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ハンザキ洞

2015.10.13 (Tue)
中学校2年生です。よろしくお願いします。
1ヶ月ほど前、理科の時間に無せきつい動物の分類というのを勉強しまして、
そのとき担当の先生がいろんな世界の動物の出てくるビデオを見せてくれたんです。
その中で、僕にとって一番インパクトがあったのがオオサンショウウオだったんです。
日本にはニホンオオサンショウウオというのが固有種ですが、
これはせいぜい1m半くらいにしかならないそうです。それに対し、
外来種のチュウゴクオオサンショウウオは2m近くまでになって、
生息域で押されてるみたいなんです。そういうことを勉強したんですが、
僕が何よりも感動したのが、近くで写したオオサンショウウウオの質感です。
少し透明感があって、ゼリーみたいな感じの。
それで、放課後の生物部の活動のときに仲間に話したんです。

そしたら、竹谷さんという先輩が、「オオサンショウウオはこのあたりにもいるぞ。
 矢鷺川で何匹か見つかった記録があるな」 「ホントですか、矢鷺川なら近いですよね」
「うん、俺のおじさんが川のそばに住んでて、オオサンショウウオのいるとこを知ってる、
 みたいなことを言ってたのを前に聞いたことがある」
「うわ、いいなあ。あれでも、天然記念物だから飼えないですよね。
 でも、さわってみるだけでもできないかなあ」
「じゃあ今晩、おじさんに電話して、案内してもらえるか聞いてみる」
こんな話になりました。それで翌日、部活のときに竹谷先輩が、
「昨日の話な、今週の土曜の午後ならおじさんが時間あるって。お前行くか?」
こう聞いてきたので、「行きます、行きます」って答えました。
竹谷先輩「他に行きたいやつ」って手を挙げさせ、もう1人2年生が行くことになったんです。

で、土曜日の午後、3人が自転車で竹谷先輩のおじさんの家に行きました。
矢鷺川の直ぐ近くで、40分くらいかかりました。さっそくおじさんが出てきましたが、
30歳くらいで、県のミニコミ誌をつくる仕事をしてるんだそうです。優しそうな人でした。
「やあ、せっかく来てくれたんだけど、今ね、川の上流で工事が入ってるみたいなんだ。
 行くだけは行ってみるけど、もしかしたら見られないかもしれないよ。
 というか、工事してなくても、見られる可能性は少ないんだけどね」
こんなことを言いまして、おじさんの家に自転車を置かせてもらって、
4人で歩いて川原を遡っていったんです。おじさんは、道々こんな話をしてくれました。
「オオサンショウウオはこのあたりでは、ハンザキとも言うんだけど、
 これどういう意味でつけられたか知ってる?」
「あ、聞いたことがあります。体を半分に裂かれても、生きて再生するってことでしょう」

「うーん、いや、いくらなんでも体を半分にされたら生きてはいられない。
 サンショウウオっていうのは元々、山椒のにおいがするからってつけられてる。
 山椒はハジカミとも言うからそれがなまってハンザキになったという説が確かみたいだね」
「へーえ」 「でね、これから行こうと思ってるのは洞窟なんだ。
 矢鷺川がかなり上流のところで地下に流れこんでる洞窟があって、
 そこがオオサンショウウオの生息地らしい。ま、オオサンショウウオは夜行性だから、
 地下でもあんまり関係ないのかもしれないね」 「洞窟ですか、すごいなあ」
「うん、隠亡洞って名前がある」 「隠亡?」 「昔に火葬をしてた人たちのことだよ。
 だけど今は差別用語みたいで、地図とかにも載ってない。
 ほらあの近くに市の火葬場があるだろ。今は炉と重油で燃やすんだけど、
 江戸時代から明治の半ばまでは薪を積んで火葬してたんだ。

 その仕事をしてた人たちが、洞窟の中に住んでたとも言われてる。
 まあ、わからないんだけどね」上流までは1時間近くかかり、かなり疲れてきました。
おじさんは遠くのほうを見て目を細め「あー、もうすぐなんだけど、
 やっぱり工事してるみたいだ」こう言いました。確かに川原に何台か、
工事車両が入ってるのが見えました。近づいていくと立入禁止の札があり、ロープが張られて、
それ以上進めないようになってたんです。工事の人の姿は見えませんでした。
看板には「河岸改修工事中 半崎建設」と書かれていて
「ハンザキなんてすごい偶然だな」って、みなで言い合いました。
「これはちょっとダメかな。うーんでも、地下川の流れるルートはだいたいわかってるから、
 そこ歩いてみよう」 おじさんが土手に上がったので、みなもついていったんです。
土手の向こうは、少し小高くなった畑地で、かなり幅広い用水路がありました。

「これが地下の川ですか」 「たぶんな。地上に出たり潜ったりで、
 最終的には矢鷺川と合流するはず」それに沿って歩いて行くと、
確かに用水路が地下に潜っていくところがあり、その脇に、
下に降りていけるようになった鉄の階段があったんです。
「そう危険はなさそうだね。ちょっと降りてみようか」 おじさんが言い、
みなが一列になって、手すりにつかまりながら急な階段を降りていきました。
中は広く、水路はコンクリで、上部には蛍光灯もついてたんです。
「ふーん、洞窟に入るつもりで懐中電灯用意してきたけど、これなら必要なさそうだ」
「でも、水すごく濁ってますよね。これでオオサンショウウオが住めるんですか」
「かなり水のきれいな場所じゃないといないと思ってる人が多いけど、
 じつはそうでもないらしい。京都のほうだと大雨が降ればふつうに川から上がってくるとか」

で、そのトンネルのような水路は、せまくなるどころか少しずつ広くなっていきました。
「これはスゴイね。たぶん大雨のときに水を逃がしてやるために広げたんだろうけど、
 こんな工事してるなんて聞いたことがないな」 おじさんが言いました。
15分ほど歩いたとき、竹谷先輩が水路を指差して「何かいる、でかいもんだ」
って叫んだんです。みなが見ると、泥色に濁った水の中に人の背丈ほどの影があるようでした。
それは2mほど離れたところの水面スレスレを、スーッと先に進んで行ったんです。
「サンショウウオの動きじゃないな。でかい魚かな」速くて追いつくことはできませんでした。
さらに5分ほど進むと、巨大な鉄柵があってそれ以上進めなくなりました。
鉄柵にはゴミの他に、動物の骨がいくつも引っかかっていたんです。肋骨が針金のように細くて、
もちろん人間のものではありませんでした。それと、鉄柵の向こうが池のように広くなってて、
青い光が見えたんです。船、潜水艇といえばいいですか、そういうのがあったんです。

そうですね、鉄柵ごしだし、暗くてよくわかりませんでしたが、
トラックくらいの大きさがあったと思います。それが水の中に半分浮いてて、
バチバチ青い光を出してたんです。「すげえ・・・」
バチッと光が走ると、水面がバシャバシャ波うち、たくさん生き物がいるのがわかりました。
「なんだよこれ」僕がそういったとき、鉄柵の向こうにぼこっと黒い頭が出ました。
みな息を飲みました。最初は生物だと思ったんですが、そうじゃなく、
潜水服を着た人だったんです。その人は口に咥えたものを吐き出し、僕らに、
「◯☓◯△ ◯☓☓△ 〇〇□☓」すごい勢いでまくしたてたのが、日本語じゃなかったんです。
おじさんもあっけにとられていましたが。「◯△□」と短く言葉を返し、
僕らのほうを向いて「戻ろう」って言いました。それで、来た通路をたどって地上に出たんです。
「さっきの人なんて行ってたの」竹谷先輩がおじさんに聞くと、

「はっきりわからなかったけど、かなり怒ってたよ。韓国語は少ししかわからないんだ」
おじさんがこう答えたんです。それからおじさんの家に戻り、
「せっかくきてくれたんだけど、オオサンショウウオが見られなくて残念だったね。
 工事が終わったら連絡するから、また行ってみよう」そうおじさんが言って、
解散になりました。でも、次はなかったんです。2週間前に大雨が降ったでしょう。
最近よく言われるゲリラ豪雨です。あのとき死者が4人出たんですが、
3人は河川改修工事の現場にいた半崎建設の一人で、もう1人が竹谷先輩のおじさんだったんです。
雨が上がって2日後に、工事現場近くの川面に浮いているのが見つかりました。
それと土手の上から流れる用水路、僕たちが入っていったところですが、
すっかり泥が流れ込んで埋まってしまったみたいです。ええ、もう復旧工事に入ってますけど、
半崎建設ではなかったです。金谷工務店っていう県外の別の会社でした。





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