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聞いた話 2題

2015.11.04 (Wed)
奇妙な魚

これは、大阪ではけっこう有名な某アパレルショップのオーナーである、
Uさんから聞いた話です。Uさんは大学生のときに事故で友人を亡くしているのですが、
そのときの顛末ということでした。3年の夏休み中、
体育科の仲間2人とドライブに行きました。車は中古のランクルで、ボロボロ。
しかし買ったことがうれしくて、友人らを見せびらかしがてら誘ったんですね。
その夏は暑く、海に向かったんですが、車のエアコンの効きがあまりよくなく、
あきらめて窓を全開にして走っていたそうです。
国道を1時間ほど走ると、右手に岩浜の海が見えてきまして、
誰からともなく「泳ごうぜ」という話になりました
海パンは持ってきてなかったんですが、全員短パンだったので問題はなかったんです。
適当に横道に入り、松林の中に車を停めると、タバコだけ持って海に駆け出しました。

そこは海水浴場でもなんでもなく、真っ黒い岩が2mほど崖になっている下が海。
水の色はかなり青く、つまり相当な深さがあるってことです。
3人はシャツを脱いで次々海に飛び込みましたが、やはりまったく足は立たず、
潜ると水中は大きな海藻だらけでした。3人ともそこそこは泳げたのですが、
海水で冷やされて暑さがおさまると少し不安になってきました。
飛び込んだあたりは崖なので、水からあがるとき、よじ登るのが大変そうに見えたからです。
それで誰からともなく「もっと低くなったとこまで行こうぜ」という声が出て、
岸の岩壁に手でつかまりながら平行に泳いで、岸がやや低くなっているところまできました。
そこで上がったんですが、シャツを置いたとこからだいぶ離れてしまいました。
「タバコ吸いて」 「いったん戻って荷物とってこよう」戻ろうとしましたが、
最後に水から出たAさんの足どりが重かったんです。

「おいどした?」 「いやちょっと岩に頭をぶつけた。たいしたことないけど」
「怪我したか?」 「いや、血は出てない」足元の岩はあちこち尖っていて、
速くは歩けませんでしたが、それでもAさんがだいぶ遅れました。
振り返ると立ち止まって海面を見ていたんです。
「おーい、どした」 「でかい魚がいる」Aさんが答えたので、戻ってみました。
「どこ、どこにいる?」 「すぐそこだよ、ほら」指さされたものの、
Uさんにはよくわかりませんでした。「どんな魚」 「つるつるした白いイルカみたいな」
「どこだよ、いねえぞ」こう言い合っていると、Aさんが急にそこから飛び込んだんです。
「危ねえぞ!」と声をかけたUさんは自分の目を疑いました。
Aさんが空中で魚に変化したように見えたんです。
さっきから言っていた、イルカ・・・ジュゴンのような哺乳類にです。

「あ、あれ!?」もう一人の友人のほうを見ると、やはり目を丸くしていました。
「Aが魚になったぞ」 「ありえねえ」その魚は頭を下にして潜り、
尾が水面でバタバタ跳ねました。
そして鼻先で何かを水から掘り起こすような仕草を何度もしました。
そしたら別の白いものが浮いてきたんです。うつ伏せになった人間で、まったく動きません。
「あ、あああ」 その短パンに見覚えがありました。「あれAじゃないか?」
「Aはあの魚になっただろ」 「いや、魚は潜ったまま出てこない」
「とにかくAを水からあげよう」2人が飛び込み、Aさんの短パンをつかんで引き寄せ、
体を反転させて顔を上に向けましたが、Aさんは強く目を閉じていて、
顔は真っ白でぴくりともしない。頭を支えながら、手近の岩に引き上げたんですが、
呼吸も心臓もありませんでした。

携帯が出始めの頃で、2人とも持っていなかったので、
Uさんが走って国道まで出て、電話のありそうな店を探しましたが、
だいぶ時間がかかってしまいました。救急車を要請して戻ってくると、
もう一人の友人が心臓マッサージをしながらUさんを見て頭を振りました。
Uさんはランクルに戻って国道に出、路肩で救急車が見つけやすいように待っていました。
Aさんは大量の水を吐いたものの、呼吸、心臓の鼓動も戻ることなく、
そのまま病院で息を引き取ったそうです。「今になって考えると、
 Aが魚になったのは幻覚かもしれないが、でも、もう一人のやつも見てるんだ。
 あの魚の尾っぽがバタバタ揺れたのは目に焼きついてる。うーん、もしかしたらAは、
 最初に飛び込んだときに水中の岩に頭を打って、意識をなくしてたのかもしれない。
 海から上がってきたときにはすでに、幽霊みたいなもんだったんじゃないかな」

水たまり

Hさんから聞いた話。Hさんは自分の占星術の事務所近くでたこ焼きの屋台を出してる、
50代の女性です。かなり体格のよい豪快な性格の人です。
あ、それから、上の話もそうですが、聞いたのはすべて大阪弁で、
共通語に直して書いています。で、このHさんが小学校の低学年のときですから、
かなり前のことですね。お母さんと買い物に行った途中で雨に降られ、
傘を持ってきてなかったので、喫茶店に避難しました。
その窓際で、ラッキーと思いながらパフェを食べていると、
ガラス越しに通りの様子が見えました。かなり強い降りだったので、
もうすでに舗道に水たまりができていました。
水は横一面に広がって避けようがなかったので、
歩行者は靴のままバシャバシャ入って歩いていたんです。

そしたら、若い女の人が水たまりに入ったとき、ズッと足が下に下がったんです。
スネのあたりまでです。ガラス越しで声は聞こえませんでしたが、
「キャッ」と悲鳴を上げたように見えました。Hさんは、
「ああ、あそこに穴があるんだ」と思い、次に来る人も落ちないかなと、
子供らしい期待を持ちました。それから数人が通りましたが、
その穴の近くには足を入れず、残念だなあと思っていたとき、
ずぶ濡れになった子猫がちろちろと走ってきました。
あ、かわいいと見ていると、水たまりの前まで来て立ち止まり、
それを避けようと車道のほうへ歩きかけました。そのとき、
水たまりの中からバシャッと蛸の足のようなものが出てきて、
子猫の前足に巻きつくと、一瞬で水たまりの中に引きずり込んだのです。

通行人で気がついた人はいないようでした。
あまりのことに、Hさんはしばし呆然としましたが、お母さんに知らせようと思い、
「ねえ、今ね、あそこの水たまりからにゅーっとタコの足が出てきて、
 ネコさんを引っぱってった」こう話しかけましたが、
お母さんはそのとき、夢中になってぜんざいの餅を噛んでいましたので、
「ああ、猫? 水に落ちたの? かわいそうねえ」と適当なことを答えてきました。
「タコが引っぱったの」 「蛸? このあたりに蛸はいないわよ」
水たまりに目を戻すと、まるでさっきのことはなかったかのように静まっていました。
その後は、パフェを食べ終わるまで、水の穴に落ちる人もいなかったんです。
雨が小降りになってきたので、お母さんが「そろそろ出ましょう」そう言って、
勘定を済ませて店外に出ると、もう濡れても気にならないほどの小雨になっていました。

Hさんは、「こっち、こっち」と、お母さんをさっきの水たまりまで引っぱって行きました。
それで、ちょっと怖かったのですが、手を握っているから大丈夫だと思って、
子猫が消えたあたりを片足でバシャバシャやってみました。
「こらこら、靴が濡れちゃうでしょう」お母さんが言いました。
でも、いくらそのあたりを探っても、猫が消えるような、
女の人の足がスネまで落ち込むような穴はなかったんです。
「それでね、さっき蛸の足って言ったけど、それは形が似てるってだけで、
 色は青緑だったのよ」とHさん。「うーん、それは興味深いですね。場所どこですか?」
「◯◯の△△」 「ああ、こっから10分くらいですね」
「その後、道が乾いてるときも通ったけど何もなかったわねえ。だけど、
 すっかり変わっちゃった今でも、あの道は反対側の舗道を通るようにしてるの。念のため」






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