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唄う取的

2013.08.07 (Wed)
俺は廃墟探索するのを趣味にしている。
昨夜も関西最恐と言われる廃病院に行ったが特に何事もなかった。
その後仲間と朝まで飲んで帰るところだが、日曜日なので
歩行者天国をやってるのを思い出しちょっと寄ってみることにした。
来てすぐに後悔した。けっこうな人出で俺は二日酔いで頭が痛い。

抜けて帰ろうと思ってよたよたと歩いていたら、
向こうからダブダブしたスーツを着た親方らしい人を先頭に、
相撲取りの集団が歩いてくる。相撲取りは十数人で、
着てるものからみるとほとんどが幕下以下の、いわゆる取的というやつららしい。
道の端に避けてやりすごそうとしたら、親方らしい人が俺に目を留めて、
近くに寄ってきて顔を覗きこみ、「あんた、こりゃいけねえよ。
 たいへんなものが憑いてる」そう言うと、俺に返事する暇も与えず、
「お前ら、囲め、囲め!」としゃがれ声でがなった。

俺は道の中央に押し出され、そのまわりを十数人の取的が
円を描いてとりまいた。親方が「お前ら、甚句だ。唄え、唄え!」
親方がそう叫ぶと、取的たちがいい声で唄い始め、
道行く人が立ち止まって見物しだした。
取的たちは唄いながら俺の周りをぐるぐると回っている。
俺は頭の痛みがますますひどくなってしゃがみこんでしまった。
なんだか頭から湯気のようなものが立ち上ってる感触がある。
やがて「どすこい、どすこい」の掛け声で甚句は終わったが、
親方は「んー、まだ全部は出きってないな」と言い、
「お前ら、四股だ。四股踏めや」

すると俺の周りで、取的たちがいっせいに四股を踏み始め、
地震のように地面が揺れ、俺はその振動でうつ伏せに道路に倒れた。
ショワショワと音を立てて頭から何かが抜けていく感じがして、
仰向けになって上をみると、黒い煙のようなのが渦巻いてる。
やがて、ドシン、ドシンと取的の四股は終わり、
俺は立ち上がったが、体が軽くなり頭痛もなくなっていた。

親方がまた近寄ってきてこう言った。
「俺は見える人なんだ。あんたにゃなんかとんでもねえものが憑いてたぜ。
 おおかた悪所にでも行ったんだろ」
俺が思わず礼を言うと、親方は、「いや、いいってことよ。
 これも世のため人のため。よかったら俺らの部屋を贔屓にしてくんな」
そう言って、取的の集団を引き連れて去っていった。
カッコイイ、と思ってしまった。




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