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湖と柿の話

2015.10.26 (Mon)
こないだの土日かけてのことだよ。職場の20代の男だけ3人で渓流釣りに行ったんだ。
ああ、そうそう、もてない3人組ってことでいいよ。
金曜の夜に車で出発して、土曜日は少し仮眠するくらいで朝から釣り。
その夜は民宿に泊まって、日曜の午前に帰ってくる計画だった。
場所は言わないでおくが、東北のほうの有名な渓流だよ。
釣果はあまりなかったけど、紅葉は盛りできれいだったな。
ただまあ、釣りのときの話じゃないんだよ。あそこには有名なカルデラ湖があって、
その近くの民宿を予約してあった。部屋も食い物も予算なりだったけどな。
それで、寝る前にビール飲みながら怖い話になったんだ。
幼稚だとかって言わないよな、ここ怪談ルームなんだから。俺らはもちろん素人?だから、
怖い話たってネットに出てるようなありきたりのしか知らないけどな。

で、あんまり盛り上がることもなかったんだが、
最後に民宿のバイトの女の子が部屋に顔を出したとき「このあたりに怖い話とかありますか」
って、一人のやつが聞いたんだよ。女の子は当惑顔をしていたが、
「そうですねえ、〇〇湖、カルデラ湖で深いのはご存知ですよね。
 こんなこと言っちゃあれだけど、毎年何人か行方不明者が出るんです。
 事故と・・・自殺です。今、行方不明って言いましたけど、これは死体が上がらないから、
 死亡事故にならないわけです。すり鉢のように急激に深くなっているせいみたいですね。
 それで、その湖で亡くなった方々が、湖底で踊りを踊ってるんですって」
「踊り? うわ気味悪いイメージですね。どういうことですか?」
「ええ、水深が深いので、ご遺体はほとんど腐らないらしいんです。湖底には湧き水や、
 地下に通じる洞穴もあって、ゆっくりした水の流れがあり、

 亡くなった方々がその流れに乗って、歩くように湖底をゆらゆら大きな円を描いて漂ってる」
「うわわ、これ怖い、怖いですよ」
「それにしても話上手ですね。よく聞かれたりするんですか?」
「いや、そういうわけではないですけど、地元では昔から言われてるんです。
 小学校のときに聞いた記憶があります。だから頭のなかにイメージができてるっていうか」
でね、女の子がひっこんっでから、少しだけウイスキーを飲んで寝た。
布団の中で「さっきの話どう思う?」って他のやつらに聞いたら、
「湖に沈んだ遺体が腐らないってのはあるかもしれないな。
 でも水温が低いからってことじゃなく、ここの湖は深いから底のほうはほとんど酸素がないだろ。
 つまり生き物がいないってことは、腐敗菌なんかも少ないんじゃないかな」
「それはあるかもな。だけど、まず底までいかないだろ。沈木とかに引っかかって」

「だよな。それにもし湖の底に沈んだとしても、頭が上になるとはかぎらないんじやないかな。
 胴体を抜かせば、頭が体の中で一番重いパーツだろ。
 だから漂うにしても、足を上に倒立した状態とか」
「それ想像するとあんま怖くないな」 「そうか? それはそれで逆に不気味だけどなあ」
こんな話をして寝たんだ。その夜も特におかしいことはないっていうか、
酒が入ってたから、気がついたら朝ってくらいに俺は熟睡したんだよ。
トイレに行きたくなって目が覚めたら、仲間の一人のやつが布団の上に立ち上がって、
天井のほうを見てた。「何してんだ?」ッて聞いたら、
「昨日、夜中に目が覚めたときに、ここに大きな橙色のものが下がってるように見えたんだ」
「へえ」 「全体の印象としては柿なんだけど、スズメバチの巣くらいの大きさの」
「それは夢だな」 「まあそうだけど・・・」こんな会話になったんだ。

今になって考えてみると、このことも何か関連があるのかもしれないと思って話したわけ。
でな、その日は早めに出発して、すぐに高速には乗らず、
県道を1時間くらい走ったところにある廃集落に寄って行こうって計画になってた。
これも怪談やったのと同じで、ようは物好きなんだよな。
そこは最盛期には人口300人くらいいたんだが、
外材に押されて日本の林業がダメになってから、だんだんに人が出てくようになって、
放棄されてから30年以上にもなるってところ。
まあでも、そういうところは日本のあちこちにたくさんあるらしいんだけどな。
うーん、行ってみた感想は、昼間だったせいか、集落自体はあんまり怖くなかった。
全部が昔の日本家屋で、生活用品が残ってる家が多かったけど、
都会の廃墟と違って見にくるやつらがいないから、落書きとかはないんだよ。

人の手では荒らされてない。荒らしてるのは植物だな。
家の中に侵食したカビとかコケ、それと家のまわりの雑草やツタ。
この季節だから家のありかもわかったけど、
夏場なら家ごと雑草におおわれてしまってたんじゃないか。
「うーん、怖いというか、どっちかと言えば民話の里みたいな感じがするな」
「でもよ。そこ曲がったら、鎌を持ったバアサンが立ってたりして」
「ああ、そういう話もあるよな。杉沢村だっけ?」
「聞いたことある。神社の鳥居をくぐるとその下にドクロの石があってとかなんとか」
「あれ青森県だろ、こっからそう離れてるわけじゃないな」
「この次は、そこまで足のばしてみるか」
「それだけじゃ行かねえよ、釣りできるとこがないと」

こんな話をしてたら、山の上のほうに本当に鳥居らしきものが見えて、
「あれほら、集落の神社じゃないか。行ってみないか?」 「時間あるか?」
近くまで行ったら、登り口の石段が竹垣を組んで塞がれてたんだ。
「うわ、これ封印か?」 「単に侵入者に対して管理してるだけだろ」
「横の斜面を登るのは無理だな」そこの神社の山の裾の小高くなったところに、
板塀をめぐらしたかなり大きな家があり、その塀越しに枯れた木が出てて、
枝の高いところに一個だけ、柿が成ってたんだよ。
「あれ、何て言ったっけ? 一個だけ柿の実を採らないで残しておくやつ」
「んー、木守柿とか言うんjじゃなかったっけ。俳句の季語であったような」
「すげ、よく知ってるな」 「でもよ、それって住んでる柿の木の持ち主がやるんだろ。
 ここは集落全体誰もいないってネットに出てたし、あの家だってほら二階のガラス割れてるだろ」

「だな。偶然ああなったわけか」 「変だよな、高いとこは鳥がねらいやすいだろうに」
で、一人が石を拾ってその柿に向かって投げたんだよ。
かなりの距離があるからぜんぜん届かず。「俺やってみる」って次に石を拾ったやつは、
高校野球経験者で、草野球の社内チームのエースだったんだ。
そいつはいったん後ろに下がって、外野からバックホームするように投げたら、
なんと一発で柿にあたったんだよ。したらパーンと柿が爆発したように四方にはじけ散った。
そのとき、一羽も姿が見えなかったのに、
「グワグワ」鳴き声を上げながら、たくさんのカラスが塀の中から飛び出してきて、
空に昇っていった。すげえ気味悪い感じがしたんだよ。
だから柿にあてたやつも「どうだ」とか自慢もしないで、そのまま3人で車に戻って出発した。
「ハラ減ったよな。高速のSAに入って何か食おうぜ」

そんとき乗ってたのは、レガシイの中古のワゴンだよ。
高校の野球部だったやつの車。日曜の昼前なんだけど、廃村の中だから車なんていないんだよ。
だからかなりスピードを出してたんだが、後ろでバーンと破裂音がして、
車のリアウインドウが赤黄色になった。「あ、何だ?」またバーン。「後ろから何かぶつけられてる」
「これ、それこそ柿じゃねえか」急ブレーキで車を止め、外に出てみたらやっぱ柿だったんだよ。
でかい種がガラスにこびりついてた。生の柿というより、干し柿みたいな粘っこさだった。
「誰だ、やったやつ出てこい!」 そう叫んでもあたりはシーンと静まったままでね。
「行こうぜ、早くここ出よう」車を発進させたときに俺が、
「さっき80km以上出てたよな。前からならともかく、後ろのウインドウにあてられるか?」
他のやつらは黙ったままで、そのまま逃げるようにして埼玉まで戻ったよ。
その後はこれまで、特におかしなことはないけどな。






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