怪談の本

2015.10.08 (Thu)
ええと、だいたい1週間前のことです。私は怪談の本のフアンなんです。
最初はマンガの「本当にあった怖い話」みたいなのを読んでいたんですよ。
マンガは読者の方が体験したことを編集部に投稿して、
それを漫画家さんが絵にするんです。だから実際にあったことという実感はあるんですけど、
4コマのが多いので、短くて物足りない面もあったんです。
けどその後、コンビニで小説の怪談を売っているのを発見して、
ためしに買って読んでみたら、これが面白かったんです。
「実話怪談」っていうみたいですね。私はもともと小説も読むんですけど、
実話怪談は一つ一つのお話が、長くもなく短くもなくちょうどいい感じで、
お小遣いがあるときに買って、学校に持って行って読んでたんです。
私たちの高校は朝読書というのをやってて、

マンガでなければ持って行っても怒られることはないです。
その日も昼休み、学食に行った後に時間があったから教室で読んでたら、
里美って友達が来て、「そういうの面白い? 私も読んでみたいな」って言ったので、
これは怪談好きの仲間が増やせるチャンスかも、と思って、
「うちに怪談の本けっこうあるよ。明日どれか持ってきて貸したげる」
こう答えたんです。それでその日、家に帰ってから怪談の本の中で、
百物語っていう、短い話がたくさん集まったのを一冊バッグに入れたんです。
里美とは同じクラスだったので、里美が学校に来てすぐ本を渡したら、
その朝の時間と昼休みにも夢中になって読んでました。
近くに行って「どう? 面白い?」って聞いたら、
「これ本当にあったことって書いてるけど、ホントに?」って聞いてきたんです。

これはちょっと困りました。そうですね、正直に言うと私は、
中には作ったお話もあるんじゃないかなーと思ってたんです。だけど、
そう答えるとがっかりしそうなので、「体験者の人から聞いてるんだから、
 たぶん本当のことだと思うよ。もしかしたら、中には体験者が嘘ついたり、
 大げさに言ったりしてるのもあるかもしれないけど」あたりさわりない言い方をしました。
里美は「そうだよね。書いた人には話が本当か嘘かわからないわよねえ。
 これすんごく面白いけど、読み切れないから今日借りてってもいい?」
そう聞いてきたので、「もちろんいいわよ」って答えました。
さらに次の日です。朝一に里美が本を持ってきて、
「ありがとう。家で最後まで一気に読んじゃったら、その後怖くて眠れなくなった。
 返すから、また別の貸して」こう言いました。

「いいよ、たくさんあるから、次はもう少し長めのやつ持ってこようか」
私たちが話をしてると、近くにいた美優って子が寄ってきて、
「うわ、気味の悪い表紙。でも、私もじつはこういうの好きなの。次借りてもいい?」
聞いてきたので、「うん、いいよ」って本を渡しました。
私は「すごい、この調子ならクラスに怪談フアンが広まるかも」って思ったんですが、
里美がちょっと変な顔をしたんです。
昼休みになって、里美といっしょに学食に行ってサンドイッチとか買って食べてるときに、
里美がこんなことを言い出しました。
「さっき美優があの本借りてったじゃない。でも、あの本に美優のこと出てたと思う」
「えーまさか、ないでしょ。どんな話だった?」
「たしか本の最後らへんのあたりで、体験者の名前も美優になってた」

「えーそれって、ただの偶然じゃないの? だいたい本の中の名前は仮名になってるはず」
「あ、そっか。・・・でもね、高校2年でテニス部に入ってるのも一緒だし、
 場所もこの近くの平和公園墓地が出てくるし、私、読んでる途中で、
 これ美優が投稿したものが採用されて本になってるんじゃないかって思った」
「平和公園墓地?? そんな話あった?」
「あったよ。ほら、広場の真ん中にある慰霊の塔も出てきてたじゃない」
「???えーぜんぜん記憶ない。どんな筋だった?」
「美優って子が自分の部屋で体験するの。寝てるときに布団がどんどん丸まって、
 白いかたまりになって食べられそうになるの。それで親のいる部屋に逃げたら、
 だれも家族がいなくて、布団の怪物が追っかけてくるから外に逃げた。
 そしたら道には車も人もいなくて、必死に道路を走ってったら墓地公園に着いて・・・」

「・・・そんな話ないよ」
「でも読んだもん。そのあと、自分の布団が怖くなって寝られなくなったんだから」
こういう会話になったんですけど、ぜんぜん私には内容の記憶がなかったんです。
でも、その本は一気にじゃなく何日もかけて読んだので、
もしかしたら飛ばしちゃた話かもしれないとも思いました。
「で、その話、最後はどうなるの?」
「美優は異例の塔の前で布団の怪物に追いつかれて、いよいよもうダメってときに、
 あの塔に半分彫られてる観音様が表面から抜けだしてきて、
 布団の怪物を抱きかかえて空に登って行くの。美優がぼうっと見上げていると、
 公園の管理人さんがやってきて、家まで送ってくれた。
 そのときには街の様子も普通に戻ってた・・・」

「えー、変な話」 これを聞いて、すごく違和感があったんですよ。
その本は、日常の中でさりげなく少しだけ怖いことが出てくる話がほとんどで、
怪物に追いかけられるなんてオーバーな内容は他になかったですから。
まあでも、本が美優から戻ってきたら確かめられるわけですし、
里美がそんな嘘をつく理由なんてないだろうから、やっぱ私が読み飛ばしてただけ、
と思ってたんです。その夜ですね。11時過ぎ、家に美優のお母さんから電話がありました。
「美優がまだ家に戻らないんですが、そちらにおじゃましてませんか」って。
里美はときどき家に泊まったりしてたんですが、美優はいつも部活で忙しいので、
私の家に来たことは数回しかなかったんです。どうやら美優の家では、
美優が置いてった携帯の友達らしい番号に片っ端から連絡していたみたいでした。
このことも変だなあって思ったんですよ。

だって美優の場合、携帯を持たないで外に出るなんて絶対ありえないですから。
それ聞いたときにはさすがに心配にはなりました。それから1時間半くらいして、
また美優のお母さんから電話があり、美優が見つかったって。ほっとしました。
電話は私の母が応対してたんですが、布団を抱えたまま、
平和公園墓地の中をうろうろしてたところを、管理人さんに発見されたって・・・
美優の家から、平和墓地公園は歩いて5分くらいの近くなんです。
これって、里美がしてた本の中の話とそっくりですよね。
もしその話が本にあって、しかも美優が体験したことが元になって書かれてるんだとしたら、
似たようなことがまた起きたってことでしょうか。
わけがわかりませんでした。とにかく本を見て確かめないと、と思ったんです。
翌日も学校があったんですが、美優は風邪ということで2日休みました。

さらにその次の日、昨日のことです。朝学校に行くと、ふだんは遅い美優がもう来てて、
「うちの母親、〇〇のとこにも電話したんでしょう。心配かけてごめんね」と言ってきたので、
「ううん、無事でよかったじゃない。でも、なんで布団なんか持って外に出てたの?」
「それ、お母さんの嘘。そんなバカなことするはずないじゃない。
 ・・・このことはこれ以上話せないから。あと本返すよ、面白かった」
こう言ってバッグからあの怪談本を取り出しながら、
「この本の中に、里美って子が出てくる話があるでしょ。あれ、里美のことかな?」
・・・それで、私はその日のうちに百物語の隅々まで読んだんですけど、美優も里美も、
墓地公園も布団も、そういうのが出てくる話は一切なかったんです。
全部が記憶にあるものばかりでした。あと、里美も登校してきたんですけど、
よそよそしい感じで、美優とはぜんぜん話をしないんです。・・・どういうことなんでしょうか?






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