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石碑の話

2015.09.29 (Tue)
今年の5月の話です。俺、居酒屋でバイトしてたんです。
その日は遅いほうのシフトで店の片付けまでやって、帰ったのが朝の3時過ぎでした。
チャリで通ってたんですが、これがアパートまで小1時間くらいかかってね。
とにかく眠くて、もうろうとしながらチャリ漕いでたんです。
そのときは止んでたんですけど、雨が降ったようで道路が濡れてまして、
部屋まであと数百mってところで、石とかにつまずいたわけでもないのに、
スコーンって転んじゃったんです。そんな時間ですから車通りはまったくなく、
軽く頭を打ったのと、両手のひらをすりむいただけでした。
「痛ってえなあ!」そう思って立ち上がり、チャリを起こしたときに、
横手のほうに光が反射する四角いものが見えたんですよ。
車止めが設置されてて、人とチャリしか通れない砂利道があって、

その奥に光るものがあったんです。「あれ、おっかしいな。こんなとこに道があったっけ」
そう思ってチャリを乗り入れてみると、どうもそこを通れば近道になりそうでした。
蓋なしの側溝があったので、それをチャリを降りて越えると、
光ってるのは道の傍らにある石碑のようなものでした。
近寄ってみました。そうですね、御影石って言うんですか、
お墓に使うつるつるした石があるじゃないですか。
あれを使ってこさえた1mばかりの石碑でした。街灯の光を反射してたんですね。
「こんなのあったかなあ?」その近くはバイトの行き帰りによく通るんですけど、
ぜんぜん記憶にありませんでした。まあ、そのあたり自体、
大学に入学してから越してきたところで、住んでから3年目なんで、
知らない脇道があってもおかしくはないですけど。

でね、石碑自体は丸い台石の上に、細長い六角柱がのった形で、
近寄って裏も見てみましたけど、字とかは書いてなかったんです。
さっき話したようにつるつるの黒い石で、そう古いものには見えなかったんです。
墓というような印象は受けませんでしたね。何かの記念碑みたいな感じでした。
そうしているうちにパラパラ雨が落ちてきたんで、
「あ、やべえ」って、アパートに急ぎました。それで、シャワーだけ浴びて寝たんです。
その3日後ですね、やっぱりバイトがあった帰り、同じような時間帯でしたが、
その石碑のことを思い出したんです。石碑のことっていうか、
そこ通れば少しだけ近かったよなって。でね、入る道を探したんですが、
どうやっても見つからなかったんです。「おっかしいなあ」って思ってると、
携帯電話にメールの着信があったんです。

チャリにのったまま出して見ると、「石碑を探すんでない」文面はこれだけで、
差出人の宛先がどうやってもわからなかったんです。
それも不思議ですけど、石碑のことは誰にもしゃべってなかったし、
俺がそんな時間に石碑を探してるなんて他人にわかるわけないじゃないですか。
それと「探すんでない」って言い方は、俺の郷里の方言に似てるんですよね。
実家には母親しかいないんですけど、電話ならともかくメールなんてできないです。
それで気味悪くなって、急いでいつもの道を帰ったんです。
でね、翌日大学で、つき合ってる子にこの話をしたんです。
そしたら、「ふーん、見つからない小道に隠された石碑ねえ、面白そうじゃない。
 今日、あなたの部屋に寄るから、そのとき一緒に探してみましょう」
こう言われまして。彼女はそういうオカルトみたいな話が大好きだったんです。

部屋に来てくれるのは嬉しいので、大学の帰り一緒にスーパーに寄って、
食材とかワインを買い入れて、いっしょにチャリでその道に入りましたが、
やっぱり石碑のあった脇道が見つからなかったんですよ。
4時過ぎで、まだ明るい時間帯だったんですけど。
「スマン、このあたりだと思ったんだけど・・・」
「ううん、面白いじゃない。ますます見つけたくなってきた」彼女はそう言って、
それからその道を中心に、平行して住宅街を通ってる前後の道も、
1時間以上2人で探したんです。でもね、どうやっても見つかりませんでした。
あきらめて戻ろうとしたとき、俺の携帯にまた着信があったんです。
前回同様、差出人不明のメールで「5月13日、AM3:30、花」って・・・
彼女に見せたら大興奮しまして、

「スゴイ、ほんとにメール来た。これ、どうやっても発信先わからないのも変よね。
 あとでDocomoに問い合わせしてみてよ。うーん花って何だろ?
 石碑だからお供えする花が必要ってことかな。13日は土曜だよね。
 ねえ、一緒にこの時間に来てみようよ」こう言いました。
で、その日は彼女はアパートに泊まって帰ったんです。
Docomoのほうには、後で問い合わせしてしてみたんですが、
「お教えはできません」って断られて。でもね、メールは消さないで残してますから、
ここで調べてもらってもかまいませんよ。
でね、5月12日の夜というか、13日の午前ですね。彼女が俺のアパートに来てて、
3時に2人で買っていた花束を持ち、歩きでその道に入りました。
そしたら、そんな時間なのにちらちら人の姿が見えました。

2人連れは老夫婦みたいな人とかで、一人の人のほうが多かったんですが、
みんな花束を持ってたんですよ。それで、誰も言葉を発しないで下を見て歩いてました。
彼女が俺の脇腹をつついて「これってスゴくない。なんかの儀式とかあるのかも」
小声でこう言いました。それで、その人たちについていったら、
あっけなくあの車止めが見つかったんです。石碑もありました。
でもね、その表面が見えないほど花束が積み上げられてて。
でね、花束を持った人は石碑の前にいって、お祈りとかする様子もなく、
ただ黙って花束を置いて、一礼だけして戻っていくんです。
いやもちろん、不思議だなあと思いましたよ。彼女もそんな顔をしてましたが、
誰も話す人がいないので、俺らも黙って花を置いて礼だけして帰ってきたんです。
ねえ、おかしな話でしょう。

その後アパートに戻ってから、まだ暗いのに、彼女は用事を思い出したって言って、
俺が送っていくと言ったのを断って帰っちゃったんですよ。
翌日、俺一人でまた石碑を探したんですが、
つい何時間か前、あんなに簡単に見つかったのが、また道がわからなくなってました。
で、大学に行くと、彼女が寄ってきて、
「なんであんなとこに連れてったのよ。何もかもダメじゃない」ってスゴイ怒ってたんです。
「なんだよ、自分で見たいって言ったんじゃないか」
俺がそう返してケンカになっちゃったんです。それ以来、向こうからは連絡してこないし、
俺も意地になっちゃって、授業に出ても顔を向けない、
視線を合わせない・・・まあ、別れちゃったってことです。
まさかねえ、こんなことになるとは思ってもいませんでしたよ。

でね、それからも帰り道のたびに探してるんですが、
石碑もその道も、一度も見つからないんです。もしかしたら来年の5月13日まで無理なのかな、
って気がしてきました。ええ、何か記念日とか命日とかじゃないかって考えまして。
それで、つい一昨日のことです。風邪気味だったので、近くの内科医院に行ったんです。
待合室に入ると、長椅子に座って雑誌を読んでたジイサンが、
あの石碑に花束をあげに夫婦できてた人のように思えました。顔に特徴があったんです。
ジイサンが雑誌から顔を上げたとき、「あのスイマセン、
 前に〇〇町の石碑に夜中に花束を上げに来てませんでしたか」こう聞いてみたんです。
ジイサンは「・・・ああ、そうだが、ここでそんな話するな」と不機嫌な声で言い、
「あれって、何なんですか?」重ねて聞いた俺に、「御縁切り様だよ」これだけ答えて、
それから雑誌から顔を上げてはくれなかったんですよ。

縁切りの石





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