪はほとんど降らない地域なんですが、その日はみぞれで、
床は多少濡れていたかもしれません。
私が乗ってエレベーターが出発すると、その人が急に横によろけて、
頬のあたりをミラーの壁にぶつけたんです。

強くではなく、コツンくらいでしたし、転んだりもしなかったんです。
その音でそっちを見たら、日本髪の下の顔がずれてたんですよ。
うまく説明できないんですけど、福笑いで目、鼻、口を全部右側に片寄らせたら、
あれと似たものになるかもしれません。
そのときは見間違い、目の錯覚だと思いました。横が鏡ですので、
それに映ってるのとごっちゃになったのかと。
でも、そうじゃなかったんです。その人はパーツが片側によった顔で、
私のほうを見てニヤーッと笑ったんです。不気味なんてものじゃなかったです。
その後、自分の手をこぶしに握って、軽くですけど、
ぽん、ぽんと片側の頬を叩き始めました。
そしたら、少しづつ寄っていた顔が元に戻っていって・・・

鼻なんかはつまんで、ミラーを見ながら揺さぶって直したんです。
私はとにかく驚いて、反対側の壁にひっついて、
でも、その人から目を離すことができなかったんです。
そうしてるうちエレベーターは7階に着いて、扉が開きました。
その人は後ろ向きになり、扉がしまらないように押さえながら私を見て、
「今の内緒よ。人に話したらひどいから」ささやくような声でそう言い、
コートの下からスマホを出して、カチャッ、私を撮ったんです。
顔を隠すような余裕はありませんでした。
その人が出て行って、心臓がすごくドキドキしてることに気がつきました。
展望ラウンジの階に降りると、新年会のシーズンなので、
あちこちの店から音楽や笑い声が聞こえていて従業員の姿も見え、ほっとしました。

すると、さっき目にしたことが、ありえないという気になってきました。
だって顔が横に寄る、ずれるなんて人はいないじゃないですか。
もし病気なんかだったら、もっとその・・・
わかんないですけど、プロテクターみたいなのをつけてるんじゃないかと思います。
それに顔の肉が、あんなにゴムやスライムみたいに伸びるはずもないし。
こういうありえないことが起きると、脳が理解を拒否するってよく言いまですしょう。
それが私にも起きたんだと思います。
なかったこと、見なかったことにしよう。もう考えるのをやめようって。
2次会の会場はすっかり賑わっていて、席につくなり飲み物を聞かれて。
でも、やっぱり楽しめなかったです。同僚に話そうかともちらっと考えたんですが、
「人に話したらひどいから」という言葉が気になって。それと写真を撮られたこともです。

それでずっと誰にも話さずにいたんですが、夏前に彼氏ができたんです。
前の人と別れてから2年ぶりでした。
同業の別会社の人で、仕事でお会いしてから急速に親しくなりまして。
すごい優しい人なんです。こっちの言うことはなんでも聞いてくれるような。
土日の休みには、私の部屋に泊まりにきてくれるようになりました。
それで、お盆休の前の休みも一緒にいてテレビを見てたんです。
ちょうど夏定番の心霊番組をやってて、私はそういうのは苦手なんですが、
彼が好きで、見よう、見ようって。
でも、視聴者から送られてきたビデオを流してましたけど、ピントがぼけてたり、
動きが不自然だったりで、私にはどれも嘘くさい作りものにしか思えなかったんです。
ホントに怖いことはもっとはっきりしてるし、見ると固まって何にもできなくなる。

そう言いたくなって、意識しないまま言葉が出てしまっていました。
「今年の会社の新年会で〇〇ホテルのエレベーターに乗ったら・・・」
あの顔がずれた人の話を全部しゃべってしまったんです。
途中で、「人に話したらひどいから」を思い出しはしたんですが、
最後に私が写真に撮られたことも、なにもかも。
でも、あれから半年以上たって、もちろんその人には二度と会っていないし、
危険なことや気味の悪いこともなかったんです。だから、
あれがおどしだったとしても、私にとってもう効果が薄れてたんだと思います。
彼は、茶々を入れたりしないで最後まで聞いて、
「うーんすごい。その人、幽霊って感じじゃないよな。透けたりもしてなかったんだろ。
 何なんだろう? いまほら、会社の受付のアンドロイドとかもあるじゃない。

 もしかしてそういうのじゃないかな? どっかの企業が密かに実験してたとか」
こう、私がまったく考えもしなかったことを言い始めたんです。
「でも、声も機械の声じゃなかったし、動作も人間にしか見えなかったけど」
「じゃあ、医療用かなんかのお面みたいなやつ。
 ほら事故とかで顔に怪我した人とか用に開発して、
 それをつけて実地に反応を見てたとか」こう言われるとわからなくなってきました。
でも、その人は日本髪で額が出てましたが、生え際も自然だったし、
何よりも小顔で、何かを本来の顔の上に被ってるとは考え難かったんです。
私がそう言うと、「うーん、それにしてもすごい体験だよ。
 俺もそういうの目撃してみたいけど、全然機会がないんだよな」って。
彼はその日泊まって、仕事があるからと翌日の朝早くに帰ったんです。

私は次の日も休みでしたので、10時過ぎに起きて郵便物を取りにいったら、
業務用のA4版の封筒が入っていました。住所はなく、私の宛名だけで、
切手も貼ってませんでした。ということは、
誰かがわざわざ私のマンションまで来て投函したということです。
前夜の話もあり気味が悪かったんですが、開けてみると、
中にはデジカメのカラープリントと思われる写真が2枚だけ入ってました。
一枚は和服姿のあのエレベーターの女の人の正面姿で、新年会のときと同じ着物でした。
それが、顔がなかったんです。目も鼻も口もないのっぺらぼう。
真っ白い、形の良い顔の輪郭があるだけでした。
それで、もう一枚は私があのとき撮られたものかと思ったら、
そうじゃなかったんです・・・

彼の、スーツ姿の正面写真でして、
顔はありましたが、子どもがふざけて福笑いをしたようにすべてがバラバラ・・・
背景はどこかの公園のような屋外で、彼の体だけ赤い色が覆っていまして、
見覚えのある紺のスーツが濃い紫色になってたんです。
驚いて連絡しようとしたんですけど、携帯はつながらなかったんです。
隣県まで出張という話だったので、車で移動中なんだと思いました。
それから1時間後、かけなおしましたら彼の両親が出て、
隣県との境に近い市の病院にいるということでした。
彼が事故に遭ったということで、とても取り乱していました。
私は免許も車もないので、電車を乗り継いでいくしかなかったんですが、
彼は亡くなっていました。フロントガラスに顔から突っ込んで、即死に近かったそうです・・・






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