ペストと薔薇

2015.11.02 (Mon)
えー今日は奥歯が痛んで、7年ぶりに歯科医に行ったのですが、
全然痛くなかったですね。これは治療技術が進歩したのか、
それとも腕のいい医者にあたったのかどっちでしょうか。
まだ麻酔が効いているようで口内に違和感がありますので、
今回は無理をせず、医療関係の怖い世界史でも。

世界史を大きく変えたもの、これはいろいろとあるでしょうが、
伝染病のペストなどもその一つであると考えられます。
世界的な大流行が何度かありましたが、最も大きかったのは、
1347年(46年説もあり)東西交易によって、
中央アジアからイタリアのシチリア島のメッシーナに上陸したもので、
毛皮についていたノミが媒介したと言われています。
ペストとは、黒死病とも呼ばれ、
『ヒトの体にペスト菌が感染することにより発症する伝染病である。
日本では感染症法により一類感染症に指定されている。
ペストは元々齧歯類(特にクマネズミ)に流行する病気で、
人間に先立ってネズミなどの間に流行が見られることが多い。』

こうにWikiに出ています。

この翌年には、早くもアルプス以北のヨーロッパにも伝わり、
ブリテン島にまで広まりました。
14世紀末まで3回の大流行と多くの小流行を繰り返し、
全世界でおよそ8500万人、当時のヨーロッパ人口の3分の1以上である、
2000~3000万人が死亡したと推定されています。
以後も、ヨーロッパでは18世紀まで何度かの流行が起きています。

これによって、ヨーロッパ社会はさまざまな影響を受けました。
まず死者が多すぎて農奴が不足し、穀物栽培から牧畜に産業構造が変化したりしています。
またイギリスでは、ラテン語の使用者が減り、
下位の言語であった英語が生き延びたとも言われており、もしペストがなければ、
みなさんが学校で英語を勉強することもなかったかもしれません。

ボッカチオの『デカメロン』チョーサーの『カンタベリー物語』などは、
ペストの影響下に成立した話ですし、
シェークスピアの『ロミオとジュリエット』においても、
ペストがストーリーに大きくかかわっています。(ジュリエットの手紙を託した使者が、
患者に接触したため隔離されてしまい、それがロミオの死につながる)

次の画像は何だと思われますでしょうか?


悪魔主義者の鳥人間? いえいえこれは、
イタリア語でメディコ・デッラ・ペステという、ペスト医師の仕事用の装束です。
今でいえばパンデミックで出てくる防護服のようなものでしょうね。
ペスト医師は、ペスト患者を専門とする医者のことで、
黒死病が蔓延した時代に多くのペスト患者を抱えた街から特別に雇われた者です。
報酬も街から支払われたため、ペスト医者は貧富の隔てなく、
誰であろうと治療を施したました。
しかしこれは、自らも感染の危険のある命がけの仕事です。

ですから高名な医師がその役をやることはなく、
医師としての資格も怪しい者や、
名を上げようとする若い駆け出しの医師が多かったようです。
この鳥仮面の鼻先は意味なく尖っているのではなく、
そこにはペストに対する薬効のあるとされた、香りのよい香草が詰められていました。
バームミント、ショウノウ、クローブ、 アヘンチンキ、バラの花びらなどです。

さて、このペスト医師の一人に、「恐怖の大王」予言で有名なノストラダムスがいます。
ノストラダムスの経歴はざまざまな伝説に彩られていますが、
彼が長年ペスト医師として活動していたのは事実で、
その方面の著書『化粧品とジャム論』もあります。
伝説では、ノストラダムスはペストの原因がネズミであることを見抜き、
その駆除や患者の隔離、アルコール消毒や熱湯消毒、
キリスト教で禁じられていた火葬などの先進的な改革を行ったことになっていますが、
事実ではありません。著書には、イトスギのおがくず、すりつぶしたバラ、
丁子などを治療薬にしていたと出てきますが、
もちろんそれらに画期的な薬効はありませんね。

この医師としての活動で名を成したノストラダムスは、
富を蓄え、名士となって社交界にデビューしました。
ある意味では、彼もまた当時のアバンチェリエ(山師)の一人であったわけです。
そこで預言者として、暦書や予言書を出版し、
フランス国王アンリ2世にも謁見しています。
みなさんの中にどれだけ「1999年7の月、空から恐怖の大王が降ってくる」
という予言を気にされた人がいるかはわかりませんが、
あれが20世紀の日本で評判をとったのも、元をただせばペストが関係しているのですね。

さてさて、題名にしている薔薇ですが、何度か上記したとおり、
これはペストに効果がある生薬と考えられていました。
ペスト医師の鳥仮面の鼻にも詰められていたものです。
イギリスの童謡集である『マザーグース』に、このようなものがあります。
『 Ring-a-Ring-o' Roses, A pocket full of posies,
 Atishoo! Atishoo! We all fall down. 』

(薔薇の花輪を作ろう、輪になって踊ろうポケットに花束をさして。
 ハクション、ハクション、みんなが転んだ)

無邪気な女の子の遊びの歌のように思えますが、これには、
花束はペスト治療用の薬草、くしゃみは病気の末期症状、
みんなが転んだ、の部分はもうおわかりでしょうが、ペストによる村の壊滅を表している、
こういう解釈もあるようです。  関連記事 『パイドパイパー伝説』

ノストラダムス 鳥仮面をかぶっていたのでしょうか?






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