FC2ブログ

聞いた話 2題

2015.10.10 (Sat)
食虫植物

これは自動車の板金塗装工場で働くMさんから聞いた話で、
Mさんとはよく行く居酒屋の飲み仲間なんです。
Mさんは高校生のときから二十歳ころにかけて、
ずっとバイクに乗ってたんですが、結婚したのを機にやめていました。
ですが最近、子どもがある程度大きくなったので再開したそうです。
リターンライダーと呼ばれるにはまだ若い年齢なのですが、
昔のような無茶なスピードは出さず、格好も渋目のファッションで、
主に晴天の通勤時に乗っていたそうです。
Mさんの家は郊外にあって、車通りの少ない県道を通るんですが、
そこは両脇が田んぼで、人が飛出す心配もまずなく、
時速50km制限のところを70kmほどで走っていました。

車もそれくらいで流れているそうです。
ある日、信号のある交差点にさしかかったところ、
左手の田んぼの中におかしなものがちらっと見えました。
赤と薄緑の色合いで植物のような感じでしたが、
3mほどの大きさがあったように思えました。でも、ふり返ってみると何もなかったんです。
ま、そのときだけだったら気のせいで済んだんでしょうが、
その後も通勤時に何度か見ました。これは朝に出社するときだけで、
帰りには一度もなかったそうです。朝の場合も、同じ場所なのに、
見えるときと見えないときがある。また、雨天で車で通勤したときにはまったく見えない。
これが不思議だったんですが、だんだんにわかってきたことがありました。
見えるのは、ある程度のスピードを出しているときだけだったんです。

どういうことかと言いますと、そこは信号機から数10mほど手前で、
信号が赤でスピードを落として停まろうとしてるときには見えない。
ところが、信号が青で赤になる前に通ってしまおうと、
80kmくらいまでスピードを上げているときには見える。
このことに気がついてからは、じっくり観察を試みました。
といっても、見えるのはその場所の真横に来たときの数秒程度で、
通りすぎてからふり向いても、ただの田んぼしかないんです。
その数秒間で観察したものは・・・ハエトリグサってご存知でしょうか?
食虫植物で、2枚貝の縁に鋭く長い棘が何本もついたものですが、
あの葉が一枚だけ、人の腕くらいの茎について縦になってるようなものだったんです。
下に画像を貼っておきましたが、イメージがわくでしょうか。

これが3mほどの長さで田んぼの中に突っ立ってたんですね。
まるで、スーパーや病院の案内看板みたいな感じだったと言ってました。
観察が進むにつれて、最初はしっかり閉じていたはずのトゲトゲの固い葉っぱが、
5月、6月と、少しずつだんだんに開いていくような気がしたそうです。
Mさんは、時間があるときに路肩にバイクを停め、
田んぼまで降りてみたんですが、やはり稲しか植えられていないただの田んぼで、
下に小さな食虫植物があるということもなかったそうです。
これは、他のバイク仲間を誘って、自分以外にも見えるかどうか確かめてみなきゃ、
そう思ってた矢先の7月初旬ですね。朝にその道を通っていくと、
いつも食虫植物が見える場所にパトカーが数台停まっていました。
バイクなので車の横をすり抜けていくと、横に入る道の前に警官がいて、

車をそちらの迂回路に誘導していたんです。
ミニバンが一台だけ路肩に停まっていたので、単独事故か、
対歩行者の事故だと思いました。Mさんも迂回せざるをえず詳細はわからなかったんですが、
その日の夕刊の地域欄に事故の内容が載っていまして、
母親と散歩していた幼児が、歩道と車道の間の鉄柵から道路側に転落し、
そこに運悪くミニバンが通りかかって頭を跳ねられ、田んぼまで飛ばされて即死したんです。
で、翌日はその道は通れるようになっていましたが、
道路脇に花束が積まれていたそうです。その横を通るとき、また例の食虫植物が見えました。
それまで少しずつ開いていたのが、最初に見たときのようにぴったりと閉じていたそうです。
その後も、ほぼ毎日その場所を通っているものの、
もう見えることはなくなってしまったということでした。

音楽室の絵

これはなんというか、怖い話の定番の一つになっている、
音楽室にかかっているクラシックの音楽家の肖像画の話です。
みなさんの小学校では、あの絵の目が動くなどの話はなかったですか?
一つここでウンチクを言うと、バッハやヘンデルが白くカールしたカツラを被ってるのは、
彼らが宮廷音楽家だったためで、そうではなかったベートーベンは、
蓬髪を振り乱しているんですね。さて、この話を聞かせてくれたのは、
やはり上の話の居酒屋の常連で、中学校時代吹奏楽部でチューバをやっていたAさんです。
吹奏楽部で男子は珍しく、彼の時代は3学年で4人だけだったそうです。
男子は力があるからということで、手に抱える楽器の中では一番重い
チューバをやるように顧問の先生から言われたんですね。
Aさんの中学校には音楽室は第一、第二と2つあり、

ふだんは各教室に分かれてパート練習をしているのですが、
最期の30分くらいは、第一音楽室に集まって全員で曲を合わせます。
第二音楽室が使われないのは、そこの床は声が響きやすいように段々になっていて、
ドラムセットや譜面台が置きにくかったからで、天井も斜めになっていたそうです。
こちらの教室のほうに、例の音楽家たちの肖像画が掲示されていたんです。
で、第二音は吹奏楽部の荷物置き場になっていました。Aさんが3年になり、
最後のコンテストも間近の9月、毎日7時過ぎまで練習していたある日のことです。
合同練習の休憩時間に、楽器を拭くタオルを忘れたことに気がついたAさんは、
第二音に一人で取りにいきました。そしたら、いつもはつけっぱなしの蛍光灯が消えていて、
Aさんが教室に入ってスイッチを押したところ、
蛍光灯はついたものの、教室の天井付近に黒い闇が残っていたそうです。

煙とはまた違う真っ黒な闇の固まりが、天井から50cmほど下まで垂れ下がって・・・
Aさんの言葉によると、マジックで紙に点々を無数に書いていったようなもの、
ということでしたが、これも想像がつきますでしょうかねえ。
その闇は少しずつ動いていて、斜めの天井を下から上に、
黒板の上に飾られた音楽家たちの肖像画に向かっていきましたが、
肖像画の近くまでくると、まるでその壁にあたるのを避けるかのように、
向きを変えたり、薄まったりしてだんんだんに消えてしまいました。
そこまで呆然と見ていたAさんですが、自分のバッグからタオルを取ると、
大急ぎで第一音楽室へと走り戻ったんですね。
で、このことはもちろん、練習が終わってから親しい仲間に話しました。
でも、翌日から何回か仲間と見にいっても、2度とそういう現象は起きなかったそうです。

なんだか嘘つきみたいになって、都合が悪かったと言ってました。
その年のコンテストは、Aさんの中学校は地区で金賞を取り県大会までいったのですが、
そこで銀賞となって引退することになりました。
その後、冬休み中に親の会が主催した部の御苦労さん会があり、
その席に、よく教えに来てくれていた地元の大学生の先輩に黒い闇の固まりの話をしたんです。
先輩はバカにする様子もなく聞いてくれていたんですが、
「うーん、なんだろうね、それは。何か悪いものが入り込んでいたってことだろうか。
 第二音楽室は、昔この中学校に合唱部があった頃はあそこで毎日練習してたんだよ。
 だんだん人が、特に男子が集まらなくなって廃部になっちゃったけど。
 あの音楽家の絵はただの紙だし、どこの学校にもあるものだよね。
 それに、ずっと昔に亡くなってる音楽家の念がこもってるなんてことはないと思うけど、

 もしかしたら、合唱部が熱心にやってたころの気が絵にこもってたのかもしれないね。
 ま、違うかもしれないし、よくわからないけど、
 その気が、たまたま入ってきた悪いものを跳ね返したってことじゃないかな。
 だから、守り神みたいなものっていうか、あんまり怖がることはないと思うよ」
こんなことをAさんに話してくれたそうです。






関連記事
スポンサーサイト




トラックバックURL
http://scoby.blog.fc2.com/tb.php/921-1ba00f10
トラックバック
コメント
管理者にだけ表示を許可する