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谷を越える

2015.09.17 (Thu)
* 怖い話ではありません。
「不気味の谷」と言われる現象についての内容です。
これ、ネットで検索するといろんな人がブログに書いていて、
様々な意見が出てるんですが、なかなか「これは明快だ」
というものが少ないように、自分には思えました。
じゃあお前がビシッと書けるのか、と言われるとその自信もないんですが、
「不気味」というのは、当ブログの隠れテーマである「恐怖」と関連していますので、
ま、考察するだけしてみたいと思います。

まず、「不気味の谷」とは何かというと、
Wikiには『人間のロボットに対する感情的反応について、
ロボットがその外観や動作において、より人間らしく作られるようになるにつれ、
より好感的、共感的になっていくが、ある時点で突然強い嫌悪感に変わる現象』

というふうに出てきます。
ロボットが人間に似ていないのであれば、つまり機械部分が見えるなど、
『スターウオーズ』のロボットコンビのようならば、
それはそれで嫌悪の対象とはなりませんが、
ある程度まで人間に似て、しかし人間でないことははっきりわかるあたりに、
多くの人が「ああ気持ち悪い」と嫌悪感を持つ、感情の谷間があるということです。
ロボット工学者の森政弘東京工業大学名誉教授が、
1970年に提唱したロボット工学上の概念とされます。

この原因としてよくあげられるのが、
『対象が実際の人間とかけ離れている場合、
人間的特徴の方が目立ち認識しやすいため、親近感を得やすい。
しかし、対象がある程度「人間に近く」なってくると、
非人間的特徴の方が目立ってしまい、観察者に「奇妙」な感覚をいだかせる』

こんな内容ですね。

また、この現象についての論には批判があります。
「(不気味の谷のアイデアは)実際には疑似科学なのだが、
人々がそれを科学であるかのように扱っている」といったものですね。
これはわかる気がします。Wikiではロボット工学上の概念と書いてますが、
測定にかかるのは、好感を持つか、嫌悪感を持つかという人間の心理ですよね。
ですから、心理学上の問題としてみることができるわけです。

心理学はずっと実験に再現性が乏しいということで批判されてきましたが、
おそらくこの「不気味の谷」をめぐる測定結果は、
大きな傾向はあるでしょうが、バラつきもあるものと思われます。
不気味に思うか、好感を持つかには個人差があるからです。
さらには、まったく外見が人間と変わらないロボットができたとしても、
「これはロボットです」と言われただけで、
嫌悪感を感じる人がいるといった問題もあるでしょう。

自分は映画についての雑文なども書いています。
CG映画やアニメの製作者の多くは「不気味の谷」ということをある程度意識して、
キャラクターの造形を(動作の作成も)行っています。
キャラクターの外見にかぎれば、これは2次元でありますが、
「不気味の谷」現象が働くのはロボットだけではないのです。
興行収入を上げるためには、
アニメの主人公に嫌悪感を持たせないための工夫が必要です。

「ファイナル・ファンタジー」シリーズや、ディズニーアニメの主人公は、
もちろん観客に好感を感じさせるべく、
多くのスタッフが科学的分析を重ねて造形しているのですが、
やはり観客の中には「なんかちょっと気持ち悪かったわね」
という感想を持つ人は少数でも必ずいます。
多様な人間が対象なのですから、これはしかたありませんね。

さらに問題を複雑にしているのは、「外見」にプラスして「動き」の存在です。
カリフォルニア大学の研究チームが次のような実験を行いました。
『大阪大学が開発した「リプリーQ2」を使用。被験者にリプリーQ2と、
そのモデルとなった女性、そして機械部分がむきだしになったリプリーQ2
(要するに一目でロボットとわかる状態)の3パターンの映像をそれぞれ見せ、
その際の脳の反応をfMRIにて測定した。
実験は20~36歳の男女20名を対象に行われ、その結果、むき出し状態の映像および、
モデルになった女性の映像を見た場合はいずれも大きな反応がなかったのに対し、
リプリーQ2の映像を見た場合のみ、脳に強い反応が見られた。』

この結果について、チームは「外見」と「動き」のギャップを指摘しています。

『私たちの脳は、ロボットがロボットのような動きをする場合や、
人間が人間のような動きをする場合には違和感を感じません。
しかし外見が人間そのものであるにもかかわらずロボットのような動きをした場合、
脳は予測と違った結果に違和感を感じるのです。』

これは人間の脳の中に「ロボットのような動き」という固定概念ができているためでしょう。
引退した相撲の高見盛が、ロボコップと言われていたようなものです。
困りましたね。CGならばともかく、
3次元のロボットで、毛穴の一つ一つ、肌のシミなども再現して、
外見は限りなく人間に似せることができたとしても、現在のロボット工学では、
あらゆる場面において人間と同じ動きをすることができるロボットの建造は不可能です。
ホンダ・アシモなどの現状を見るかぎり、数十年レベルではできそうもありません。

また、人間のすべての骨や筋肉や腱の動き、皮膚の盛り上がりなどを再現させるのは、
ムリであるばかりでなく、現状ではムダもあるのです。
なぜなら、例えば介護ロボットのようなものを考えたとして、
これは介護ができればいいのですから、人間と同じ動きをする必要はありませね。
むしろ人間にできない動きや力があることに、
存在価値があるとも言えるわけです。

SF映画などでは、人間と外見がまったく変わらないロボット、
アンドロイドが出てくるものも多いのですが、
工学上の研究課題として、人間の動きに似せるというテーマは重要ではあるものの、
はたして人間そっくりのロボットが必要なのか、という問題が出てくるでしょうね。
これには搭載するAI(人工知能)も関係してくるでしょうし、
さまざまな倫理的な論点が浮上してくると思われます。

さてさて、「不気味の谷」は、個人差はあるにしても存在するとは思います。
ですが、これも単なる一研究課題としてではなく、
将来の人間とロボットの関わりはどうあればよいのか、
という大きな視野の中に位置づけていかなければならないことでしょう。
たくさんの有識者から意見を募集し、集約しておいてもよい時期です。
でないと、画期的な技術を開発しても商売に結びつけることができない、
という日本の負の特性が、またまた発揮されてしまうかもしれませんよ。
あれ、オカルトとあんまり関係ない結びになってしまいました w





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