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髪の話

2015.10.31 (Sat)
こんばんは、よろしくお願いします。今日させていただくのは、髪の話なんです。
ええ、今は短いですけど、少し前まではロングにしてたんです。
それが「あすか様」というものの捧げ物になってしまって・・・
ええ、その顛末を詳しくお話します。ちょうど10日前のことです。
私はアパレル関係の会社にいるんですけど、その夜は業界のパーティーに参加して、
終電まで遅くなってしまったんです。やっと乗り込んだ電車はガラガラで、
座ったとたんウトウトしてしまいました。40分くらい乗るんですけど、
寝たことはほとんどなかったのに、油断してたんでしょうね。
それでどれくらいたったか・・・頭に違和感があったんです。
髪を引っぱられて、かしいでるみたいな。それで目が覚めまして傾いたほうを見ると・・・
巡礼の親子がいたんです。嘘じゃないです。

あの白装束で、笠はとってましたけど、お遍路さんって言うんですか。
時代劇に出てくるような巡礼の親子、あ、もしかしたら、
おばあさんと女の子なのかもしれません。そうですね、おばあさんは50歳代、
女の子は4、5歳に見えました。それで、おばあさんのほうが私の髪をひとつかみ手に取り、
何かぶつぶつ言いながら編むような仕草をしてたんです。
それを女の子がじっと覗きこむようにして見てる・・・
「ちょっと、何してるんですか?!」思わず抗議の声をあげてしまいました。
そしたらおばあさんがこっちを見て髪から手を離し、こんなことを言ったんです。
「ああ、スマンの。あまりいい黒髪だから、あすか様にお供えしようと思って。ご時世から、
 染めてない髪が少なくなってしまって」わけわからないでしょう。
私は気が強いほうなんですけど、きっとおかしい人か宗教関係だろうと思いました。

それで、すぐ立ち上がって、何も言わないで別の車両に移ったんですよ。
そうですね、駅員さんに報告することも考えましたが、痴漢というわけでもないし、
女の子もいましたからねえ。その子はすごい黒目がちな目をしていて、
ぬいぐるみみたいに可愛かったんです。それで、実害はなかったんだからと思ってそのままに。
まあ今考えてみると、駅員さんに話してもどうなることでもなかったんでしょうけどね。
その日は自分の部屋に戻ってシャワーだけ浴びてすぐ寝ました。
特におかしなことはなかったと思います。次の夜ですね、変なことが始まったのは。
その日は比較的早く帰って、ベッドに寝転んで雑誌を読んでたんです。
眠くはなかったんですが、急に金縛りになってしまいました。
でも、自分がそう思ってるだけで、ほんとうは少し眠りかけてたのかもしれません。
薄目を開けてたつもりだったけど、雑誌が枕元に落ちてましたから。

そうですね、子どもの頃には何回か合った記憶がありますが、
大人になってからは初めてでした。ええ、つけていたテレビの音は聞こえたんですけど、
体がまったく動かなくて・・・それで、ベッドは片側を壁にくっつけてるんですが、
そっち側に何かがいる気配がしたんです。頭が上を向いていたので
はっきりは見えなかったです。黒々とした禍々しいもの・・・それが渦を巻くようなというか、
炎が立ち昇るように動いている。そんな気がしたんです。
うーん、時間にすると10分くらいでしょうか。もっと長く感じたけど、
あとで時計を見たらそんなものでした。ふっと体が動くようになったんです。
ええ、横の壁にはなにもありませんでした。ただ、自分の髪がそっち側に片寄っていて・・・
それでこの金縛りが、次の夜も次の夜もほぼ同じ状態で続いたんです。
で、お休みの土曜日になって、その日は彼がくる予定でした。

6時過ぎにやってきた彼に、さっそく金縛りの話をすると、
「それ、睡眠麻痺ってやつで病気とかじゃないし、霊関係のものでもないから心配ないよ。
 仕事疲れてるんじゃないか。じゃあ、寝るとき俺がベッドの壁側になるから」
こう言ってくれました。その後、2人でワインを飲んだりしましたけど、
酔っ払うほどじゃなかったです。寝たのは遅くなって1時半を過ぎてました。
そのときは明かりはスモールライトと、あと電化製品があいろいろあって、
けっこう明るかったです。寝返りをうったんでしょうか、真上を向いた感覚があったとき、
半分目が覚めて、半分覚めてない状態・・・これが金縛りなんでしょうけど、
入っちゃった、ってわかりました。やはり壁側のほうに何かいる。
でもそっちには彼が寝てるんです。「うーん、うーん」という彼のうなる声が聞こえてきて、
頭が引っぱられる感じがしました。彼の声がだんだん高くなっていって・・・

「ああああああああ」という絶叫になりました。そしてガバッと上半身を起こし、
それに引きずられるように、私もうつぶせに彼のお腹の上に倒れたんです。
「ハーハー」という荒い息づかいが聞こえましたが、頭を動かせませんでした。
頭がグラグラ揺さぶられ、彼が「あつつつ、やっとほどけた。死ぬとこだったぞ」
そう言ったとき、私も頭を動かせるようになって彼のほうを見ました。
首のところが真っ赤になっていました。「今なあ、寝てたらお前の髪が顔の上でひらひらして、
 それから急に首に巻きついてきたんだ。すごい力だった。なんなんだよこれ。
 あとなあ、頭の中で、あすかさま、あすかさまって声が響いてた」
これを聞いてはっと、あの電車の中でのことに思い当たったんです。
巡礼の親子の話を彼にしたら、考えこんで「うーん、それは何か呪いみたいなものかもしれんな。
 わからないけど、髪切ったほうがいいんじゃないか」こう言ったんです。

髪を切るのは仕事に差しさわるんですけど、彼ののどが真っ赤に充血してるのを見ると
そうも言っていられず、日曜日、行きつけのヘアーサロンに行ったんです。
そしたら、私の番になって頭を手でさわった知り合いのヘアスタイリストさんが、
「これ、髪がすごく重いです。何かありましたか?」って聞いてきまして。
それであったことを全部話したんです。そしたら、
「あすか様というのはちょっとわからないけど、うちの父が床屋をやってて、
 そういうのけっこう詳しいから、これから行ってみたら」って、場所を教えられたんです。
いったん部屋に戻り、彼といっしょに電車で教えられた場所に行ってみました。
すごい古風なというか、重厚な感じの理容室で、
白衣を着た年配の方が店の前で待っててくれました。
「娘から電話があって話を聞いてるから、まあ入りなさい」

私たちの他にお客さんはいませんでした。椅子なんかは木製で、つやつや光ってましたね。
それに座らせられ、「あすか様わかるよ。昔話だと思ってたけど、今もやってるんだねえ。
 髪、短くするけどいいかい。そうしないと危険だから」こう言われたので、うなずきました。
そしたらお父さんの床屋さんは、奥の方から大きな和ばさみって言うんですか、
あの裁縫に使うのを持ってきて、ジョギッ、ジョギッと耳の横でぐるりと切られてしまったんです。
切った髪はお菓子が入っていたような白い紙の箱に全部詰めて、
フタをして軽くひもをかけ、「はい」って渡され、
「これを、◯◯町にあるあすか様の神社に持って行きなさい」こう言われました。
「あの、あすか様ってなんなんですか?」聞きましたら、
「それはねえ・・・ちょっと言えないけど、生き体様を作っているとこだな」
生き体様・・・ますますわけがわかりませんでしたが、教えられたとおり彼と行ってみました。

あすか様の神社というのは「形象神社」という額が鳥居にかかってまして、
街中というか、大型電気店の裏手の駐車場の近くにあったんです。
申しわけ程度に木が生えていました。小さなところで、
鳥居をくぐると神主さんがホウキで参道を掃いていまして、私の髪型でしょうね、
それを見ると、「ご報謝の方ですね」と言って、社殿の中に案内したんです。
中に入って息を飲みました。せまい内部の奥のほうに、
黒い人の形をしたものが立てかけられていたんです。神主さんはそれに向かって礼をし、
私たちのほうを見たので、彼と私も真似しました。彼が「これは・・・」と声を出すと、
「あすか様の分霊である生き体様です」こう答えが返ってきまして、
それ以上聞けない雰囲気がありました。あすか様、生き体様、どっちなのかわかりませんが、
それは大きな藁人形の形をしてて、全部が人の髪でできていたんです。

神主さんが、「さ、このあたりに埋めてください」と言うので、
さきほど切った髪だろうと思って、箱から出して他の髪にはさみ込むようにして埋めました。
よく見ると、黒い糸で髪束はあちこち束ねられていました。
そう時間もかからずすべて埋め込むと、神主さんは頭を下げ、
「ご奉仕ありがとうございます。しばらくは髪を伸ばされないほうがいいでしょう」
こう言いました。彼がたまりかねたように、「あすか様、生き体様って何ですか? 
 この髪の人形のことですか? ちょっとは教えてくれたっていいでしょう。
 こっちは死にかけたんだから」やや強い口調で言うと、神主さんは、
「そうですね・・・女の方の怨みを晴らすものです。
 これ以上はお聞きにならないほうがよろしいかと。古く、強く障るものですから」
こんなことを言いまして、それだけしかわからず帰ったんです。






 
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