海が好き

2013.07.15 (Mon)
『共同開発』ルネ・マグリット

自分は海が好きなので、海のことを書いた話をもう二つ載せます。


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ふだらく様

2013.07.15 (Mon)
自分は子どもの頃から大学に入るまでずっと浜で育ったんだけど、
海辺ならではの不思議な話がいろいろあった。
自分の家はその界隈で一件だけ漁師ではなく、親父は市役所の勤め人だった。
砂浜があって、国道があり、その後ろはすぐ山になっていて、
その山の斜面にぽつんぽつんと家が建っていて、
浜に漁のための小屋があるようなところ。

自分が小学校頃までは、8月の最初の週、
7日の日までは漁師は漁に出ちゃいけないことになっていて、
特に7日の晩から朝までは、子どもは家の外へも出ちゃいけないことになってた。
何でも、沖に『ふだらく様』の舟が来て、外に出ている子どもは引かれてしまうらしい。
こういうのは神隠しとか、普通は女の子が危ないんじゃないかと思うけど、
特に本家筋の跡取りの男の子なんかが危ない、という話だった。
大人達は集落の公民館に集まって朝まで酒飲むし、漁師だから喧嘩もする。
夏休み中の子どもは家でおはぎを食べて早く寝る、という日なんだ。
ただそんな日でも、国道は少ないながらもときたまは車が通ってるわけだし、
世の中が合理的になったのか、自分が中学校になる頃には行われなくなった。

それでもやっぱり、8月7日前後は海で遊んじゃいけないとは言われてたんだけど、
中学校2年の8月6日の日の朝に浜に出て、水死体を発見した。
岩場になってるところを歩いていて、外国のブイなんかの漂着物を探していたら、
海中2mくらいのとこに人のお尻が見える。あわてて大人を呼んだ。
引き上げられたのは近くに帰省してた大学生だった。
波で海パンが脱げて、頭を下にして沈んでた。
その前日の午後には亡くなってたのだろうと、来た警察の人が言っていた。
自分がまだ当時健在だった爺ちゃんに、
『ふだらく様』と水死した人は何か関係があるのか聞くと、
「関係あるかもしれないね、ふだらく様は男が好きだから」という話。

その出来事で、自分は子どもながらもすごくショックを受けたんだけど、
次の日が8月7日で本来の忌み日。
ちょうどテレビで怪談特集とかやってて、自分は見ないで早く寝た。
けど早く寝すぎて、夜中の2時過ぎ頃トイレに起きてしまった。
その頃は実家も改築する前で、家の外にボットントイレがある状態。
トイレは山側なので浜を見ることはないけど、
まだ暗い夏の闇の中を裏戸から出て歩いていると、
沖の方からドン・ドンと太鼓を叩くような音がかすかに聞こえてくる。
自分はその時、これはふだらく様だから見にいっちゃいけない、と思った。

思ったけど、自分が馬鹿だからなのか、
それとも何かの力に引かれたのか、見に行ってしまったんだよ。
そしたら、国道をはさんで沖の方に、板屋根のついた昔の小さな舟が浮かんでいる。
距離感がよくわからない。本来沖は真っ暗で見えるはずがないんだけど、
赤い光がその舟を包んだようになってて見えるんだな。
沖は波が荒いのか舟は上下に浮き沈みしてて、
よく見ると舟には何本か鳥居がついている。
太鼓の音も小さく聞こえていて、自分を呼んでいるような気がする。
しばらく見てるうちにぼうっとしてきて、浜の方に歩き出そうとした。
そのとき、国道を大きな音をたてて大型トラックが通って、目が覚めたようになった。
もう一度見たら沖の舟は消えていた。

まあそれだけの話。怖くなくてすまん。


海が好き2

2013.07.15 (Mon)
 この話の中心はもちろん補陀落渡海だけど、
裏テーマとして少年の性のようなことを入れたいと思ってました。
いつか補陀落僧と稚児、男子大学生と少年をクロスさせて長く書いてみたいと思ってます。

『ghost photography』



持衰の像

2013.07.15 (Mon)
中学校2年のときの話。
俺は家は漁師じゃなかったが海辺に住んでた。
というか前の浜から背後の山までせまくて細長い土地の町だったんで、
ほとんどの人がが海辺に住んでると言えるんだけどな。
それで今でいうビーチ・コーミングを趣味としてた。 
当時はそんな言葉はなかったけど、簡単にいえば漂着物の収集のこと。

日本海側の北の方だったから熱帯の貝やヤシの実なんてのはまず見られなくて、
日本にない漢字やハングルが書かれた浮きなんかが多かったが、
ときおり変わったものもあった。
ビーチグラスはもちろん古い陶器の破片や変な形の魚の骨とかルアーとか、
あと流木は俺は興味なかったんだが、大きいのを家に持って帰ると、
当時まだ生きてたじいさんが皮をはいで磨きあげ置物にした。
中学校の仲間や小学生でもやってるやつがいたんで、
そいつらより先にと思って、朝の6時頃には浜にいて見て回ったりもした。

11月頃だったと思うけど、
海が荒れた翌日で何か収穫があるかと浜に出てみたら、
テトラポットのすきまに何か赤茶色の大きなものが引っかかってるのが見えた。
近づいていくと何かの像のようなもので自分の背丈よりも大きく見えた。
顔のほうを下に沈めて背中が出てるんだけど、
お寺で見る仏像とはまったく違って頭が大きくいびつな形をしてる。
木目が出ているとこがあるんで木彫りだと思った。

一人ではどうにもできないので家に戻ってじいさんを呼んできた。
じいさんも始めて見るらしく、
首をひねりながら人を集めて引き上げてみると言った。
俺はもう学校にいく時間になってたんで家に戻った。
・・・どうなったか気にしながら学校から帰るとじいさんが待ってて、
「像を引き上げて、町の神社脇の、
 おみこしなんかをしまってる倉庫にとりあえず入れた。
 神主にも見せたけど何ともわからなくて、県都の大学の先生に連絡した。
 気になるだろうから今から見にいってみないか」と言った。

じいさんと連れだっていってみると倉庫の鍵は開いてて、
おみこしや消防団のポンプ車がある奥に、
今朝の像が立てかけてあった。
像は貝や海藻なんかをこすりとってきれいになっていたが、
あらためて見るとやっぱり奇妙な形をしてる。
頭が大きいと思ったのは兜でのたくったような飾りがついてて、
その下には目が落ちくぼんで長い顔がある。
日本のものではないのかもしれないと思った。
胴の真ん中あたりがぐるりと何かでこすれたようにささくれだっている。
すごいものを見つけたのかもしれないと思ってちょっとワクワクした。

その夜、像を置いた倉庫から道をはさんだ向かいの家が火事になった。
せまい町なので消防車が走れば町の人はみんな外に出てくる。
気づくのが早かったせいか火事はボヤ程度で済んだけれど原因は不明。
検証では外から火が広がっているとのことだったので、
放火が疑われてるという話だった。
たまたま消防ポンプにも貯水池にも近かったんで他に延焼はなかった。

数日後に火事を出した家の奥さんと高校の同期だった母親が、
奇妙な話を聞いてきた。火事になった夜に洗濯物を居間に干していると、
コツコツと縁側のガラス戸を叩く音がする。
何かと思って見にいってみると、
暗闇の中からぬっと顔が出てきてサッシに外からはりついた。
顔は日本人には見えず、両目はぜんぶ白目だった。
その時に北国の厚いサッシごしなのに、
「さむい、さむい」という声が聞こえてきたそうだ。
あっと驚いて後ろに倒れたときに、
車庫の前から火の手が上がってるのが見え、
なんとか叫び声をあげて家人を呼び、119番通報をした。
消防にこの話をしたら、放火犯かもしれないからと、
警察もまじえていろいろ聞かれたそうだ。ただ奥さんは母親に、
あれはぜったい生きた人間じゃなかったと強調してたという。

それから数日して、初雪が降った日の夜に変な夢を見た。
腹のあたりがすごく痛くて、
下を見るとぐるぐる縄で柱か何かに縛られていて身動きがとれない。
疾走感があって潮風が風にあたるんで前を見ると荒れた海がある。
船の舳先に縛りつけられているんだとわかった。
両手は縛られていないんだけど、
神社でおがむように手を合わせた形になってて動かせない。
なんとかてのひらを離そうともがいているうちにも、
波がどんどん通り過ぎていく。背後で、
「ジーサイ、ジーサイ」と何人か叫んでいる太い声が聞こえる。

かなりの時間あばれていた気がするが、やっと手のひらがはずれて、
その拍子に目が覚めたと思った。
目を開けるとすぐ前に顔があった。
小さい電球しかつけてないのにはっきりと見えた。
顔はつるっとした坊主頭でぬれていて、大きな目はどっちも白目。
片方がぷちゅっとはじけて中から船虫が這い出してきた。
顔はだんだん下がって俺の肩のあたりにきて、
耳もとに口をちかずけて「・・・さむい、さむい」と言った。
そのときサイレンの音がして今度は本当に目が覚めた。
部屋を見回しても何もいなかった 夜中の3時過ぎだった。

自分の部屋から下に降りると、家族も起き出してきてた。
俺はさっきの夢の話をするまもなく、防寒をしていっしょに外に出た。
この前のボヤのときより騒然としていて、そうとう大事のような感じがした。
家族と気配がするほうに歩いて行くと通りにはぞろぞろ人が出ていて、
火事は神社だということを聞いた。
人の流れについていったら、高く煙が上がってるようだ。
さらに近づいたら火がちらっと見えたが、
それ以上は規制されていて進めなかった。

後日わかったところでは神社は全焼。
それからあの像を置いていた倉庫にも燃え移り、
近くの家にも被害があったが、幸いなことに死傷者はなかった。
倉庫は完全に焼けていてあの像も燃えてなくなってしまったのだと思う。
今回も放火の疑いが強いということで長い間捜査があったらしいけど、
いまだに犯人は捕まってないんだ。





海が好き3

2013.07.15 (Mon)
 海が好きで、ゆっくりまったりえんえんと数キロも遠泳するのが趣味です。
夏以外の季節はブラブラと砂浜を散歩すると、いろんなものが落ちていて興味深いです。

 この話のもとになっているのは北前船の持斎。
これは民間の呪者のことで、船の舳先に縛りつけられた状態で嵐の海を進んでいく、
凄絶な姿が描かれた絵馬が神社に奉納されて残っています。
この大もとが、もしかしたら『三国志・魏書・東夷伝・倭人の条』(魏志倭人伝)
に出てくる有名な邪馬台国の持衰なのかもしれません。
邪馬台国の持衰は古代の航海の無事を祈って、入浴せず髪を梳かさず爪を切らず、
肉類を食わず、女人を近づけずにひたすら慎んで前途の無事を祈る。
もし航海が成功したならば、持衰は奴隷や財物を得ることができるが、
道行きに苦難があった場合は殺されてしまう、と記されています。

『北前船』絵馬



どんたく上人

2013.07.15 (Mon)
わたしが子どもの頃のお話をします。

五月に入ったばかりの日暮れ時のことでした。
村の田んぼ中の一本道を「おほほほほォ~」
と絶叫をあげて走ってくるものがいます。
下の瀬の茂平です。肩に鍬をしょったままものすごい勢いです。
よく聞くと茂平はこんなことをがなり立てています。
「隣の仁吉さあの倅はじつはオラの子じゃああァ 
あんまり仁吉の嫁がかわゆいて オラ夜這いをかけたんじゃあああ~~~」

それをたまたま丘の畑で見ていた上郷のヲスエ婆さんが、
上からコロリコロリと前転をして下りてくると、
「嫁を殺したのはオラじゃあ~ 立ち居振るまいの一つ一つが憎くての~
毎日少しずつ飯に農薬を入れとったのよォ~」
絶叫しながら茂平の後について走ります。

そうして田んぼの堰で泥遊びをしていた、
八歳の竹公の脇を走り抜けていきます。すると竹公は手網を放りだし、
「ごめんよお~ 寝小便して弟と布団を取り替えたのはオラじゃ~ 
ゆるしてけろォ~」そう言って後に続いて走ります。

一人また一人とその走る列に村人が加わります。
そして口々に自分の秘めた悪事をがなり立てます。
一本松を過ぎる頃には総勢三〇人ほどにもなっていました。
中には村の駐在や村長の姿も見えます。

「殺したのはオラじゃ~」「憎くての~どうしようもなかったんじゃ~」
「みんなに瘡かきをうつしたのはオラじゃ~」
「吾作の水がめに糞尿を入れたのはオラじゃ~」
「次郎左の田んぼの堰を切りはなしたのはオラじゃ~」
「許してけろォ~ けろォ~ けろォ~」
全員のがなり声がまぜこぜになり、皆が皆大きな口を開けて天を向き、
村の一本道をよだれを流し息せききって走ります。

もう走る人は五〇人を越え、
村の一本道は行き止まりの旦那寺珍宝寺へと近づいています。
珍宝寺の前では、和尚のどんたく上人が一張羅の袈裟を着て待っていました。
そうして土煙をたてて走ってくる五〇数人の前に立つと、錫杖を振り上げ、
「喝!!」という大音声とともに地面に突き立てました。

するとそれまで疾駆していた人たちは、
皆憑きものが落ちたようにその場に立ち止まりました。
中には疲労のあまりくたくたと崩れ落ちる人もいます。
和尚は皆を見渡すと一言、「ふん、狸じゃよ、まーた化かされおってからに」
そうつぶやいて寺に戻って行きます。
その場の人たちは皆照れくさそうに笑い、
ゆっくりと歩いて自分の家へと帰っていきました。
そうして次の日からは村は何事もなかったように日常へと戻ったのです。

これはわたしが子どもの頃にあった本当の話です。
 

中休みにバカ話を

2013.07.15 (Mon)
 これは自分でもとても気に入っている話です。
筒井康隆の『きつね』という短編が頭にありました。

『ghost photography』



呪い代行アルバイト

2013.07.15 (Mon)
私は2年前まで「呪詛代行」のアルバイトをしていました。
所属していたのは、心霊DVDなどを作ったりしてるプロダクションで、
業界でもそれほど胡散臭くはないところです。他にもお守りや、
占いグッズの通販もしています。有名どころでもちろん今もあります。

私が担当していたのは、ヴードゥ系の呪いで、
依頼者から呪う相手の爪や髪の毛を送ってもらい、
ブードゥの泥人形に入れて呪文を唱えながら針で刺す、というものです。
これはその過程をきちんと写真に撮り、依頼者に送ります。
料金は3段階あってそれなりに高額ですが、
3ヶ月たって効果がなかった場合はきちんと返金します。
・・・返金率は7割くらいでしょうか。

それで、このバイトを始めてふた月ほどは何もなかったのですが、
三月目頃から全身にひどい発疹が出るようになりました。
発疹は病院で診断を受けましたが、内臓からきているものといわれました。
それからは私の身の回りで奇妙なことが続きました。
まず、飼い猫が私を避けるようになったのですが、
これはまあ元々可愛がってはいませんでした。
ある日突然、熱帯魚の水槽が濁って全滅する。庭の一本の木が立ち枯れる。
周囲にゴキブリや蠅などの虫が増える・・・
一度などは開いた本の間に大きなムカデが挟まっていたこともありました。
でもまあ、家は郊外にあるので、
偶然が続いてるだけかもしれないとも思っていました。

ところが、しばらくして父の様子がおかしくなりました。
父はまだ五十代で、固いところに勤めているサラリーマンなのですが、
夜中の3時過ぎに、パジャマのまま家の外に出て行くようになりました。
そして1時間ほどして帰ってくると、
泥まみれで爪の間などにびっしりと土が入り込んでいるのです。
しかも大きな音を立てて出て行くのに、
朝に聞いてみると本人はどこへも行っていない、と言うのです。

さらに、同居していた姉の3歳の女の子が、
寝ている間にお腹を自分でかきむしり、
しまいにはお腹が血だらけになって受診するということが起きました。
もちろんこれらはすべて偶然でかたずけられることでしょうが、
その頃から私は毎晩同じ夢を見るようになりました。
それは・・・自分は部屋のベッドに寝ていて、その周りをぐるっと
(ここが少し現実とは違って、ベッドは壁にくっついてる)
7人の人が取り囲んでいるのです。
まったく見たことのない人たちなのですが、
みな和服の寝巻きのようなものを着て、私を見下ろし、
何も言わずに首を振ったりしています。
この夢は2週間ほど続けて見ました。

これらの異変に心当たりがあるかといえば、
・・・私がやっている呪い代行のアルバイトしかありません。
友達にこの話をしたら、知り合いに占いをやっているという人がいて、
能力が高い?から見てもらったら、と言われ、ビルの一室で会いました。
そしたらやはり、呪詛のためにどんどん悪い気が集まってきていて、
特にヴードゥ系は、自分よりも、
自分の大切にしているものに災いが降りかかるのだそうです。
私を夢の中で見下ろしている7人は「みさき」といって、
私を守っている7人の先祖ではないか、とのことでした。

私は1週間後にバイトを辞め、すると嘘のようにおかしな出来事はおさまり、
発疹はその後2ヶ月くらいで治りました。
・・・その後お盆になり、家族で近くにある菩提寺に墓参りにいきました。
すると、奥まったところにある墓の周囲が、納骨する空間(何というか知らない)
が見えるほど周囲の土が掘り返されていました。
・・・これで終わりです。あまり怖くはなくてすみません。

『Sebastian's Voodoo 』






呪い系が好き

2013.07.15 (Mon)
 自分の書いたものを読み返してみると、呪いに関するものが多いのに気づきます。
そういう傾向が自分にあるのでしょう。
この話は最初の「青いテント」についで2番目に書いたものですが、
文章がちょっと「・・・」が多くこなれていない感じがします。
「七人みさき」は海に関するものと思う方がいるかもしれませんが、
調べてみるとそういうわけでもでもないようです。七人という数が重要のようです。

『ghost photography』



蛇田

2013.07.15 (Mon)
自分らの地域で実際にあった出来事なんだけど落ちも何もないんでここに書く。
自分の住んでるところは田舎の中核都市で、
田んぼはなくなってくけど家はあんまり建たず人口は増えも減りもせず、
郊外に大型店はできるものの、駅前の商店街は、
軒並みシャッターを閉めてるようなところだ。自分の家のまわりも田んぼだったんだが、
県立大学のキャンパスが分かれて移ってくるってんで、
そのあたりだけ急にバタバタと建物ができた。
学生めあてのアパートが多いんだが、その他にも飲食店とかいろいろだな。

で、田んぼの中に一枚だけ地元では「蛇田」と呼ばれる場所があって、
そこは田んぼの南の隅に竹と藁で作った簡単な祭壇が設けられてあった。
ちょうど盆送りの棚みたいな感じで、
月に何回かお供物があがっているのを見たことがある。
これがアルミホイルにのせた鶏肉なんかで、
そんなことをすればカラスが来るだろうと思うだろうが、
自分が見たかぎりでは荒らされてる様子はなかった。

興味深かったんで小学校の行き帰りに遠回りしてのぞいてみたこともあったが、
お供物は次の朝にはなくなってる。野犬が食べたような汚らしい様子はないから、
その家の人が夜にかたづけてるのかもしれない。
この話は家族にもしたことがあるけど、
遠くからムコにきた親父はまったく要領を得なくて、
母親のほうはその話をしたくないらしく、すぐに話題をそらしてたな。

その田んぼの持ち主は専業農家で、
かなり広大な耕地を持ってて人に貸したりもしてたんだけど、
その蛇田だけは当主の老夫婦が手植えで毎年稲を植えていた。
かなりの重労働なんだけど、ここだけは近所でもだれも手伝わず、
みなそうするのが当然みたいな雰囲気だった。
収穫したここの米も卸には出さず自分らで持ち帰っていたようだった。

ところがその老夫婦が相次いで亡くなって、
大学のキャンパス移転にかかって売りに出された。
で、その田んぼも含めた敷地にスーパーマーケットができることになった。
老夫婦の子どもは数人いたんだけども地元には残っていなくて、
家屋敷をすべて売って遺産分けしたという話だった。

ただ、この蛇田を売ったことについては地元での評判はよくなかった。
特に古くからの人たちは町内会でいろいろ批判も出てたらしい。
母親も、田んぼをやめるならせめて死に地にしておけばいいのに、
みたいなことを言ってた。例によって理由は教えてくれなかったけど、
蛇田は建物本体ではなく駐車場の一部になった。

できてみるとスーパーは噂されていた大資本のチェーンではなく、
県内の別の市からきた夫婦が自分らで経営する、
コンビニに毛が生えたような小さな店だった。
自分も何回か会ったけど、どちらも50代初めくらいで、
旦那さんの早期退職金と、あとは銀行からかなりの借金をして始めたらしい。
気さくでやる気にあふれた人たちだった・・・初めのうちは。

そのスーパーで開店セールをやるってんで母親に連れられて行ったんだが、
母親はその蛇田の駐車場に車を停めず、近くの道に路上駐車した。
「今どき何も起こらないだろうけど、近寄らないにこしたことはないから」と言って。
で、学生も来るようになって初めの一ヶ月はけっこう繁盛してたと思うけど、
すぐに事故が起きた。駐車場に停めてあった車が車両火災になったんだな。
タバコとかが原因ではなくて電装関係のトラブルらしい。
その車は全焼して隣の車にも影響があったが幸いケガ人はなかった。

そしてそれから2週間ばかりして深夜その駐車場で焼身自殺があって、
大学の男子学生だった。ガソリンをかぶって火をつけたんだ。
その夜は救急車や消防車のサイレンがやかましくて、
起きて野次馬をしにいった母親が事情を聞いてきた。
原因はノイローゼだとも失恋だともいろいろ言われてたんだけど結局は不明 。
ただスーパーの駐車場はその学生のアパートとはずいぶん離れたところにあって、
大学のほうが近いし、野球場や陸上、サッカーのグラウンドもある。

その自殺の現場が蛇田で、祭壇があったすぐ近く。自殺の跡は、
黒いシミになって後からその上にさらにアスファルトをかぶせて段になった。
で、当然ながら気味悪がってその近辺には誰も車を停めない。
この事件以来、スーパーの人の入りががくっと悪くなった。
最初は数人いたパートの店員も一人やめ、二人やめって感じで、
できて二ヶ月後には夫婦二人だけで切り盛りするようになった。
夜の仕入れとかもあるため、スーパーには旦那さんが泊まり込んでたけど、
開店の当時からするとげっそりと痩せて笑顔がなくなった。

その頃、自分は中学生になってたんだけど、
日曜日に友達が家に来るから菓子類を買おうとそのスーパーに入ってみたんだ。
そしたらレジに油気のない髪の奥さん、
そして生鮮食品売り場に旦那さんがいてガラス戸の奥で魚をさばいている。
商品は仕入れが少ないらしく開店時よりだいぶ減ってスカスカの状態で、
客は自分一人だけ。で、店の中は少ない商品が中央に集められて、
店の片側に段ボール箱が天井あたりまで積まれてる。
それはちょうど駐車場のほうが見える窓で、
まるでそちらの方を見たくないってふうに感じた。

自分がポテチとかを選んでると、ダン、ダンという音がする。
旦那さんが奥で魚を切ってる音なんだけど、やけに強くて力が入ってる。
それで生鮮品売り場の方に見に行ったんだけど、そこらはひどい嫌な臭いがする。
腐った臭いとはまた違って、何というか自分はタバコは吸わないんだけど、
吸い殻のいっぱい詰まったバケツに水を入れたときのような臭いがするんだ。
見れば並べある肉も魚もなんだか乾いてぱさぱさした感じで、
古いのかと思ってパックの賞味期限を見れば仕入れたばかりのものなんだな。

旦那さんがガラス越しに何かを切ってるのが見えるけど、
こっちの方を見もせず下を向いて包丁に力を込めてる。
切ってるのは魚だと思うがガラスの下でよく見えない。
ただその魚が動くのを片方の手で押さえてるように力をこめていて、
すると旦那さんが「あちっ」と叫んで押さえていたものが伸び上がって、
それが見間違いだと思うけど大きな蛇の頭に自分には思えた。

「いやだ!」と思って走ってレジにいき買った物を投げ出すようにレジに置くと、
奥さんが無愛想な顔で精算して、レシートを渡すときにじろっと自分の顔を見て、
「・・・あんた◯◯中学校の生徒だね、学校行ったら、
 他の生徒にうちで万引きしないように話してくれる。
 ・・・あんたらの校長に電話かけてもらちがあかないんだよ・・・」と、
ものすごく無愛想な声で言ってきた。

そんな感じでいやーな気分で店を出たんだけど、
飲み物を買い忘れたことに気づいてもう店にもどるのはいやだったから、
外の自販機でペットボトルを何本買った。
そのときに横にあったゴミ箱のビン・カンのほうだけ中身があふれてたから、
ペットボトルのほうをのぞいてみた。シマヘビだと思うけど、
うねうねと何匹もからみ合って中で球になっていた
あわてて後ろに飛び退いて、何で買い物するだけで、
こんなお化け屋敷のような目に遭わなければならんのか、と思いながら帰った。

夕食の時に母にその話をすると、
「やっぱり蛇田だから、そろそろ準備しとかないと」みたいなことを言った。
それから2週間してスーパーの夫妻が首を吊った。
それが駐車場のあの祭壇があった場所、焼身自殺の場所のすぐ近くに、
物干し台を持ち出して二人並んで。
ただ物干し台だから両足とも地面に引きずるような形になってたって噂だ。
つま先が地面をひっかいた跡がくろぐろとした蛇みたいになってたそうだ。

それからそのスーパーは後を継いで経営する人もなく、
取り壊されもせずに心霊スポット化したが、
事情を知ってる地元民は絶対に近寄らない、特に駐車場には。
大学生が肝試しにいくらしくていろいろよくない話が聞こえてくるが、
人が死んだりはまだしていないと思う。

蛇田についてはよくわからないけども、
田んぼの持ち主だった老夫婦の先祖が何か蛇と約束をして、
そこで獲れる米とお供えを捧げる約束があったという日本昔話みたいなのは聞いた。
だけどそれだけではなく聞かせてもらえないことがまだあるような感じがする。
これで終わり。書いてみると思ったより長文になった。
自分の文章がまずいせいだろうスマソ。   関連記事 『蛇田2』





呪い系が好き2

2013.07.15 (Mon)
 因縁話の呪い系です。自分が書いた中では長い方ですが、実はまだ続きがあります。

『ghost photography』



蛇田2

2013.07.15 (Mon)
上で「蛇田」の話を書いたもんだけど、
あれを書いてから自分でも妙に好奇心がわいてきて由来を調べてみた。
で、わかったことがあるんで投下する。
うちの母親は教えてくれないし近所でも聞きにくい感じがあったんで、
この隣町に住んでる中3のときの担任の先生を思い出して話を聞きに行った。
先生は男で社会科担当、数年前に教頭で退職して、
今は市史編纂室というとこで嘱託で仕事をしている。
地元の新聞社から郷土史の本も出してるんで、もしや何かわかるかと思ったんだ。

久しぶりに会った先生は自分から要件を聞いてかなり驚いていたが、
スーパーの件は耳にしてたらしく、
それほど嫌な顔もせず昔のことをいろいろと話してくれた。
自分の住んでる町内は旧道と呼ばれる一本道沿いの家が昔からの集落で、
その一帯はほぼ同族だったために今でも、ある同じ名字の家が並んでる。

旧道はずっといくとだんだん山に登るようになってて、
突き当たりが集落の氏神だった小さな神社。
その手前に蛇田の持ち主だった老夫婦の家があった
ただ老夫婦の家はその昔は分家で、そこは本家だったということだが、
本家に養子に入るという形で何代か前に移ってきたらしい。

その本家は名主格で、かなり広い田地があってそのほとんどを小作人に貸していた。
分家は蛇田のあった場所にあり旧道からはだいぶ離れてる。
で、分家はわずかな田もあったが家業は薬屋で、
蛇・・・たぶんマムシから取った強精剤のようなものを製造して、
行商の薬売りに卸していた。そして薬を絞った後の蛇の死骸を、
大きな穴に投げ込んでいたのが、蛇田の祭壇のあった場所。
それだけではなく集落の拝み屋のようなこともしていたという。
・・・メモを見ながら書いてるんだがわかりにくかったらスマン。
ここからは昔話だと思って聞いてくれ。

時代はたぶん江戸から明治に変わるあたりだと思う。
分家は食うに困らない暮らしではあったものの、親族の中では殺生をする
賤しい家業ということで、つき合いではいろいろと差別されていたらしい。
で、あるとき分家の10歳くらいの女の子が、
本家筋の子らといっしょに川に遊びに出かけて、
本家の長男坊がその子が川に流されたと大声で叫びながら村に走ってきた。

村人たちが行ってみると女の子の姿はなく、
何日か後に下流で裸で引っ掛かって見つかった。
男の子らは裸で川で泳いで、女の子数人が河原で石拾いをやってた。
それがいつのまにか川に入っていて、
見ている前で流されていったと子供たちは口をそろえて言う。

当時はもちろん巡査などもいない混乱期で、
それは不幸な事故としてけりがついたんだが、分家の主人は納得できなかった。
臆病な子で自分から川に入るなんてまず考えられないと思った。
それで他の子供らの様子をうかがっていると、
村で主人に会うと非常にばつの悪い顔をしてこそこそ逃げていく。
で、思いあまってある日同じ分家格の子を一人家に呼んで問い詰めたらしい。
すると女の子は男の子らに嫌がるのを、
無理矢理川に入らされて流されたのだと白状した。

それから分家の主人は夜になると蛇穴の前に祭壇を築いて、
なにやら儀式をする。すると親戚の子らが死んでいくんだな。
何も不自然な死に方ではなくて当時ありがちな急な病気で、
2年で3人目の男の子が死んだあたりで本家でも事情を察して掛け合いにきた。
分家の主人を威したりすかしたりして呪詛をやめさせようとするんだが、
主人の恨みは強くて村を叩き出してもやめそうもない。
官憲に突き出しても、子供らははっきり病死で何の証拠もないし、
文明開化の時期で呪詛の話など相手にされないだろう。
そうしてる間に今度は女の子が1人死んだ。

で、親戚中で話し合って分家の主人に流されて死んだ女の子の弟、
その子は5歳くらいだったんだが、これを本家で養子にもらって
跡取りにするからもうやめてくれと詫びを入れて泣きついた。
すると主人は硬い顔で「・・・わかった、そうしてもらおう」と言って引っ込んでいった。
次の朝、蛇穴の中で無数の蛇の死骸の上にうつぶせに顔を埋めるようにして、
死んでるのが見つかったという。

それから本家では分家の家屋を取り壊して田地にし薬作りもやめてしまったんだが、
分家の妻が蛇穴のあったところに新しく祭壇を築いて供養をする。
そのうちに男の子が本家の跡を継ぎ、
ずっと何代も老夫婦が亡くなるまでこの供養が続いていたということなんだ。
・・・やっと最後まで説明できた。

この話は明治の中頃に東京から偉い学者が来て、
聞き取り採集していったのが学術雑誌に残ってたんだが、
こんな陰惨な話はとうてい市史には載せられないから、と先生は話し、
蛇田の場所はとにかく土地が悪い、スーパーの顛末も、
人に学問を教えるものがこんなことを言ってはいかんのかもしれんが、
昔からの因縁に関係があるんだろう。お前も近づくなよと言ってくれた。
関連記事 『蛇田』





呪い系3

2013.07.15 (Mon)
 この後編は書かずもがなだった気もします。解決編なので整合性のある話にしなくてはならず、
前半の不条理な雰囲気をそこなってしまったかもしれません。

『ghost photography』



松ヶ山

2013.07.15 (Mon)
親父の三周忌も過ぎたんで、親父と山の話を書いてみるよ。
ぜんぶ実際にあったことだ。

同居していた親父が精密機械の会社を退職して2年目のことだった。
けっこうな退職金が出て年金もあるし、
これからは趣味の旅行三昧でもするのかと思っていた矢先に、
高校時代の友人から投資詐欺にあって、退職金の三分の二くらいを失ってしまった。
その友人は指名手配になったものの消息不明。
もともとタイ在住だったんで、もう日本にはいないだろう、
と警察では推測してるような口ぶりだった。

俺にしてみれば、まあ借金をこさえたわけではなく、
元々ある親父の金を失ったのだし、まったくあてにもしてなくて、
親父が好きに使ってくれればいいと思っていたんで、
それほどショックはなかったんだが、親父の落ち込みようはひどかった。
金額よりも、古くからの友人に裏切られたことのほうがこたえたんだろうと思う。

それからは何も手につかない様子で、家でぼうっとしてることが多くなった。
その親父が急に「山に行く」と言い出したんで嫌な感じがした。
旅行はするものの、それはパックの海外旅行がほとんどで、
山登りとかには縁がなかったからね。
俺の女房も「自殺でも考えてるんじゃないか」と言うし、
それで親父の予定の日がちょうど休みだったんで、俺もついていくと言ったら、
なんか複雑な顔をしたけれども、しばらく考えて「いい」と答えたんで、
俺の車で出かけることにした。山へ入るのは、
4時過ぎじゃないとだめだと言うんで、昼過ぎに出発した。

親父から聞いた目的地は隣県で、かなり時間がかかる。
3時間ほどでその町に着いたが、一言でいえばものすごい田舎。
その町外れまで来て、森の前の小さな神社のわきの空き地に車を停めた。
ちょっと意外に思ったのは、そこには十数台車が駐車されてて、
中には高級外車なんかもあったことだ。それから森に入って小径を歩き始めた。
この間中、親父は押し黙った気まずい雰囲気だったが、
それまでも山に行く目的とかは一切話してはくれなかったんで、
せめてと思って山の名前を聞いてみた。
すると親父は、「・・・松ヶ山」とぽつりと答えた。

小一時間ばかりで、細い山の登り口のようなところに出たが、
そこは注連縄のようなものが張ってあるし、
『私有林につき入山を禁ず』という木の立看板もあった。
看板の上のところに、鮮やかな赤字で梵字のようなものが書かれていた。
そのときは6月で4時過ぎていたけどまだ明るく、
山は森にさえぎられてわからなかったけど、
そんなに高いところではないという感じがあった。
登山道には古い木の板が埋められていて、傾斜もきつくはなく、登りやすかった。
60過ぎの親父でもそれほど息は乱れてない。

10分ほど登ってくと、前に人影が見えてきた。
どうやら女性の二人組で、しばらくして追いついたが、
高校の制服を着た女の子とその母親らしい女性だった。
母親のほうは洋装の喪服のようなものを着て、ヒールの高い靴で歩きにくそうだった。
親父が何も言わないままその二人を追い越したんで、
俺も体を傾けて「お先します」と小声で言って前に出た。

その二人もやはり押し黙ったまま後ろになってついてくる。
それから20分ほど登ると、ヤブを切り払ったようなちょっと広いところに出た。
まだ山頂ではない。そこの大きな木を回ると洞窟の入り口が見えた。
やはり御幣のついた注連縄が上から垂れ下がっている。
高さ3~4mくらいのくぼみで奥は相当深いようだ。

おぼろげながら洞窟の数十m奥に人の姿が見える。数人並んでいるみたいだ。
親父は「ここで待っててくれ」と言って、洞窟の中に入っていった。
俺が近くの朽ち木に腰掛けてタバコを吸ったりしていると、
先ほどの母子が追いついてきて中に入っていった。
それから40分ほど待ったが、その間に出てきたのが8人、
様々な年代の人たちで女性も2人いた。
どの人も白い布で包んだ箱を大事そうに持っていた。

そして親父が出てきたが、やっぱり白い布の箱のようなものを持っている。
出てくるなり俺の顔を見て、「・・・やっとひとつ済んだ」と言う。
俺が「その箱は何だい」と聞いても、答えてはくれなかった。
もうだいぶ暗くなっていたんで、急いで空き地まで戻って車に乗った。
まだ車は数台残っていた。親父は後部座席に乗って、
大事そうに箱を抱えて黙っていた。

家に帰ると、親父はそれから二階の隠居部屋にこもって、
食事も部屋まで持ってこさせるようになった。そのくせ夜はひんぱんに外出する。
しかも、それまでなかったんだが自分の部屋に鍵をかけるようになった。
夜の9時頃に家を出て0時過ぎに戻ってくる。
何をやってるかわからないが、靴や手が泥だらけになっていて、
いつも帰ってきては入念に手を洗っていた。

めずらしく親父が夕方出かけたとき、
部屋の鍵が開いていたんでちょっとのぞいてみた。
すると机の上がかたづけられていて、そこに仏教風でも神道風でもない、
祭壇がこさえられている。あえていえば古代風といった雰囲気で、
埴輪のようなものがある。それに囲まれてあの白包みの箱があり、
その前には10cmくらいの細い骨が積み上げられていた。

俺は近寄って、悪いとは思いながらも箱をそうっと取り上げてみると、
箱は意外に重く、なんだか生暖かい。
振ってみるが音はしない。粘土のようなものが詰まっている感触がある。
耳をあててみると、かすかにだが「とき、とき」というような音が聞こえてくる
そのとき下で親父が帰ってきた音がしたので、あわてて部屋を出た。

その夜、俺は家の中でタバコを吸わないように家族に言われてるんで、
外の通りでタバコを吸っていると、
耳もとで「お前、あの箱にさわっただろう」と、ぼそっとつぶやく声がして、
驚いて振り向くと親父が立っていて、
「いいよ、もう済んだから・・・これで全部終わったから」
そう言って、まだ60代なのにひどくよぼよぼした感じで家に戻っていった。

その2日後の新聞に、親父をだました友人が海外で惨殺されたという記事が出た。
詳しい記事ではなかったが、ナイフで刺されたというようなことが書いてあった。
その後警察も家に来たが、犯人はわからず金も戻ってはこなかった。

それから6年後に親父は肺炎で死んだが、
いよいよ危ないと医者に言われて病院についていたときに、
ふと意識が戻ったように目を開けた。そのとき俺は、
「親父、あの松ヶ山って何だったんだ」と、ずっと気になってたことを聞いた。
すると親父は、鼻に酸素の管を入れられた状態で少し笑い、
「松ヶ山じゃない、順番が違う・・・古い遺跡・・・後のことは墓場に持ってく」
途切れ途切れにそれだけ答えると、眠ったようになってしまった。
そしてそれから4日して息を引き取った。

話はこれで終わり。
それから気になって自分で調べたこともあるが、ちょっとここでは書けない。





呪い系4

2013.07.15 (Mon)
 これもかなりの呪い系で、白い箱がキーになってるんですが、
関連して書いた話を載せます。

『ghost photography』
St. Marys Ghost


リターン・ライダー

2013.07.16 (Tue)
奇妙な体験をしたんで書いてみるけど、ほとんど怖くないからここに投稿するわ。

俺はずっとやめてたバイクを買ってまた乗り出した。いわゆるリターンライダーってやつだ。
これで通勤はできないが乗りたくてしかたないんで、
毎日仕事が終わってから1~2時間ばかり近くの峠で慣らしをしてたんだよ。
そこは別に有名な走り屋のスポットとかじゃなくて、何でもないただの国道。
しかも俺は仕事終わって飯食ってから走るんで、だいたい9~11時頃になる。
その時間帯になると田舎だから通勤の車もほとんどなくなり、
1時間で10数台くらいしか対向車がいないんで、けっこう思い切って走ることができる。

んで1ヶ月くらい前のことだけど、走っていたら大きなカーブの先に赤い光が見える。
「あ、ヤベ警察か!」と思ったけど、光はそんなに強くないし点滅もしていない。
ぼんやりとにじむような感じなんだ。
そのとき思い出したんだが、そこは数年前に事故があった場所で、
たしかセンターラインを越えて突っ込んできたトラックに車が接触して飛ばされ、
崖下に落ちて死者が出てるはず。
原因はトラックの居眠りだったか酒酔いだったか。

何で覚えてるかというと、その頃は車でたまに通ったりしてたが、
事故後一ヶ月くらいの間、新しくなったガードレールのそばに花束が供えられていたのを見たからだ。
それを思い出してちょっと怖くなった。
赤く光っているのはちょうどそのあたりだし。
ただ赤い光といっても何かが燃えているような感じではなく、
提灯とか灯ろうのようにぼやっとしている。

だんだん近づいてきたが、カーブを曲がり終えたとたん赤い色は見えなくなった。
んでガードレールの前には、数年前と同じところに花ともう一つ何かが置いてある。
光のことが気になっていたんで、バイクを近づけて停める。
よく見ると大きな花束なんだけど菊とかお盆に供えるような種類で、白い包み紙に字が見える。
そこは事故があった後近くに街灯が増設されていて明るいんで読んでみると、
『娘の三周忌に』と筆ペンかなんかで書いてる。
それを見て「ああそうか気の毒に・・・」と納得した。

花束といっしょに置いてあったのものは、ビニール袋で何重にも包まれててよくわからないんだけど、
15㎝四方くらいの四角い白い箱のようなものだ。
娘さんへの供え物か何かかなと思って見ていたら、
白の上に白が重なっててはっきりしないが、箱とビニールの間に何かが詰まってる。
拾い上げて見ようかとも思ったけど、お供え物に触るのが気味悪くてかがんで顔を近づけて見たら・・・
何かの短い骨のようなもの。これが箱の両脇にたくさん詰まって押しつけられている。

「うわー何だこれ」と思って、すこし後ずさりしたときに、
ヘルメットをかぶった額の右上あたりを思いっきり殴られたような衝撃を感じて、思わずうずくまった。
そんときは飛ばされてきた石でも当たったのかと思ったけど、何かにぶつかったわけじゃない。
その後目の前がぐらぐらするような強烈な頭痛が襲ってきて、
もっと先まで走るはずだったのが予定を変更してそこで引き返した。
帰り際にだいぶ離れてからちらっと後ろを振り返ると、
カーブで花束は見えないけど、
そのガードレール一帯の上のほうが半径10mくらいに大きく赤く光っていた。

家に帰って額を見ても、もちろん傷がついたりこぶがあるわけじゃない。
ずっと頭が痛く吐き気もしたんで病院にいこうかと考えたけど、一晩寝たらきれいに直った。
それから二日後に同じ場所に走りにいってみたんだが、花束も箱のようなものも何もなくなっていた。
光も見えないし頭が痛くなることもなかった。
その後もおかしなことはない・・・書いてみるとぜんぜん怖くないなスマソ。

『Eva・Carrière』舞台




前の話とちょっとだけ関係ある

2013.07.16 (Tue)
 これは前の「松ガ山」の話と白い箱のつながり。

『ghost photography;』



解体工事

2013.07.16 (Tue)
しばらく前に解体の仕事をしていて奇妙なことがあったんで書いてみるよ。
うちらは建設会社だけど、その筋ともつながっていてある程度ヤバイ仕事も受ける。
これもそんな方面からあった話で、要は古い一軒家の解体だ。
ここは地方都市なんだが、その現場はある会社の社宅のように
使われていたということで、2~3年で住人が入れ替わっていたらしい。
元が蔵だったのを改築したもので、平屋でキッチンと和室二間しかなく、
家具類もいっさい事前に運び出しておくということだったんで、
簡単な仕事だと思ってた。

現場を見ると重機を入れるまでもなさそうだったが、
費用はいくらかかってもかまわないということだったんで、
実際これはおいしい仕事だ。ところが条件がついてたんだな。
それは、内装をはがしたら外装に移る前に床下をさらってくれという作業手順の話、
もう一つ、外部の人間を一人入れてくれということだった。
あとはその人間にあれこれ尋ねたりしないで好きなようにやらせることと、
現場で見たことは口外しないこと。

作業日になって、依頼主の会社の立会人といっしょに来たのは、
30代くらいのスーツの男だった。ひどく華奢な体格をしていて、
色白だったんで工事関係者ではなさそうだったが、その筋の人間にも見えない。
男はワゴン車から大きなボストンバックを抱えて現場に入ってきて、
ヘルメットの着用を断った。まず数人の手壊しで内装の木部と窓を外して
外で分別する。それからしっくいの壁は最後に重機でやることにして、
言われたとおり畳をはがして床下を解体してしまうことにした。

男はだまってじゃまにならないよう玄関で見ていたが、
4畳半を終えて6畳間にとりかかろうとしたときにボストンバックを開けて、
マスクと四合瓶に入った白濁した液体、金箔を貼ったと思える、
真ん中に持ち手があって両側が尖った奇妙な道具を取り出した。
バールで床板をはがしていったが、その部屋だけかなり厚い板を使っていて、
しかも他の場所より新しい。そのとき部屋の隅のあたりをはがしていた
若い作業員が、「あっ!何だこれっ」と声を上げた。
すると男がさっと近づいていって、下をのぞき込んだ。
自分もいってみたが、土台の土に頭蓋骨が見える。
ただし人間のではなくて、動物のもののようだ。

さらに動物の口の前には白い小皿、それから気味の悪いことに、
頭蓋骨の30cm先のあたりに、
額に入った白黒写真が下のほうを土に埋めるようにして立てかけてあった。
男はマスクをして革靴のまま床下に降りてその額を回収し、
写っているほうを腹におしつけて上がってきた。
すぐにボストンバックに入れてしまったんでよくは見えなかったが、
ちらと目に映ったかぎりでは、時代がかった和服の女性の全身像のようだった。

額の裏には墨で『大正十一年夏』と書かれていた。男はもう一度床下に降り、
頭蓋骨の前の小皿に瓶の液体を注ぎ込むとマスクを外し、
金色の道具をポケットに入れ、両手の指を組み合わせ、
聞き取れないくらい低い声で呪文のようなものを唱えだした。

それは20分ほども続いたんだが、自分らはあっけにとられたように
黙って見ていただけだ。男は最後にフーッという感じで強く息を吐くと、
ポケットに入れていた道具の尖った先で頭蓋骨の天辺を突いた。
長い年月でかなりもろくなっていたらしく、
卵の殻のように簡単に破れて穴が開いた。男は口を開いて、
「これで私の領分は終了ですが、お願いがあります。
 この頭蓋骨の下に体の骨があるはずです。多少壊れてもかまいませんが、
 なるべく残さないように掘り出してください。
 でないとこの場所が善用できなくなります」と、不可解なことを言った。

自分らはシャベルを使って丁寧にまわりから掘ってみたが、
驚いたことに頭だけではなく全身が埋められていたんだな。
おそらく1m以上の動物の骨がバラバラになりながら一頭分出てきた。
犬かと思ったが正確なところはわからない。
男が出てきた骨をざっと土をほろって、皿と一緒にバックから出した
黒いゴミ袋に入れたからだ。それが終わると男は、
「もう二つばかりお願いがあります。骨の真上にあたる天井裏に、
 小さな香炉があるはずです。それはいらないのでそちらで処分してください。
 それから今車から炭を出しますので、地ならしのときに、
 骨のあった場所に埋めてください。お願いします。私はこれで戻りますから」
と、事務的に言った。

それで男は帰っていったんで、
あとは屋根裏の木部とトタンをはがして重機を使って一気に仕上げる。
屋根裏からは男の言った通り、ごく普通の形の香炉が出てきたんだが、
材質が緑の石製で、素人でよくわからないがヒスイというものじゃないかと思えた。
高価な品ならもらっちまおうかと一瞬思ったが、
一連のことを考えると気味悪いんで廃棄処分にまわした。
これで終わりだが、後日談が二つある。

一つは、この仕事のことがあとあとまで気になっていたんで、
ホントはしないほうがいいんだろうけどいろいろと探った。
わかったのは、その家は確かに会社の社宅だったんだが、
それは誰でも名前を知ってる大会社で、その町には社員寮が別にある。
解体した家には主に家族連れの若手社員が入っていたそうだが、
2~3年の赴任期間に、その社員自身か家族の誰かが亡くなっているということ。
もちろん犯罪性のない病気や事故で、自殺もない。
小さな子どもがトラックに轢かれた事故もあったようだ。

もう一つは、この3年後、参院選挙があってある保守候補の選挙事務所に
出向いたとき、ばったり解体作業のときに来ていた男と出会ったこと。
男はどうやら候補の地元秘書をやっているようで、
自分の顔をみるとちょっと驚いたような表情をしてから、ニヤッと笑い、
「へええ、この間はどうも。ご健在でしたか、これは何よりです。
 あの香炉は処分なさったんですね。いやあ誠実に仕事をするのが何よりで。
 おかしなことを考えてたらお命がなかったかもしれませんよ」
男は前とは違う屈託のない声でそう言うと、
「投票よろしくお願いします」とつけ加えた。
どうやら世の中には知ってはいけない領域があるみたいだ。
これで終わり、文章が下手でもうしわけないね。





謎を投げ出す

2013.07.16 (Tue)
 ここからは最終的に謎が残る不可解な話を載せていきます。
読む人の想像力に訴えるような話です。ただこれには自分の中でしっかり結末がついているものと、
単に謎だけ放り出すものとがあります。
「解体工事」は結末がついているほうですね。つまりストーリーがすべて頭の中でできていて、
書くのはその一部分というような。

『ghost photography』



深夜の病院

2013.07.16 (Tue)
俺が若い頃の話なんだけど、腰椎の手術のために大学病院の整形外科に3ヶ月ほど入院した。
検査をして手術し、寝たきりの状態が1ヶ月くらいあって、
回復が進むにつれて、喫煙者だった俺は煙草が吸いたくてしょうがなかった。
やっと固定の期間が過ぎてリハビリをするようになると、
病院のロビーに行ってなんとか煙草を吸うことができるようになった。
当時は今のように院内全部禁煙というわけではなかったんだな。

で、入院が長引くにつれて夜眠れなくなった。
それで、6人部屋だったけど毎夜遅くまでイヤホーンでラジオの深夜放送を聞いていた。
その夜もそうしていて、2時過ぎ頃一服してから寝ようと思って病室をそっと抜け出した。
整形はそうでもないが、大きな病院なので内科の階では毎日のように死者が出ているようだったけど、
病院の夜は看護室は明かりがついていて宿直の医師や看護師さんがいるし、
俺のように眠れずに病院内をうろついている入院患者もけっこういて、怖いと思ったことはなかった。

エレベーターで1階のロービーまで降りて、喫煙所で煙草を吸っていると救急の待合室が見える。
指定病院なので、こんな時間でも救急の待合室には赤ちゃんを抱いた若い母親などが十人くらいいる。
煙草を吸いおえ、自動販売機で缶コーヒーを買って、
病室に戻ろうとしてエレベーターまでの廊下を歩いていると、
ふっと俺の前2mくらいのところに車いすの婆さんがいる。
間違いなく何もなかったのに突然目の前に現れたという感じ。
縮れた白髪の薄くなった頭がゆらゆらと前後に揺れている。

こんな婆さんは普通は介護の人がついているもんだけど、一人で車いすに乗って進んでいる。
しかも車いすのタイヤに手が置かれていない。
その後ろ姿を見ていると背筋がぞくぞくっとして、これはこの世の人じゃないんじゃないかと思った。
俺はその場に立ちどまって、車いすのものがいくのをやりすごそうとした。
そしたら車いすも俺の様子がわかるかのようにぴたりと止まって、何ともいやーな空気が流れた。
俺は後ずさろうとしたけど体が硬直したように動かない。
前後に小刻みに動いていた婆さんの頭の揺れが大きくなって、俺のほうを向いてがくんと倒れた。
首の骨が折れたのでなければありえないような動きで、俺はもろに婆さんの顔を見てしまった。
しわだらけの顔は真っ白で、両目のまぶたが赤い。

逆さまの頭で俺のほうを見すえて、婆さんは「・・・連れていっておくれよ・・・」と言った。
俺はうわっと思ったがやっぱり体が動かない。
固まっていたら、一人の女の人がエレベーターを出てきびきびした足どりでこっちに歩いてくる。
30代前半くらいで、白衣は着ているもののこの病院の看護師の制服ではないので女医さんかもしれない。
その人は車いすの正面にくると婆さんの肩に手を置いて、もう片方の手でゆっくり婆さんの頭を起こした。
そして俺のほうを見て目配せをすると、「大丈夫ですよ」と囁いた。
俺に言ったのか婆さんに言ったのかわからなかった。

すると婆さんが動物のような速い動きでその人の腕に噛みついた。
その人はちょっと驚いたような顔をしたものの、
噛みつかれた腕はそのままにして、もう一方の手で白衣のポケットからすごく長い数珠を取り出して、
婆さんの頭の上で何度も振った。
すると婆さんの姿が何というかぼんやり薄くなったように見えた。
女の人は噛まれた腕をそっとはずすと、俺に向かって「病室に戻りなさい、
こんな時間に出歩いてたらだめでしょう」
強い口調で言うと、くったりと頭を垂れた婆さんの車いすを押して廊下をまっすぐ進んでいった。
俺はエレベーターで病室まで戻って今見たものは何だろうと考えていたが、いつの間にか眠ってしまった。

次の朝、この病室担当の若い看護師さんが体温を計りにきたときにこの話をすると、
「・・・珍しいものを見たわね、それは○○さんでしょう。この病院に夜だけ来てもらってる方なの。
 ・・・他の患者さんにはこの話はしないでね」と言われた。
それ以上の詳しい話はしてくれなかった。

それ以後、退院するまで夜中に出歩くのはやめた。
それにしても、幽霊だとしても車いすも幽霊になるものなのか今だに不思議。


謎を投げ出す2

2013.07.16 (Tue)
 これは簡単に言えば大病院に深夜だけ来て霊を祓う仕事をしている人がいるというお話。

『ghost photography』



奇妙な男

2013.07.16 (Tue)
この間、居酒屋で会社の同僚数人と飲んでたんだよ。
掘りごたつ式になった座敷があって、衝立で他のグループと仕切られているような所だ。
時間は9時頃で、それまで生ビールを大ジョッキ3杯に、
あと酎ハイをかなり飲んでたから、もしかしたら酔っぱらって
幻覚を見たのかもしれない。そこはあらかじめ断っておく。

トイレに行こうとして通路で靴をはいたときに、
俺らの右隣で衝立越しに飲んでたやつらの様子がたまたま目に入ったんだが、
なんか違和感がある。何だろうと思ってよく目をこらしてみたら、
テーブルの端に一人だけ色の濃い人がいて奇妙なことをやっている。
濃い人、というのがうまく説明できないんだが、そいつだけ、
まわりの人や調度類よりくっきりはっきりしてて浮かび上がって見えるんだな。
画像の加工をやったことがある人ならわかるかもしれないけど、
その人物の輪郭を指定して彩度を上げ、シャープをかけたような具合。

そいつはたぶん50代くらいの男性で、染めたと思われる黒々した髪を
真ん中分けして、最近はまったく見なくなった黒縁のメガネをかけている。
服装はかなりくたびれて皺のよった濃紺のスーツ上下で、
これも今時見ない黒の腕ぬきを両腕につけてるんだ。
バラエティのギャグシーンに出てくる田舎の分校の先生、
といえば合点がいくだろうか。それから奇妙なことというのは、
左のてのひらを広げて上に向け、その上に懐紙が載ってて、
さらにその上で何か妙なものが動いている。

15cmくらいの長さのミミズ、それも白っぽいカブトムシの幼虫のような
色のミミズが数匹のたくっていて、それを右手の箸でつまんでは、
隣の40過ぎくらいの茶色の背広のカッパハゲのサラリーマンの襟首から、
背中に落としている。そんなことをされたらたまらないと思うが、
サラリーマンはされるがままで、
その男の行為自体気がついていないように見える。

俺は1分ばかりもその様子をあっけにとられて見ていたが、
そのうち虫を入れている男と目が合った。
すると男は箸を置いて人差し指を口の前にあて、
俺に向かって子供のやる『しーっ』のポーズをしてみせた。
それでばつが悪くなって俺はトイレに行ったが、戻ってくると男はいなくなっていた。
そのグループのテーブルを見ても、男のいた場所に料理の皿はなかったから、
マジにさっきのをほんとうに見たのか自分でも怪しくなってきた。

俺らはその後二次会でカラオケに行き、
それでも終電に間に合うように11時過ぎには解散し、
俺は皆と別れて最寄りの駅に行った。
この界隈は飲み屋が多いんで、こんな時間でも乗客はそこそこいたが、
電車を待ってると、ホームのすぐ近くで騒ぎがあった。

サラリーマンらしい男3人がもつれ合っているが、
どうやら2人で1人の上着を引っ張ってるようだ。
よく見ると、さっき居酒屋で隣にいたグループに似ている。
上着を引っ張られているのは、変な男に背中に虫を入れられていた男じゃないか
・・・ハゲ具合がそっくり・・・と思っているうちに快速がホームに走り込んできて、
上着を引っ張られていた男は全身の力をこめて両腕をぶんまわし、
2人の男を振り切ってその電車に飛び込んだ。

『月明かりの冬景色』エルンスト・キルヒナー






謎を投げ出す3

2013.07.16 (Tue)
 これは出てくる奇妙な男は死神です。ちょっと変わった死神像を描いてみたかったのです。

 頭にあったのは中国の伝承にある「縊鬼」で、冥界の人口が定まっているため、
住人が転生してこの世に戻るためには、自分の代わりの誰かを引っ張ってこなくてはならず、
積極的に自殺や事故死を幇助することで自分の代わりを求めることを「鬼求代」というらしいです。
「縊鬼」は首を吊って死んだ人の霊で、
この世に現れては自分と同じように誰かの首をくくらせようとする。

 日本でもこんな話が伝わっています。(鈴木桃野『反古のうらがき』)
『ある組頭が江戸の麹町で酒宴を開き、ある同心も客の1人として来るはずだったが、
なかなか現れない。やがて現れた同心は「急用があるので断りに来た」と言って帰ろうとした。
組頭が訳を問いただすと「首をくくる約束をした」と言い、しきりに帰ろうとした。
組頭はその同心が乱心したと見て、酒を飲ませて引き止めたところ、やがて同心は落ち着いた。

やがて、喰違御門で首吊り自殺があったという報せが届いた。
組頭は、縊鬼がこの同心を殺そうとしたものの諦め、別の者に取り憑いた。
これで彼に憑いた縊鬼は離れたと考え、再度事情を問うた。
すると同心は、夢の中のようなぼんやりした状態だったのでよく覚えていないがと言いつつ、
経緯を話した。
それによれば、喰違御門のもとまで彼がやって来たところ、
何者かが「首をくくれ」と言った。なぜか彼は拒否できない気持ちになり
「組頭のもとへ言って断ってからにしたい」と答えると、
相手は「早く断って来い」と送り出したのだという。

事情を知った組頭が「今でも首をくくりたいのか」と尋ねると、
同心は首をくくるそぶりをしながら「あなおそろしやおそろしや」と答えたという。』


 それから落語の『死神』も子どもの頃にテレビで見て、強い印象がありました。
たしか圓生だったと思います。
寿命を表すろうそくがたくさん立っている洞窟で、今にも消えそうな自分の命のろうそくの火を
他に継ぎ足そうとするが、死神が「消えるよ(けえるよ 江戸弁)、・・・消えたぁ」と言って、
演者ががくりと前にのめるあれです。

『Hidden Camera Death』



妹の帰り道

2013.07.16 (Tue)
母に聞いた話なので、細部がうろ覚えだったりするかもしれない。
ただし作り話ではないと思う。母は冗談は好きだがこんな嘘をつく意味がない。

あれは6年前のことで、自分は小4だった。
妹は保育園の年中組で、毎日4時に母が迎えに行く。
その日は真冬で、こちらの地方は雪はほとんど降らないが、かなり寒い日だった。
保育園は家から歩いて10分くらいと近いので、
午前中だけパートをやってた母は、毎日歩いて迎えに行っていた。
その日もいつもと変わらず、保母さんから妹をもらい受け、
住宅街から外れた田んぼの中の近道を、妹の手を引いて歩いてきたということだ。

母の話では、その道すがら妹が変なことを言い続けていたらしい。
「ねえねえお母さん。暗い道があったら、まっすぐ行くとどうなるの?」
「赤い車があって、女の人が下を見てるの。すると男の人が出てきて、運ぼうって言うの」
「女の人もこっちに来て、暗い道を一緒にに行こうって言う」
それで、道すがらの田んぼの中に、農具を置いてある掘っ立て小屋があるのを見て、
「あそこに入ろう」と言って、母の手を引っ張ってきかなかったらしい。
鍵はないだろうけど、他の家の小屋だし、田んぼの土に足を踏み入れるのは嫌だったので、
母は無理に手を引いて家まで連れてきたという。
今は違うけど、当時は妹はおとなしくてほとんどしゃべらないような子だったので、
それも変だと思ったそうだ。
そんなこんなで、近いのにその日は家まで30分ほどかかってしまった。

それで家の玄関先まで来ると、妹は手を離して走り出し、
どたどたと音をたてて保育園のお道具を持ったまま二階へ駆け上がり、
当時は俺と共用だった子供部屋へ入ったらしい。
普段はそんなことをする子ではないし、手を洗わせようと思って妹の後を追いかけ二階へ上がったが、
二部屋しかない二階にはどこを探しても妹の姿はなかったそうだ。
ただ、自分たちの部屋に入ると、ちょうど砥石で包丁をといでいる時と似た臭いが強くしたという。

換気がてら窓を開けて屋根の上を見たりしているところで母の携帯が鳴り、
保育園から『まだお迎えに来られていませんが、遅くなるのですか』という問い合わせの電話だった。
母はあっけにとられて、「さっき伺ったと思いますが」と言っても、
『今日は一度もお見えになっていませんよ』と、向こうも驚いた様子だった。

そのあたりで自分が学校からあがってっきて、母と一緒に保育園に行った。
道々、母にこの話を聞かせられたが、自分にはちんぷんかんぷんだった。
保育園ではいつもの妹がべそをかいて待っていた。それから一週間後、
母が妹のベッドのシーツを取り替えようとして敷布団をあげたら、
ちょうど寝た状態の妹のあごがくるあたりのマットレスに、小さな赤黒い手の跡がついていたという。
母は思わず大声で叫んで、あわててぞうきんで拭き取ったが、
そのときに包丁をとぐ臭いがまたしたそうだ。
だから自分はその手の跡も見ていない。


首つり

2013.07.16 (Tue)
俺の家は地方の大きな大学の近くにあって、近所にアパートが多い。家の右横と斜め前がアパートだ。

2年ほど前の話なんだけど、
俺が夕方5時頃、高校の帰り道にその家の斜め前のアパートの前を通りかかったときに、
2階の一番俺の家に近い部屋の窓とカーテンが開き、電気がついていているのに気づいた。
そこは空き部屋だと思っていたので、よく見るとベランダごしに中の様子がわかる。
といっても部屋の上部なんだけど、なんだか首をつってる人がいるように見える。

まさかと思って何度も角度を変えて見直したんだけど、
ロープがはっきり見えるし、その下に人の頭のようなものがある。
顔の表情はわからないけど、全体として首つりとしか思えない。
それで家に戻って、早く帰っていた親父に相談して一緒に見にいってもらったら、
やっぱり首つりじゃないか、ということで警察に連絡した。
その後に親父がアパートの大家にも電話をかけた。家の前で待っていたらパトカーと救急車が来て、
警官が二人俺らのほうに出てきてその首つりを確認した。
「たしかにそう見えるね」と警官の一人が言って、救急隊員らと一同でアパートに入っていった。
そのすぐ後にミニバンが来て、大家さんらしい人がアパートに入っていった。
そして警官が部屋に入ったらしく、カーテンが引かれ窓が閉められて中の様子は見えなくなった。

俺と親父はアパートの前で待っていたら、
15分くらい後、恐縮した様子の大家さんと警官、救急隊員がそのまま出てきた。
大家さんは「すみません、すみません」という感じで警官の一人に謝っている。救急車は帰って行った。
さっきの警官が俺らを見つけて近づいてきて、
「ご苦労さんでした、心配をかけましたね。いや自殺ではありませんでした」と言う。
親父が「そうですか、そう見えたんですがすみませんでしたね」と言うと、
「いや、それは無理もないです。
実際に精巧なマネキンがつるしてありましたから。しかも全身に御札を貼りつけた。
あそこは空部屋で、大家がつるしたようです」

俺が「どうしてそんなことを」と聞くと、
警官二人は顔を見合わせていたが、年配の一人が、
「いや、このままでは不思議でしょうね。
大家が言うには、今日は本物の首つり幽霊が出る日なので、
それが出る前にニセモノを吊しておいた、ということなんです」
俺と親父は「??」となった。
警官も困惑した顔でこう言った。
「なんでも、今日は昔あの部屋で自殺した人の命日で、毎年幽霊が出たと言うんです。
それで、マネキンを前もってつるすようにしたら出なくなったってことだそうです。・・・どう思います」

その後に大家さんはアパートをたたんで、他県にいる娘さんのとこに行って、
アパートは今はコンビニになってる。


もののべのはらえ

2013.07.16 (Tue)
つい先週あったことなんだけどそれほど怖い話でもないからここに書くよ。

その日俺は仕事の帰りで駅前で少し買い物をした。時間は7時過ぎだった。
いつもは駅の乗り場からバスに乗るんだけど、
店に寄ったために2つほど離れた停留所でバスを待ってた。
すると近くの街路樹の手が届くくらいの高さに、
折りたたんだ白い紙があるのが目にとまって、
濡れてもおらず、ごく最近つけたように見えたんで何気なく手に取ってみた。

たんに枝にはさんであっただけみたいですぐに取れたけど、
和紙がおみくじみたいに細長くたたんである。
開いてみると「布留部由良ト由良加之奉ル事ノ由縁」と細い毛筆で書かかれている。
その字を見たとたん、頭の後ろでいきなり銅鑼を叩かれたような衝撃があったけど、
音がしたわけじゃない。それからこの内容はそのときに暗記して覚えたんじゃなくて、
検索して調べたんだが合ってるかは自信ない。
当然そのときは俺には意味不明の字のられつとしか思えず、
やっぱりおみくじのたぐいかと考えて元の場所に戻しておいた。

しばらくしてバスが来たんで乗り込んだんだけど、乗り込んですぐにあれっと思った。
ほぼ毎日このバスを利用するんだが、
いつもは混んでて座れないときもあるくらいなのに、乗客がまばらにしかいない。
しかもバス停には俺の他にも待ってた人が何人かいたのに、
乗り込んだのは自分だけ。てっきり間違えて乗ったんだと思って
行先の案内を見たんだけど、ふだんのバスだった。
ゆっくりできるなら飲み物でも買ってくりゃよかったと思いながら近くに座った。

するとすぐ目が変なのに気づいた。座った自分の体がぶれて二重に見えるんだな。
うまく言えないんだけど輪郭の線が二重になって、
自分の膝が四つあるようになって見える。
仕事で何時間もパソコンに細かい数字を打ち込んでるんで、
疲れ目かと思って目をつむって指先でかるくまぶたを揉んだ。
これは病院に行くべきかと思ったが、奇妙なことに気がついた。
ぶれて見えるのは自分の体だけで、
バスの座席やなんか自分の体以外はなんでもないんだ。

そのとき後ろの座席から「おじさん体が二重に見えるんでしょ。
それ重なってるからだよ。」と、子どもの声が聞こえた。
振り返ってのぞいてみると、黒い長いグランドコートを着た
小学校高学年くらいの男の子がいる。
スポーツ刈りで首がひょろっと長く両手で四角い箱のようなものを持ってて、
それには白い布がかけてある。

「えー、重なってるってどういうことだい?」と聞くと、
「さっき木の枝の紙を見たでしょ、あれもののべのはらえだから。
 何であんな粗雑な始末をするんだろうね。」と、その年頃らしくない口調で言うんで、
「もののべのはらえってどういうこと、何なのあの紙?」
と、さらに尋ねると、子どもは「説明はできないけど、このままだと分離しちゃうよ。
 関係ない人には迷惑かけられないから、
 なんとか元にもどしてあげる。そんなに難しくもないよ。」
そういう言葉の一つ一つが妙に重みがあって、さからえない気分になるような声なんだ。
その後目を開けてみると、まだ目の前の手が二重に見える。

「おじさんさっき店で買ったのは何?おみやげ?」と聞いてくるんで、
「そうだよ。息子に頼まれてたゲームのソフトなんだ。
 でもどうして買い物をしたことを知ってるんだ?」
「なんとなく・・・それこれと交換しようよ。そうすれば元に戻れると思う。
 そうしてよ!」その声はもう催眠術のように逆らえなくて、
俺はバッグからソフトの包みを出してその子に渡した。
男の子は座席に立ち上がったようで、上からそうっと箱を渡してよこす。

「おじさんこの箱ね、あした一日神棚か仏壇に供えておいて。
 明日の昼過ぎまでぜったい中を見ちゃだめだから。
 それ過ぎたら中身は捨ててもかまわないよ。」と言う。
箱を手にとってさわってみると、軽いけどでこぼこした固い感じがある。
子どもは「これで交換は済んだよ、契約だから守ってね。
 ・・・まだいつも降りる場所じゃないんだろうけど
 ここで降りて。」そう言ってブザーを押した。
わけがわからないままにバスを降りると四つくらい手前の停留所だった。
バスを見上げると、がらがらだったはずなのにぎっしり人が乗ってる感じがする。
男の子が窓から手を振ってるのが見えた。

気がつくと目はもう治っていた。家に着いてすぐ箱を神棚に置いてから、
「もののべのはらえ」を検索して調べたら「物部の祓」のことだとわかった。
その方面には詳しくないんで間違ってるかもしれないけど、
どうもおみくじに書いてあったのはその中の「布留部由良ト由良加之奉ル事ノ由縁」
という部分によく似ていたように思う。
翌日は気味が悪かったんで駅からそのままバスに乗って家に帰り、
神棚から箱をおろして白い布を取ってみた。
中から出てきたのは竹製の目の詰んだ虫かごで、
中には干からびた蝉の死骸が一つ転がってた。話はこれだけ、
わけがわからなくてスマン。

* 「もののべのはらえ」は古代氏族である物部氏の祖神、
饒速日(ニギハヤヒ)命が伝えたとされる十種の神宝を意識して書いてみました。
これらは名を出すだけで死者を黄泉帰らせるほどの力があります。
その祝詞、布瑠の言(ふるのこと)は「ひふみ祓詞」ともいい、
『先代旧事本紀』の記述によれば「一二三四五六七八九十、布留部 由良由良止 布留部
(ひと ふた み よ いつ む なな や ここの たり、ふるべ ゆらゆらと ふるべ)」
と唱える「ひふみの祓詞」や十種神宝の名前を唱えながらこれらの品々を振り動かせば、
死人さえ生き返るほどの呪力を発揮するといわれます。

『十種神宝祓詞』





ペットボトル

2013.07.16 (Tue)
2週間ばかり前、晩に犬の散歩をしてて奇妙なことがあったんで書いてみるよ。

雑種のクロという犬を飼っているんだけど、
それまで世話をしていた息子が中学生になり、部活で自分より遅く帰るようになったので、
それにつれて夕食の時間も遅れて、毎日散歩させる役目が回ってきた。
といってもそんなに長時間ではない。 
自分は団体職員で家に帰る時間は毎日ほぼ同じ、帰って一息ついてから6時半から7時くらいの間。
散歩のコースは犬も飽きると思って3~4通り考えてローテーションしている。
これがやってみたら、座職の自分にはけっこういい運動になるとわかった。

その晩は神社コースをとった。
自分の家から15分くらい先に某有名企業の工場があって、わきに企業所有の野球場があり、
その三塁側ダッグアウトの後ろが少し林になってて中に小さなお社がある。
何でも昔はもっと大きな社殿だったそうだが、
自分らがこの地域に越してくる前に不審火で全焼てしまい、
有志で小さな新社を建てたという。
球場のフェンスの外を曲がろうとしたとき、さらにその先の小路から車が出てきた。
危ないことはなかったんだが、ヘッドライトに照らされてボッと光ったものがある。

近づいてみると、曲がり角の球場のネットの内側に1Lのペットボトルがある。
まあ珍しくもないんだが、口の部分まで液体が入ってまっすぐ立っている。
中には細長い紙のようなものと、黒く渦巻いた何かの塊が入ってるようだが、
街灯の光が影になっていてよく見えない。
こんなところに猫よけというのも変だなと思ったとき、リードが強く引かれた。
見るとクロが歯をむき出してうなり、後じさりしている。
奇妙だなあと思いながらもその場を離れた。

それからクロの様子が変になった。
いつもはおとなしい犬だが、低い姿勢で警戒しているみたいだ。 
何かの臭いをかぎつけているのかもしれない。
50mばかり行った曲がり角で、低く「ウッ!」と吠え声を飲みこむような音を立てた。
頭の先のほうを見ると人家の生垣の中ほどに、枝に引っ掛かるようにまたペットボトルがある 。

いって見ようと思ったけど、クロが近づこうとせずリードを強く引っ張る。
しかたなく近くの電柱につないで近寄ると、街灯があたってさっきよりよく見える。
液体は透明で、中にはやはり折りたたんだ細長い紙と、
何かそれほど大きくはない生き物のひとつづきの内臓?がゆっくり回っている。
ギョッとした ああ嫌だ見なければよかったと思った。

子どものイタズラかなにかで、内蔵は魚かカエルなんかのものだろうか。
とにかく気味が悪くなって、すぐ先にある神社までいく足を速めた。
犬を連れているので不浄かと思って、いつも神社の鳥居をくぐらないで引き返す。
その晩もそうしようとしたら、たくさん並んでいる赤い奉納鳥居の間をだれかが歩いてくる気配がする。
カサカサという足音のするその方向から目が離せなくなった。
最後の鳥居二本くらいまで来て姿がうっすらと見えてきた。

中年の女性で和服を着ている 両手で重そうな布袋を前に提げ持っている。
布袋の上部にはペットボトルのキャップ部分が7・8本分見える。
その女性は近くまでくるとすごい厚化粧で顔は真っ白。
自分らの前をこちらを見ようともせずに通り過ぎた。
女性が角を曲がってからクロのほうを向くと、伏せの状態で小刻みに震えてた。
それから家に戻るまでの間クロは道端に二回吐いた。

クロはその晩、飯を食べず今にいたるで何となく調子が悪そうで、
ペット病院に連れて行こうかと思っている。
それからクロの散歩は神社コースはやめたので、あのペットボトルがどうなったかはわからない。
神社の噂をそれとなく周囲に聞いてみたが、これまで2回ほどボヤ騒ぎがあったという。
2回とも、遠くから炎が上がっているのが見えたので通りかかった人が通報し、
しかし消防が駆けつけると、何かが燃えたような跡は一切なかったんだそうだ。
わけがわからん。


ペットボトル2

2013.07.16 (Tue)
前に牛乳配達のバイトをしてたときの話。

他の地域では違うかもしれないけど、
俺のとこでは朝3時に宅配センターに行って牛乳をもらい、6時までの間に原付で配達する。
新聞配達もやったことがあるので朝起きるのは大丈夫だったけど、
配るエリアが広いし、家庭によって本数や種類が違うんで、始めた頃は覚えるのが大変だった。
それでも毎日やる契約だったから、1週間くらいでだいぶ慣れた。

季節は秋頃で、4時前くらいだったと思う。
ある家に牛乳を配ろうとしたら、通りの向かいの家の塀の上がぼうっと赤く光った。
何だろうと思って見にいったら、ペットボトルが置いてあって、中でなんか黒いものがうず巻いてる。
そのときにはもう光ってなかったんで、瞬間的に何かの光が当たったのか、見間違いかと思った。
バイクに乗って次の配達先に行こうとしたら、
今度は進行方向の200Mくらい先で、また一瞬だけぼうっと赤い光が見えた。
途中を配りながらそこまで行ってみたら、

やっぱり光ったところにペットボトルが置いてあるんだよ。
銀行の駐車場の前の植え込みの中だった。
ここは前より明るかったんで中がよく見えて、
白い紙と髪の毛の束と金属片のようなものがやっぱりゆっくり回ってる。
あたりを見回しても反射するような赤いライトはないし、車も通っていない。
不思議だなあ、と思いながら配達を続けると、
そっから150Mくらい先でまた同じような感じでぼうっと赤く光るものがある。

ただし今度は一瞬じゃなくずっと光り続けてる。
そこはかなり年代がいっているようなボロい平屋で、門もなくて、
玄関の真ん前にやっぱりペットボトルが置いてあったけど、
中にライトが仕掛けられてるんじゃないかと思うくらい赤く光ってて、
中のものが液体とともに回ってって、地面に光の影を落としてる。
中身は前のものと同じだったと思う。
変なことがあるもんだなあと思ったけど、仕事中なんですぐその場を離れた。

その後はペットボトルは一本も見なかった。
で、次の朝の配達時にはそれらのペットボトルはなくなっていた。
で、さらに次の日、3本目のペットボトルがあった家の玄関に『忌中』の札がはられてたんだよ。
まあそれだけの話で、何かの偶然だとは思うけどね。


謎を投げ出す4

2013.07.16 (Tue)
 このペットボトルの話は、要は神社から呪いをもらってきた人が、
ペットボトルを媒介として他の人を死に追い込む話を書いたつもりだったんだけど、
謎がうまく転がらなかった。失敗作です。

『ghost photography』



蛭子(えびす)温泉

2013.07.16 (Tue)
あまり怖い話ではないんでここに投下。

もう十年以上前のことになるけど、木曽のほうに2泊3日の予定で釣りに行ったんだよ。
6月に会社の計画年休があって、同僚と二人で俺のハイエースで出かけた。
1日目は日中晴れて釣果もそこそこあったが、夕方から雷雨になって、車中泊であまり眠れなかった。
翌日も雨で、それでもカッパ着て竿を出したけど、つらくなってきて4時頃にはやめた。
天候は回復しそうにないし、もう帰ろうかとも相談したが、
とりあえず街に出て一杯ひっかけからビジネスホテルにでも泊まろう、ということになった。

で、県道を走ってると細い脇道があって、『えびす温泉』という木の案内板が見え、
それがすごく古びた感じで、きっと源泉の宿だろうから行ってみないかという話になった。
脇道に入るとゆるい上り坂になり、道路の舗装がきれて山の中に入っていく。
温泉はガイドに載ってないし、ナビでも出てこないんで少し心細くなってきた。
山の登り口に停めた軽トラに乗り込もうとしているじいさんがいたんで、温泉のことを聞いてみた。
じいさんの話では、一軒宿の温泉があるにはあるが、
経営者の夫婦が年をとり建物も老朽化して、今は親戚や知人くらいしか泊めてないはず。
ただ、風呂は入れるし上等の湯質だとのことだった。

まあここまで来たんだからと進んでいくと、道の上りがきつくなり、
車の窓は閉めてるのに硫黄の臭いがしてきた。山のまだすそのほうだと思うけど、
木が少なくなり白っぽい山肌がむき出しになって、
あちこちから湯気があがってる場所に出て、向こうに温泉宿が見えてきた。
カヤ葺きのいかにも古びた雰囲気の建物で、わざと古風に造られてるんじゃなく、
豪農の家を宿屋に改築したという感じ。
『蛭子温泉 源泉』という一枚板の看板がある。
宿の前は広い空き地になってたんで適当に車を停めて、玄関に向かった。
大きなガラスの4枚戸を開けて、
ロビーも何もないようだったから大声で「ごめんくださーい」と呼ぶと、
ややあって老夫婦が出てきた。
話してみると、宿はもうやってないがせっかくここまで来たんだから泊めてもかまわない、
風呂は入れるが飯はたいしたものは出せない、ということだった。
料金を聞いてみたらびっくりするくらい安かったんで、ちょっと相談して一晩世話になることにした。

その一番奥が俺たちの部屋で、6畳と8畳の二間。その6畳のほうに奥さんが布団を敷いてくれた。
そこに寝転がって、やることもないんで年代物のテレビをつけたが映らない。
電気がきてないわけではないので、電波の調整をしてないみたいだ。
そうこうしているうちに奥さんが夕飯を持ってきてくれた。
肉鍋と山菜のゴマ和えという内容だったが、ビールがついてたんでそこそこ満足した。
飯を食ってしまうといよいよやることがなくて、風呂にいくことにした。
一階に下りて声をかけると主人が顔を出して、浴場のある地下への階段を教えられた。
狭く急な木の階段を下りていくと木戸が一つだけあって、混浴のようだがどうせ俺らしかいない。

木戸を開けて驚いた。
岩窟風呂というのか、全体が大小の岩の組み合わせでできていて、天井が高く照明も薄暗い。
脱衣所はなくて、下に竹籠が置いてあったのでそこに服を入れた。
洗い場もないが風呂自体はかなり広い。
「すごいなここ」
「山の中を掘ったみたいだな。これって宣伝しだいでうけるんじゃないか」
「臭いもすごい、硫黄ガスなんか危なくないかな」
などと話したが、岩の裂け目がところどころにあって風が流れてくる。
湯は白色で熱い。風呂の向こう側1/4くらいが黄土色の湯ノ花で埋まってた。
その表面がぼこっぼこっと盛り上がってはじける。底から温泉がわき出しているようだ。
俺が入り口側、同僚が向かい合う形で奥のほうでつかっていると、いい気持ちになってきた。

すると、同僚の後ろの湯ノ花溜まりが少しずつ盛り上がってきた。
大きなガスの塊かと思って見ていたら、ずぼっという感じで泥人形が立ち上がった。
人の背丈くらいでつるっとした坊主頭。 両目はただの穴で、鼻も口もない。
たらたらと液状の泥が全身からしたたっている。
俺が「あーっ」と大声を出して立ち上がると、「何だよ」と同僚もつられてか立ち上がった。
「うしろ、うしろ」と俺が指さしたときには泥人形は崩れ落ちて、
湯ノ花のしぶきが振り向いた同僚の腰にかかった。
同僚の手を引っぱって風呂から上がり、今見たことを説明したが、
泥が崩れる最後しか見ていなかった同僚は信用しない。

とりあえず風呂から上がり、部屋に戻ってからもう一度風呂の中で見たものの話をした。
「変なこと言うなよ、ただ泥が動いただけだろ。あんないい湯だったのに」と、
やっぱり取り合ってくれない。
そうすると自分でも見間違いのような気がしてきた。それから同僚と少し釣りの話をして寝た。
次の朝は快晴で、同僚は朝風呂にいこうと誘ったが、俺はいかなかった。
「やっぱり何もおかしなことはなかったぜ」と、同僚が戻ってきて言った。
朝飯を食べて、料金を払い、礼を言って宿を出た。
それから渓流に向かったが、その日はびっくりするくらい釣れた。昼過ぎまで釣って帰った。

話はこれだけ。
その後同僚も俺も結婚して今も同じ職場にいるが、同僚の奥さんは3回流産して子供がない。
まあこのこととは関係ないと思うけども。

『陰 謀』ジェームズ・アンソール